サイエンス

台風の移動速度が年々低下してきていると研究者が指摘


台風の移動速度が遅い場合、台風のルート上にある地域の降水量が増加することになり、水害の発生や強風によって大きな被害を生むことにつながります。アメリカ海洋大気庁で天候の研究を行っているジェームズ・コシン氏らの研究チームによると、地球上の熱帯低気圧の移動速度が1949年~2016年にかけて約10%減速しているとのことです。

A global slowdown of tropical-cyclone translation speed | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-018-0158-3

Hurricanes Are Moving More Slowly, Which Means More Damage : NPR
https://www.npr.org/2018/06/06/616814022/hurricanes-are-moving-more-slowly-which-means-more-damage

2017年8月にハリケーン・ハービーがテキサス州ヒューストンで猛威を振るい、その雨量は8月26日に370ミリ、8月27日に408ミリを記録。たった2日間で約780ミリの大雨が降ったことによって洪水も発生し、ヒューストンだけで93名以上が亡くなることになりました。コシン氏は「ヒューストンの雨量は、ハリケーンがゆっくりと移動したことによる結果です」と語っています。


コシン氏らの研究チームは熱帯低気圧の移動速度が低下している理由について、地球の気候変動が原因であるとしています。実際、地球温暖化の影響により極の大気が暖かくなっており、熱帯との気圧差が徐々に小さくなってきています。この結果、熱帯から極に向かって流れる風が弱まってしまうことにつながり、熱帯低気圧の移動速度を減速させているとのことです。

また、温暖化によって大気が暖かくなることは、空気中に含まれる水分量も多くなることを意味しており、雨量の増加にもつながります。このため、熱帯低気圧が10%遅くなるだけであっても、実際の雨量が2倍になることが考えられるそうです。


コシン氏は「熱帯低気圧の移動速度の低下は、構造物が暴風雨に長時間さらされることにつながり、倒壊の危険性が高まります」と語っており、熱帯低気圧の移動速度が低下することは大雨や暴風以外の脅威も存在すると指摘しています。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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