「デザート人類学者」として閉店したケーキ屋さんのケーキを再現し続ける女性
子どもの頃に通ったお店など、「もう一度食べたい、忘れられない味」がある人も多いはずですが、既に作り手が亡くなっていたりお店が閉店していたりして叶わないこともあります。そんな「かつての味」を現代に再現するという「デザート人類学者」を名乗る人物が活躍中です。
Bringing Back Cakes of Dessert Past - YouTube
「私がやっているのは、既に失われた素晴らしいデザートや体験を、過去から持ってくることなのです」と語るのは、ヴァレリー・ゴードンさん。
ケーキにクリームをぬりたくるゴードンさん。
メレンゲ菓子のようなものをザクザクとカットして……
クリームの上にまぶしていきます。
「素晴らしいデザートは人の1日を変える力がある」と語るゴードンさんは、ロサンゼルスで「過去から復活させたデザート」を扱うお店を経営しています。
お店の名前は「Valerie Confections」
ケーキ以外にも菓子パンっぽいものも陳列されていました。
ゴードンさんは自身のことを「デザート人類学者」と呼びます。
ゴードンさんが「過去のデザートを復活させる」という試みを始めたのは2009年。ロサンゼルス・マガジンのフードエディターが、かつてサンフランシスコに存在した「Blum's Bakery」というベーカリーのケーキ「Koffee Krunch Cake」を作れるか?と訪ねてきたことがきっかけでした。
以下の画像でゴードンさんが作っているのが、「Blum's Koffee Krunch Cake」
さきほど登場した、メレンゲ菓子をまぶしていくタイプのケーキです。子どもの時からKoffee Krunch Cakeに親しんでおり、店がなくなってからはケーキの存在を恋しく思っていたゴードンさんは、エディターから持ちかけられた話に応じたそうです。
Blum'sはカリフォルニアに8店舗も展開していた「素晴らしいベーカリー」だったそうですが、1980年代に全ての店舗が閉店してしまったとのこと。
実際に使われていたメニューはこんな感じ。
Koffee Krunch Cakeを再現して雑誌に掲載したところ、「このケーキが欲しい」という電話が125本もあったそうです。
Koffee Krunch Cake以外にも……
1995年に廃業したChasen'sのバナナショートケーキや……
1989年に廃業したBrown Derbyのグレープフルーツケーキなども再現されています。
そして次にゴードンさんが取り掛かっているのが、Cof-fiestaのサンデー。
かつてのデザートを復活させるという試みは、まず中央図書館で資料を探すことからスタートします。
中央図書館には「Menu Vault」という部屋があり、過去150年間のお店のメニューが保存されています。
いずれのメニューも、かなりの年代物です。
ずらりとメニューを並べるゴードンさん。
もちろん、インターネットを検索すればかつてのデザートのレシピが見つかるのですが、実際のメニューを見ることで「魂とハートのありかがわかる」とのこと。メニューの実物を前にすると当時にタイムスリップできるそうです。
そして次に、山のような人々にメールと電話を送りまくり、当時のケーキを知っている人に聞き込みを行っていきます。
「母が唯一食べるサンデーだったから、私たちはいつもあのサンデーのことを『大人のサンデー』と呼んでいました」と語る女性。
そして、実際に再現したサンデーを食べてもらい、ホイップクリームの柔らかさや、どこにバニラが使われていたかなどを記憶から掘り起こしていきます。
ゴードンさんはもともと、レトロなものに特に愛着があったわけではないとのこと。
デザートの復元は「当時の記憶の追体験」であると語るゴードンさん。自分が幼いころ、若かったころに流行していた曲を聴くと、その瞬間に巻戻る感覚がある人もいるはず。
「それが『ケーキを再現する』という私の仕事の、情緒的で、充実している面です」とゴードンさんは語りました。
・関連記事
6段重ねで迫力満点の「特製ショートケーキ」をユーハイムで食べてきた - GIGAZINE
これが元祖「モンブラン」、スポンジもタルト生地もないクリームのみの至福の塊を「アンジェリーナ」で買って食べてみた - GIGAZINE
カステラ専門店の6段重ねパンケーキを堪能できる「スヴェニール」へ行ってきた - GIGAZINE
「最高級羽毛布団」と評されるパンケーキをシクスバイオリエンタルで食べてきました - GIGAZINE
最初からバターがじゅわっと染みこんでテカテカ輝くホットケーキを「純喫茶アメリカン」で食べてきた - GIGAZINE
・関連コンテンツ