Adobeが約1900億円でECプラットフォームのMagentoを買収

PhotoshopやIllustratorなど、クリエイターに必須ともいえるさまざまなソフトウェアを開発・販売しているAdobeが、ECサイト構築用プラットフォームのMagentoを買収しました。買収額は16億8000万ドル(約1900億円)です。

Adobe to Acquire Magento Commerce | Adobe Newsroom
http://news.adobe.com/press-release/corporate/adobe-acquire-magento-commerce

Adobe to acquire Magento for $1.68B | TechCrunch
https://techcrunch.com/2018/05/21/adobe-to-acquire-magento-for-1-6-b/

AdobeがECサイト構築用プラットフォームのMagentoを、16億8000万ドルで買収したことを発表しました。海外メディアのTechCrunchは、「Adobeはこれまで欠けていたB2BおよびB2Cで動作するeコマースプラットフォームを得ることとなり、同社のクラウドサービスにピッタリはまるだろう」と記しています。また、Adobeの競合サービスであるクラウドベースのCRMプラットフォーム・Salesforceなどに対抗するためにも、Magentoの買収は大きな意味を持ってくるだろうとTechCrunchは指摘しています。

同じくCRMプラットフォームの開発を行うCRM Essentialsを所有するBrent Leary氏も、Magentoの買収がAdobe Cloud Platformに欠けていた穴を埋めるものになるかもしれないと語っています。

さらに、2017年に提携を拡大したAdobeとMicrosoftの関係についてもLeary氏は言及しており、「より興味深いのは、AdobeとMicrosoftがどのように関係を発展させていくかです。彼らのパートナーシップに欠けていたのがeコマースというエンゲージメントプラットフォームであり、Adobeはついにそれを手に入れたのですから」と、AdobeがSalesforceとの市場競争の中で、Microsoftとより密な協力関係を築いていく可能性を示唆しています。

Adobeが買収したMagentoの公式ページ上には「AdobeがMagentoを買収しました」というお知らせが表示されていました。

eCommerce Platforms | Best eCommerce Software for Selling Online | Magento

AdobeがMagentoを買収した裏にはSalesforceとの競争があることは明らかです。そのSalesforceは、2017年にクラウドサービスによる収入が80億ドル(約8900億円)を超えるなど、CRMプラットフォームとしては成長著しいサービスです。なお、Salesforceは2034年までの長期的な目標として「年間収益600億ドル(約6兆7000万円)」を挙げており、破竹の勢いで快進撃を続ける同社の野望の大きさが垣間見えます。

Adobeが買収したMagentoはこれまで顧客ターゲットを中小企業に絞っていましたが、Adobeがより大きな企業をターゲットにサービスを展開していくことは明らかなため、「買収は必ずしも完璧な取引とは言えない」とLeary氏は指摘。しかし、分析会社のConstellation Researchで副社長を務めるCindy Zhou氏は、「Magentoの顧客にはコカ・コーラをはじめとする多くの大企業・中小企業がおり、これらの企業にとってMagentoは最適なeコマースプラットフォームです」と語っており、Magentoの既存の顧客がAdobeにとっての大きな味方となる可能性を示唆しています。

なお、Magentoが買収されたのは今回が初めてのことではありません。2008年に設立されたMagentoは、2011年にeBayにより1億8000万ドル(約200億円)で買収されています。その後、2015年に約2億ドル(約220億円)を支払うことで再び独立することとなったMagentoですが、2018年にAdobeによって再び買収されることとなったわけです。