サイエンス

「名字呼び」される相手を高く評価する傾向


by Oscar Keys

世界でも特に有名な科学者について話す時、名前ではなく名字で呼ぶケースが多くあります。例えば、チャールズ・ダーウィンの場合は「ダーウィン」、アルベルト・アインシュタインの場合は「アインシュタイン」といった具合に名字だけで呼ぶことが多く、名前や「教授」などの肩書きすら必要とされていません。これは「ダーウィン」や「アインシュタイン」が何者であり、何を成した人物であるかを多くの人々が知っているから起きるものと考えられますが、こういった「名字呼び」される人物に対して人は知らず知らずのうちに高い評価を抱きがちになることを最新の研究が指摘しています。

How gender determines the way we speak about professionals | PNAS
http://www.pnas.org/content/early/2018/06/19/1805284115

Why Curie’s no Einstein: A subtle gender bias in science | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2018/06/persistent-gender-bias-in-science-its-all-in-the-name/

「名字呼び」について調査を行ったのは、コーネル大学のスタブ・アティール氏とメリッサ・ファーガソン氏。

◆男性は「名字呼び」されがち
2人は「異なるイデオロギーを持った複数のニュース番組」を参照し、番組中での性別および個人に対する言及について調べました。番組の中で特定の個人が「医師」や「教授」といった肩書きを用いられることなく「名字のみ」で呼ばれたケースをピックアップしたところ、ラジオニュースでは「人を名字だけで呼ぶケース」が、女性よりも男性で2倍以上も多く確認できたそうです。

さらに、2人は「男性は女性よりも頻繁に名字呼びされる」ということが、学術界でも起きるものなのかどうかを調べるために、14の異なる大学における5つの学術分野(生物学、心理学、コンピュータ科学、歴史学、経済学)で活躍する教授に関するデータを集計しました。すると、男性教授の場合、学生から名字呼びされるケースが半数を超えていたとのこと。女性教授の場合はそれほど高い数字は出ておらず、年功序列で「名字呼び」が多くなるということもありませんでした。

by João Silas

◆「名字呼び」がどのような印象を与えるか
続いて、無作為に抽出した科学的成果の箇条書きリストを作成し、そこに研究者の名前をフルネームもしくは名字のみでランダムに記入し、Amazon Mechanical Turkを用いて集めた200人の被験者にリストを配布します。そして、被験者にはリストに書かれた内容を参考に研究者を紹介してもらうという実験を行いました。この実験でも「人を名字だけで呼ぶケース」を集計したところ、「名字呼びで紹介された研究者」は男性が女性の4倍以上であることが判明しています。

さらに、被験者に対して研究者の名前をフルネームもしくは名字のみで書かれたリストに変更して配布したところ、名字のみが書かれた研究者は「何かしらの賞を獲得している可能性が高い」と被験者が評価する傾向にあることも明らかになっています。加えて、被験者に対して「有望な研究に資金を提供することができるオプション」を与えたところ、名字しか書かれていない研究者の研究に多くの資金を分配することも明らかになりました。つまり、「名字呼び」される研究者を被験者たちは高く評価する傾向があったわけです。

この結果を受けて、アティール氏とファーガソン氏は、個々の科学者が偏った視点を得てしまう可能性を指摘しています。つまり、個々の科学者は自身の研究分野以外についてはニュースなどを通して最新の情報を得ることになるため、一般人と同じように「名字呼びで紹介されることが多い男性研究者の成果」に対して、内容の是非にかかわらず高い評価を下してしまう可能性がある、とアティール氏とファーガソン氏は危惧しているわけです。

by rawpixel

「男女平等が実現されるほど女性は科学や数学の道を選ばなくなる」という研究結果が存在するように、男女の平等が実現している国ほど科学分野において大きなジェンダー格差が生まれることは明らかであり、名字呼びや性別で起こるバイアスについて認識しておくことは、その影響を制限するためにもとても重要なものであると言えます。

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in サイエンス, Posted by logu_ii