なぜ古代の人々はそら豆を「死の象徴」として恐れていたのか?


by Tavallai

そら豆」は古くからエジプトやギリシャ、ローマなど世界中で食べられていましたが、同時に「そら豆=死の象徴」とも考えられていました。「いったいなぜ『豆=死の象徴』と考えられていたのか?」という謎について、食事にまつわるストーリーを掲載するGastro Obscuraがまとめています。

Why Beans Were an Ancient Emblem of Death - Gastro Obscura
https://www.atlasobscura.com/articles/favism-fava-beans

古代ギリシャの哲学者・ピタゴラスはそら豆を食べることを徹底的に拒否しており、ピタゴラス本人だけでなくピタゴラスに学ぶ弟子たちもそら豆を食べなかったとのこと。これは当時において決して珍しいことではなく、そら豆を「死の象徴」として忌避する風潮は古代エジプトやローマでも存在していました。

食事史を研究するケン・アルババ氏によれば、15世紀までのヨーロッパにおいて「豆」といえば通常はそら豆のことを指していたそうです。そら豆は地中海を中心とする地域ではごく一般的な食材であり、貴重なタンパク源としても重宝されていました。

非常に早い時期から人々の生活に根付いていたそら豆ですが、多くの文化において人々は、そら豆に対して複雑な感情を抱いていたとのこと。歴史家のヘロドトスは「エジプト人は豆を栽培することを完全に拒否している」と記しており、実際にエジプト人が豆の栽培を全く行わなかったという事実はありませんが、豆に対して否定的な感情があったのは確かだそうです。


豆は儀式で「いけにえ」として使用されることが多く、葬送儀礼ではレンズ豆やそら豆がいけにえとして捧げられました。このため、ローマ神話に登場する神・ユーピテルに関する祭司を行う聖職者たちは、死を汚れとみなす考えから豆を食べることはもちろん、豆に触ったり豆について話すことも禁じられていたとのこと。

「ピタゴラスがそら豆を嫌った」という事実は古代の人々にもよく知られており、プリニウスによれば「ピタゴラスはそら豆の中に死者の魂が含まれている」と信じていたそうです。そら豆の花が持つ黒い斑点と、茎の内部が中空になっていることから「そら豆は地上と冥界をつないでいる」という考えに至ったとのこと。ところが、当時のギリシャ人にもそら豆はよく食べられる食材であり、詩人のホラティウスがそら豆を「ピタゴラスの豆」と呼んだように、ピタゴラスのそら豆嫌いを嘲笑する人々も少なくありませんでした。

by Daniela

そら豆に関しては多くのネガティブなエピソードが存在していますが、そら豆が地中海を中心に忌避されていた大きな理由は、「そら豆中毒」が原因である可能性も考えられています。そら豆中毒はそら豆を食べたり花粉を吸うことで、発熱したり血中の赤血球が破壊されて溶血性貧血を起こしたりする食中毒であり、場合によっては急性腎不全で死に至るケースもあります。

そら豆中毒の発症には遺伝的要因が大きく関わっており、そら豆中毒の因子を持つ人々は地中海沿岸や北アフリカ、中央アジアにかけて多いそうです。地中海を中心とした文化圏で「そら豆は死の象徴である」と忌避されていたのは、そら豆を食べたことで死に至る人が少なからず存在していたことが、大きな理由になっていた可能性があるとのこと。

強烈にそら豆を嫌ったピタゴラスもまた、自分自身にそら豆中毒の因子があることを自覚していたのかもしれません。また、そら豆はピタゴラスの最期に大きく関わっていたという説もあり、一説によればピタゴラスは追っ手に追われて逃げている途中、そら豆の畑に行く手を阻まれてしまったそうです。そら豆の畑を走り抜けるか追っ手に捕まるかの選択を迫られたピタゴラスは、追っ手に捕まるほうを選択してそのまま殺されてしまったと伝えられています。この説が正しければ、一生にわたってそら豆を忌避してきたピタゴラスは、結局そら豆が原因で死んでしまったということになるのかもしれません。

by Jessica Spengler

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