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電子ドラッグと評されるほど中毒性の高い戦略ゲーム「シヴィライゼーション」はどのようにして誕生したのか?


シドマイヤーズ シヴィライゼーション」シリーズは実在する文明をモチーフとしたストラテジーゲームで、学校の教材として利用されたり4作目のテーマ曲がゲーム音楽として初めてグラミー賞を受賞したりと世界的な人気を誇ります。シド・マイヤー氏がどのようにして初代「シドマイヤーズ シヴィライゼーション」を設計したのかを、コンピューターのエンターテインメントの歴史を記したブログ「The Digital Antiquarian」が説明しています。

The Game of Everything, Part 1: Making Civilization The Digital Antiquarian
https://www.filfre.net/2018/03/the-game-of-everything-part-1-making-civilization/


「シドマイヤーズ シヴィライゼーション」シリーズはターン制のストラテジーゲームです。「あと1ターンだけ」と思いつつもついプレイし続けてしまう中毒性は「電子ドラッグ」と評されてしまうほどで、海外ではジョークながら「シヴィライゼーション」にはまった人たちの社会復帰を目指す団体「CIVANON」が設立されています。

「シドマイヤーズ シヴィライゼーション」シリーズを生み出したのは、その名の通りシド・マイヤー氏です。マイヤー氏は「マイクロプローズ」というゲーム会社を設立し、さまざまな作品を手がけていました。しかし、気分屋のマイヤー氏は一貫して1つのタイトルの開発を行っていたというわけではなかったようで、「レイルロードタイクーン」というゲームの開発に一生懸命取り組んでいると思えば、興味をなくしたからと「Sid Meier's Covert Avtion」というゲームの開発に移るなど、マイクロプローズの同僚は誰も彼が今何の作業をしているのかを把握できていない状態だったとのこと。そんな中で、マイヤー氏がひそかに手がけていたプロジェクトのひとつが「シヴィライゼーション」でした。


当時のマイヤー氏は夜型人間で、昼に出社して夜遅くまで働くという日々を送っていました。一方で、マイヤー氏の直属の部下であるブルース・シェリー氏は、8時に出社し17時に帰宅するというスケジュールでした。マイヤー氏は夜遅くまでゲームを調整し、最新版のディスクをシェリー氏の椅子に置いて帰宅し、シェリー氏は朝出社するとマイヤー氏の置いた最新版のシヴィライゼーションを1時間ほどプレイし、その感想を昼出社したマイヤー氏に伝えるというスタイルで開発されていたといわれています。

シヴィライゼーションは、レイルロードタイクーンと同様に、1989年に発売された「シムシティ」の影響を強く受けているとのこと。マイヤー氏はシムシティを設計したウィル・ライトのゲームデザインを高く評価していました。しかし一方で、シムシティの「特にゲームクリアの目的が設定されていない」という部分は不満に思っていたようで、レイルロードタイクーンやシヴィライゼーションは「コンピューターが操作する対戦相手」と「制限時間」を追加して、プレイヤーにプレイの目的をしっかりと与えるよう設計されています

そして、シムシティが自分の都市を作るのに対して、「シヴィライゼーション」は自分の文明を作り上げるというコンセプトになりました。マイヤー氏はシヴィライゼーションをデザインする上で、シムシティのように具体的で細かい街作りではなく、街のほとんどを抽象化して、主要な建造物・人口・経済状況など限られた情報のみを表示するようにしました。さらに、水路・道路・鉱山の建設を盛り込むことで、国を形作る上で重要な農業・商業・産業をプレイヤーに考慮させることに成功しました。マイヤー氏が作ったシヴィライゼーションのシステムは、以後発売されるターン制ストラテジーゲームのベーシックなスタイルの1つとなります。


シヴィライゼーションは、初めはリアルタイムストラテジーとして開発が始まりましたが、当時マイヤー氏がはまっていたターン制ストラテジーゲーム「Empire」の影響もあり、かなり早い段階でターン制に変更されたそうです。正方形に区切られていたマップ、そして将棋の駒を動かすように自軍のユニットへ移動や戦闘の指示を出す点も、Empireとほとんど同じシステムであると指摘されています。ただし、丸ごと同じシステムを使っているのではなく、Empireの戦闘システムをかなり簡略化・洗練したものになっているとのこと。以下の画像はEmpireで部隊に命令を出すところです。


また、科学者や技術者、そして技術を開発していき、文明を進歩させていく「テック(技術)ツリー」も作り上げられました。テックツリーは「アルファベット」「寺院」「騎乗ユニット」など原始的なものから「潜水艦」「核兵器工場」「SDI防御」など高度なものまでが並んでいて、人類の文明史をなぞるように順番に習得していきます。テックツリーを設計するために、マイヤー氏とシェリー氏は歴史書を読みあさり、それでも足りない場合はスミソニアン博物館や議会図書館を訪れて、人類の歴史を徹底的に研究したそうです。


ゲームは完成し、開発時の企画名だった「シヴィライゼーション」にマイヤー氏の名前を冠した「シドマイヤーズ シヴィライゼーション」というタイトルとなりました。この名前は特に何も考えずにつけられたとのことだったのですが、実は1981年にアヴァロン・ヒルという会社から「Civilization」というボードゲームが出ており、アヴァロン・ヒルからクレームがつきます。

そこで、マイクロプローズの社長であるビル・スティーリー氏は、アヴァロン・ヒルの社長であるエリック・トッド氏と昼食を共にし、ワインを飲みながら交渉を行い、アヴァロン・ヒルから「Civilization」という名前の権利を購入する契約を交わしました。そのおかげで、無事「シドマイヤーズ シヴィライゼーション」は発売できるようになりました。なお、「シドマイヤーズ シヴィライゼーション」はボードゲーム「Civilization」のゲーム化だと思われることも多いそうですが、マイヤー氏は「ボードゲームのCivilizationはプレイしたことがなかった」と主張しているとのこと。

こうして「シドマイヤーズ シヴィライゼーション」は1991年に発売されました。しかし、当時のマイクロプローズは経営難にあえいでおり、ほどなくして買収されてしまいます。マイヤー氏はその後シヴィライゼーションを作ることはないままマイクロプローズを退職し、フィラクシス・ゲームズという新しい会社を立ち上げ、続編となる「シドマイヤーズ シヴィライゼーションII」を発売します。


なお、2018年4月現在で外伝を含めて10作以上の人気シリーズとなっている「シドマイヤーズ シヴィライゼーション」シリーズですが、「シドマイヤーズ」と銘打ってはいるものの、マイヤー氏が直接制作に関わったのは1991年発売の初代と2008年に開発された「シヴィライゼーション・レボリューション」のみとのことです。

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in ゲーム, Posted by log1i_yk