「同性と裸でベッドに入る」行為が性的関係以外を意味した中世ヨーロッパの価値観とは?


1つのベッドを共有すること、とりわけ同性の人物と寝床を共にすることは性的なイメージと強く結びつく行為ですが、中世のヨーロッパにおいては別の大きな意味を持つこともあったようです。特に高い位に就く人物の間で共有されていたと思われる価値観について、興味深いことがわかってきました。

Three Wise Men in a Bed: Bedsharing and Sexuality in Medieval Europe | NOTCHES
http://notchesblog.com/2014/01/06/three-wise-men-in-a-bed-bedsharing-and-sexuality-in-medieval-europe/

12世紀に名をはせたイングランド王・リチャード1世は戦争と冒険に明け暮れた獅子心王とも呼ばれ、騎士の模範と称えられた人物ですが、後世には同性愛者であったという説が唱えられることもある人物です。その根拠となるのが1200年ごろに年代記作者・ロジャー・ハウデン(Roger of Howden)によってしたためられた「年代記(Chronica)」に記された以下の記述であるとされています。

Richard…remained with Philip, the king of France, who so honoured him that for a long time they ate every day at the same table and from the same dish, and at night their beds did not separate them. The king of France loved Richard as his own soul, and they loved each other so much that the king of England was absolutely astonished.

(意訳)フランス王・フィリップ2世とリチャード1世は食卓を共にし、同じ皿のものを食し、夜はベッドによって分かたれることはなかった。フランスの王はリチャード1世を心より愛し、互いに愛する様子はイングランド王・ヘンリー2世をまったく驚かせるほどであった。

現代の感覚で捉えると、2人の男性がベッドを共にするという行為は両者が同性愛者であるという意味に強く結びつくわけですが、リチャード1世についての著書を記したジョン・ジリンガム氏や、スティーブン・イェーガー氏のような歴史学者らによれば、ここには時代の違いによる感覚の差異が存在しているとのこと。

中世において、地位の高い位に就いていた人物にとっては食事やベッドを共にすることは性的なものよりも政治的な意味合いを強く持つものであり、それはキスや手をつなぐ行為においても同じことが言えたとのこと。これらの行為は、和平や赦しを象徴する行為であり、同盟や友好を意味するものとして捉えられていたと考えられています。

By davide bellomi

そのため、リチャード1世の父親であり前のイングランド王であるヘンリー2世にとっては、前出のようにリチャード1世とフランス王・フィリップ2世が食事やベッドを共にするという行為は、息子が同性愛者であるということよりも、自身の宿敵ともいえるフランスとの密接な関係を示すという意味で衝撃を与えるものであったと考えられているのです。

◆ベッドを共にしていた「東方の三賢人」
このベッドを共にするという行為が象徴するものは、新約聖書に登場する東方の三賢人、あるいは「Magi(マギ)」を描いた絵画からもくみ取ることができるようです。

By the British Library

「マタイによる福音書」に登場するこの三賢人は、ユダヤ人の王として誕生したイエスに会うために東方からベツレヘムへとやってきました。その道中で三賢人はヘロデ大王に会うのですが、大王からは「その幼子を見つけたら、その居場所を知らせるように」と命を受けます。その後、イエスに会った三賢人ですが、寝ている間に受けた夢のお告げに従い、ヘロデ大王のもとを避けて帰るという一節が書かれています。中世以降はこの夢にまつわるエピソードがよく知られ、各地の教会や絵画などでよく描かれることになります。

By Peter

特に以下に示す作品では、中世における価値観がよく示されているとのこと。絵の中ではいまや王となった三人の賢者が夢のお告げを聞いた時の様子が描かれているのですが、王の象徴となる王冠を戴いた三賢者は一つのベッドを共にし、さらに上半身が裸の状態で並んで横たわっています。多くの人々が心の支えとする宗教の中で描かれた絵画であるこの作品は、ベッドを共にするという行為が単に性的なものではなく、特に高い地位にある人々の中では現代とは異なる意味合いを持っていたことをよく示しているといえます。

By the British Library

このような背景を汲むと、リチャード1世についてまわってきた「同性愛者」というイメージにも新たな視点が生まれることになりそう。歴史上の事実に当時の価値観を重ねて捉えることで、より正しく歴史の流れを理解することにつながる象徴的なエピソードといえそうです。

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