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フィンランドの「ベーシックインカム実験」が2018年12月で中断


無作為に選出した失業者2000人に対し毎月560ユーロ(約7万4000円)が支給され、実験期間中に対象者が就業したとしても、政府からの支給がなくなったり減額されたりすることはない……というベーシックインカム実験を、フィンランド政府は2017年1月1日から行っています。フィンランド政府はベーシックインカムにより失業者の就業意欲が高まることを期待していましたが、新しい制度を導入することを理由に、2018年12月で実験を中断することを決定しました。

Finland to end basic income experiment - Business Insider
http://www.businessinsider.com/finland-to-end-basic-income-experiment-2018-4

フィンランド政府は2017年1月に2年間にわたって行われるベーシックインカム実験をスタート。ベーシックインカムは十分な有効性が実験でまだ示されておらず、ユーロ圏で初めての取り組みとして多くの国が注目しました。

就職してもカットされないベーシックインカムのテストが失業者を対象にフィンランドでスタート - GIGAZINE


当初の計画では、2018年にベーシックインカムの対象範囲が拡大され、一般労働者も対象となる予定となっていました。しかし、フィンランド社会保険庁事務所(KELA)の研究者たちは、これまでの状況をみて「労働者に転職を促したりキャリアップのための訓練や教育を受けたりするなど、ベーシックインカム導入による本当の効果を見極めることができない」と判断したとのこと。

既にフィンランド政府はベーシックインカムを止めて全く新しい方向に進む意向であり、KELAの研究員であるミスカ・シマナイネン氏は「政府はベーシックインカムをやめて、新しいシステムの導入に着手しています」と語っています。なお、ベーシックインカム実験が決まった当初は、「社会福祉の最先端を目指している」として、実験は国際的に評価されていました。


しかし、ベーシックインカムの専門家であるオリ・カンガス教授は「このような大きな実験から結論を導き出すのに、2年という期間は短すぎます。信頼できる結果を得るには時間とお金をかけるべきです」と話しており、判断が早計であることを示唆。ベーシックインカム制度を支持している人は、研究者のほかにも、TeslaSpaceXのイーロン・マスクCEOや、Facebookの共同設立者であるクリス・ヒューズ氏など多数の起業家が「労働の自動化により失業者が増加することを考えると、ベーシックインカムによる最低保障の制度が必要になる」と主張しています。


フィンランド政府が計画を発表した時、ベーシックインカムの支持者たちは「フィンランドの全国民を対象にすべきだ」と主張していましたが、フィンランド政府はベーシックインカムの対象を一部の長期失業者のみとしました。フィンランド政府は、既存の失業給付がとても高額なため、失業者の就業意欲を低下させる原因になっていると主張しており、失業者の就業意欲を高める目的で、長期失業者の一部を対象にベーシックインカム制度を試験導入したという経緯があります。

しかし、2017年12月にフィンランド議会は、失業者の就業意欲を高めるための新しい法案を可決しました。この法律では、失業者に対し「最低18時間の労働を行うか、3カ月間の訓練プログラムに参加すること」を求めており、仕事が見つけられなかった場合には、失業給付を減額すると規定しています。

フィンランドのベーシックインカム実験は2018年12月で終了し、ベーシックインカム導入による効果をまとめた調査結果は早ければ2019年に発表される見込みです。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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