生き物

「生きた化石」とも呼ばれる不思議な生物「オウムガイ」とは?

by Desirae

オウムガイはオウムガイ目オウムガイ科に属する軟体動物で、水深およそ100~600mの深さに生息しています。5億年ほど昔に生息していた祖先の姿を残しつつ21世紀に至るまで生きており、「生きた化石」と呼ばれることもあるオウムガイについて、専門の研究者らが語っています。

The nautilus’s impressive memory has survived five mass extinctions | Popular Science
https://www.popsci.com/nautilus-may-have-one-oldest-memories-on-earth

ニューヨーク市立大学ブルックリン校ジェニファー・バジル教授と学生のナオミ・レヴァンドフスキ氏は、研究室で「ナンバー51」と名付けられたオウムガイを飼育しています。ナンバー51はエビを好んで食べるため、レヴァンドフスキ氏は冷凍のエビを買ってきて、切り分けてからナンバー51に与えているとのこと。

バジル氏の研究室ではオウムガイの他に、数種類の深海生物が飼育されています。ナンバー51は漏斗と呼ばれる器官から水を噴出して推進力を作り出し、水槽の中をゆっくりと泳ぎ回ります。レヴァンドフスキ氏は写真撮影のためにナンバー51の脚を殻から引っ張り出したり、オウムガイの学習能力についての実験に利用したりしています。

オウムガイの目は白色で中央に黒点がありますが、ピンホールカメラのようにレンズはありません。初めてオウムガイを目にした人はいったいこの生き物がヤドカリなのかタコなのかカイなのか、非常に戸惑うかもしれません。5億年前からほとんど姿形を変えておらず、化石にもほぼ同じ姿が残されているオウムガイは、カモノハシカブトガニと同じく「生きた化石」と呼ばれています。

by bathyporeia

「生きた化石」という言葉は進化論の提唱者であるチャールズ・ダーウィンが使い出したもので、「種の起源」の中でカモノハシやハイギョなどに言及した際に「生きた化石」という言葉を使用しています。ダーウィンが何百万年も姿を変えずに生き残ってきたと主張する生物に対して使ったこの言葉は、1世紀以上が経過した現在でも至るところで耳にします。

ところが、バジル氏やレヴァンドフスキ氏によれば、「生きた化石」というフレーズは誤解を招きかねない表現であるそうです。そもそも化石として見つかっている生物の数が生物全体と比較すれば非常に少なく、「現在の生物とほぼ同じ姿の化石が見つかっているから」という理由だけで「生きた化石」に分類するのは、生物史の見方を歪めてしまうとのこと。また、化石として残るのは硬い骨の部分が多く、柔らかい部分がほとんど化石として残らないのも問題です。

また、たとえ生物の外見が同一のものであったとしても、生物が同じ種類であり同じ遺伝子を持っているとは限りません。生物は交配して繁殖するたびに遺伝子変異する可能性があり、新たな種が生まれる可能性を常に秘めています。肉体的な変化が起こっていなくても、遺伝子的には大きな変化が起こっているかもしれないのです。わずか30万年前に新たな種として登場した人類に比べれば、確かにオウムガイの変化は非常にゆっくりしたものかもしれませんが、バジル氏は「私は太古のオウムガイが現在のオウムガイと同様に、90本もの触手を持っていたとは考えていません。現在のオウムガイは味覚や触覚で周囲の状況を感知するのに適した進化を遂げています」と述べ、現在進行形でオウムガイの進化は続いているとしています。

by the paleobear

人類を中心とする史観は、オウムガイを含む人類以外の生物に対する低評価を招いているとバジル氏は主張しています。バジル氏はオウムガイの知能を測定するために、水槽内に迷路を作ってオウムガイが迷路の構造や刺激を学習するのかを調べました。その結果、オウムガイは記憶を保持できるだけでなく、学習できることも判明し「学習することが可能な最古の種」とされています。

しかし、バジル氏はオウムガイのゆっくりとした動きや、水槽の外からオウムガイを見つめる人間に対する反応が薄いことが、オウムガイに知能があるという事実をわかりにくくしていると語ります。「例えばイカの目は、人間がイカを見ればそれを捉えることが可能で、触手を人間のほうに伸ばすこともあります。ところがオウムガイの目はあまり発達していないため、人間に反応できないのです」とバジル氏は述べました。

人間に親しみのない種は知能が低いと思われがちですが、確かにオウムガイを含む水生生物は地球上で進化してきたのであり、いかに不思議な生態を持っていようとも、しっかりと研究して進化の過程を調べることが重要だといえそうです。

by ekenitr

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in 生き物, Posted by log1h_ik

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