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「頭蓋骨を変形させる習慣を持つ異民族」を古代の集落が迎え入れていた証拠が発見される


古代の文化の変遷は文書化されていないものが多いため謎に包まれていますが、古代ローマが終わりを迎えた激動の時期の遺骨を分析することで、「頭部を変形させる」風習を持つ異民族を集落が受け入れ、文化が取り入れられていったことが明らかになっています。

Coalescing traditions—Coalescing people: Community formation in Pannonia after the decline of the Roman Empire
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0231760

This Hungarian Village Welcomed Skull-Shaping Immigrants as The Roman Empire Crumbled
https://www.sciencealert.com/this-hungarian-village-welcomed-skull-shaping-immigrants-as-the-roman-empire-crumbled

古代ローマは紀元前753年に始まり、476年のロムルス・アウグストゥルス退位で最期を迎えました。この時代、西ローマ帝国東ローマ帝国でパワーバランスが大きく変化し、文書としてあまり残されてはいないものの、文化にも大きな変化が生じたと考えられています。

しかし新たに、現代のハンガリーにあたるローマ帝国の州の1つであるパノニアバレリアを調査していた研究者らが、墓地の遺跡から、当時の人々がどのように文化の変化を受け入れていったのかという証拠を発見しました。


ドイツとハンガリーの考古学者ら研究チームは、87の遺骨からストロンチウムの同位体を分析。ストロンチウムのような安定した同位体は、土壌から植物に取り込まれます。人間がこの植物を食べると、歯や骨に含まれるカルシウムの一部がストロンチウムに取って変わるとのこと。特定の同位体比を持つ地域のデータと照合することで、遺骨の持ち主が生きた時代や場所が推測できるわけです。

この技術を用いて研究者チームはハンガリーの「Mözs-Icsei dűlő」と呼ばれる遺跡から発掘された遺骨が、2~3世代にわたって3地域で暮らしていた人々のものだと特定しました。

遺骨のうち最初期の集団に属するものは「小さな創設者集団」とされ、ローマ式の石でできた墓に、ローマとフン族の様式の副葬品と共に埋葬されました。これら遺骨の同位体比は、現地の食事内容と一致したとのこと。


しかし、遺骨のうち12人は創設者集団が発生してから数十年後にコミュニティにやってきた外国人集団だとみられています。12人の遺骨は同位体比がほぼ同じであることから、出身地を同じくするとのこと。12人のうち10人は頭蓋骨の変形がみられ、これは乳児期に布で頭をきつく巻くなどして意図的に変形させられたものだと考えられています。

頭蓋骨を意図的に変形するという風習がなぜ行われていたのかは分かりませんが、同様の風習は数千年前にさかのぼると世界各地で行われていました。なお、頭蓋骨を変形させることによる脳への影響はないとのこと。

そして、第3世代にあたる集団では、創設者集団と外国人集団の風習をブレンドしたような兆候が見られました。墓や副葬品は創設者集団の様式にのっとりつつ、頭部の変形が見られたのです。


研究者らは過去の調査結果で、世界各地で報告される頭蓋骨を変形させる風習が「社会的地位の印」である可能性や、「柔らかい子どもの頭部の保護のため」あるいは「見た目のよさ」といったさまざまな理由によるものだと示しています。ハンガリーで発見された遺骨頭部の変形がどのような理由を持つかは判然としていないものの、コミュニティが地域の争いのさなかで生まれ、繁栄し、それぞれの違いを融合させて新しいものを構築した例だといえます。

「コミュニティは、2~3世代にわたって異なる地域的・文化的背景を持つ男性・女性・子どもたちを受け入れて統合していきました」「歴史的にみると、これはローマとバーバリアン(野蛮人)の文化混合の出現として理解されますが、ローマ化された『野蛮人』と、野蛮人化された『ローマ人』は見分けがつきません」と研究者らは述べています。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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