サイエンス

南極大陸は近年その高さを増してきている、それが意味するものとは?


By Ronald Woan

冬は極寒の地で、夏でも雪と氷に覆われた南極大陸の下には、他の大陸と同じような土の大地が隠されています。この大地が近年、徐々にその高さを増していることが明らかになっています。

Uplifting News? How Antarctica's Rapidly Rising Bedrock Could Help the Ice Sheet
https://www.livescience.com/62885-earth-rising-under-antarctica.html

近年の研究によると、南極の大地は1年あたり41ミリというペースで少しずつ高くなっていることが明らかになっているとのこと。わずか41ミリというわずかな動きであるとはいえますが、重要なのはそのスピードが過去よりも速くなってきている点にあります。

南極大陸が高くなってきている理由は、その大地の上にのっている氷の量が徐々に減少していることにあります。南極大陸はその98%が氷で覆われており、その氷の塊「南極氷床」は地球上で最も大きな1個の氷の塊です。地球上にある淡水の約60%が南極氷床に存在しており、氷の厚さは平均で約2450メートル、最大で約4000メートルもあります。仮に、南極大陸の上にのっている氷が全てとけてしまうと、地球の海面は平均して約60メートルも上昇すると考えられています。それほどまでに膨大な量の氷が、南極大陸の上に存在しています。


膨大な量の氷が南極大陸の上にのっていることはすなわち、とてつもない重量物が大陸の上に鎮座していることになります。大陸の下は流動性のある岩石のマントルが対流しており、ここに南極氷床のものすごい重さで押し付けられた南極大陸が沈み込んでいます。この時、南極大陸は自身と氷床による重さと、マントルに対する浮力の釣り合うところでバランスをとって「プカプカ」と浮かんでいる状態ともいえます。この現象はアイソスタシーという説で説明されています。

このように、南極大陸はその上にのっている氷の重さを合わせた重さをもとにマントルの上に浮いているため、氷の量が減少するとバランスが変化し、徐々にマントルから浮かび上がってきます。そのペースが近年は年間41ミリとなっており、過去に比べてペースが速くなってきています。


南極大陸が隆起することには、良い点と悪い点の両方が存在するとのこと。まず、良い点は大陸が隆起することで、大陸の上に残されている氷が従来よりも安定した状態になること。これは、海面との位置関係が変化することで、海洋に流出してとけてしまう氷の量が減少することを意味しているものとみられます。

一方の悪い点は、人工衛星を使った南極氷床の残量調査データに大きな誤差が生じかねないという点です。南極の氷の量は、人工衛星を使った調査で面積や厚みをもとにその体積が割り出されているのですが、南極大陸そのものがせり上がってくる量が正確に把握できなければ正しい数値を算出することができません。近年は、大陸の隆起ペースの変化が以前に比べて大きくなっていることから、南極大陸に残されている氷の量を正確に把握することの難しさが高まっているというわけです。


南極の氷が減少するスピードが速まっていることには、地球の平均気温が上昇していることと密接な関係があると考えられています。1992年以来、南極からは実に3兆トンの氷が失われ、その結果として地球の海面が約8ミリ上昇したと考えられています。また、科学者の中には西南極氷床が今後100年ほどで完全に崩壊し、約3メートルの海面上昇を引き起こすと考えているものもいるとのこと。

この分野に関してはまだ明らかにされていない部分も残されており、特に氷床の減少と南極大陸の隆起をマントルの動きから説明するメカニズムはこれから詳細が解き明かされる段階にあります。そのため、現在考えられているほど大きな変化が起こらない可能性も指摘されています。

しかしそれでもなお、南極大陸を覆っている氷床には、数百年の時間軸で急激な変化が起こっていることは間違いのない状況といえます。今後、どのように南極の環境が変化し、ひいては地球全体の環境がどのような影響を受けるのか、大きな関心を集めることは必至といえそうです。

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in サイエンス, Posted by logx_tm