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「AppleはMacBook Proのキーボードの欠陥で大きな損害を生むことになる」とiFixitのCEOが指摘


Appleは「MacBook Proに搭載されたバタフライ構造のキーボードに不具合がある」として、集団訴訟を起こされています。訴訟を受け、キーボードの不具合を認めたAppleは2018年6月22日に無償のキーボード修理プログラムを開始していますが、修理マニュアルの公開やガジェットの修理難易度などを評価しているiFixitのCEOであるカイル・ウィーンズ氏は「このキーボードの問題はMacBook Proの設計の問題と相まって、Appleに大きな損害を生むことになる」と語っています。

Apple Engineers Its Own Downfall With the Macbook Pro Keyboard | iFixit
https://ifixit.org/blog/10229/macbook-pro-keyboard/

問題の原因となったバタフライ構造のキーボードはMacBookの2015年モデルから採用されています。しかし、損害を生む根本原因となった設計が採用されたのは、2012年に登場したMacBook ProのRetinaディスプレイ搭載モデルからでした。2012年に登場したモデルは、これまでのMacBook Proよりもスリムになったことから、多くのメディアや専門家などから絶賛されることになりました。


しかし、iFixitは故障したときの修理コストを基準にデバイスを評価しているため、外観のデザインなどはあまり考慮されていません。このため、2012年モデルから採用されたキーボードと内蔵バッテリーが接合された設計は、キーボードの交換に合わせてバッテリーも交換する必要が生じるため、10段階評価で「2」と酷評されていました。また、翌年に出た2013年モデルのMacBook Proについては、評価をさらに1つ落とし「1」と評価されています。それ以降も評価は上がることなく、2018年に登場したMacBook Proの最新モデルも修理難易度の評価は「1」です。

MacBookは2015年モデルから不具合のあるバタフライ構造のキーボードが採用されるようになり、MacBook Proの2016年モデルにも同じキーボードが搭載されました。その翌年に登場したMacBook Proの2017年モデルでは不具合が少し改善されているため、問題のある2015年モデルのMacBookまたは2016年モデルのMacBook Proを使用している人がAppleで有償の修理を受けた場合、2017年モデルのキーボードに変更されている可能性が高いとのことです。

2015年から採用されるようになったバタフライ構造のキーボードは非常に薄型のキーとなっており、細かい粒状のホコリなどの物質が隙間に入り込むことによって、キーが認識できなくなるという不具合を抱えていました。この問題について、The Outline記事を書いているケイシー・ジョンストン氏は「キー自体はきれいに取り外すことができますが、専門家の手を借りたとしてもスペースキーに関しては壊れてしまいます」と述べており、ホコリの詰まったキーボードを個人で完璧に修理する方法は事実上存在していないとのことです。


Appleのサポートは、バタフライ構造のキーボードが認識しなくなった状態を改善する方法として、75度の角度から圧縮空気スプレーを正確に吹き付けることで改善できるとしていますが、MacBookのハードウェアに精通している人ならまだしも、常人にこの対応は事実上不可能です。ウィーンズ氏は「そもそも、この不具合はキーストロークが短いことが原因であり、もう少し長くなれば解決できるはずです」と述べており、この不具合はキーボード自体の設計に問題があることを強調しています。

また、同氏は「MacBook Proは他にも問題を抱えている」としており、問題となっているキーボードは2012年モデルからの受け継いでいる設計の弊害でバッテリーやトラックパッド、スピーカーが1つのモジュールとなっています。このため、キーボード交換を行おうとすれば、これら全てのモジュールを同時に交換する必要があることを指摘しています。


ウィーンズ氏は「これこそが、Appleが部品修理で利益を生み出すための方法です」と語り、複数のモジュールを同時に交換することで高い修理費用を請求していると指摘。しかし、同氏は「今回のようにAppleがキーボードの保証期間を4年に延長したという事実は、今回の不具合を大きな問題として受け止めているということです」とも述べており、Appleの対応は修理による利益を大きく損なうものであることから、Appleがこの不具合を大きな問題として考えていることがわかるとしています。

ウィーンズ氏は「保証プログラムによって、Appleは問題の発覚したモデルの利益を全て失うことになります」と述べ、MacBook Proが問題の部品のみを交換できる設計を採用しなかったことで、逆にAppleが多額の修理費用やその他の対応費用を負担することになったと説明しています。このように、修理困難な設計は大きな利益を得られる反面、大きなリスクを抱えることにもなるとウィーンズ氏は指摘しています。

例えば、SamsungのGalaxy Note 7の場合、バッテリーに製造上の不具合を抱えており、修理のために本体自体を交換する必要がありました。もし、同社がバッテリー交換が容易な設計を採用していれば、50億ドル(約5500億円)もの修理費用を負担せずに済んだ可能性があります。

By Mike Mozart

ウィーンズ氏は今回問題となったバタフライ構造のキーボードは薄型であったことが大きな原因だったことから、「わずかに厚くて頑丈なキーボードから始めましょう」と語り、同じ過ちを防ぐためには少しだけキーストロークの長い設計にすべきだとしています。

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in ハードウェア, Posted by darkhorse_log

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