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AWSの可用性を高め、成長を支えた「ゾーン」という考え方


Amazon Web Service(AWS)はAmazon.comが提供するクラウドコンピューティングサービスの総称で、その一角を占めているのがスケーラブルな仮想サーバーを提供するサービス「Amazon Elastic Compute Cloud(EC2)」です。サービス開始は2006年なのですが、可用性を高める大きな特長の「ゾーン」を導入したのが2008年3月26日だったということで、ゾーン導入10周年を記念してAmazon.comの最高技術責任者のワーナー・ヴォゲルスさんがゾーンに関するブログの投稿を行っています。

Looking back at 10 years of compartmentalization at AWS - All Things Distributed
https://www.allthingsdistributed.com/2018/03/ten-years-of-aws-compartimentalization.html

AWSクラウドは、使用する際には「インスタンス」という形で仮想的なサーバーを使用しますが、当然その後ろでは実際にデータセンターに配置されている実物のサーバーが動いています。各データセンターはUPSや発電機などの冗長電源を備え、ネットワーク設計にも冗長性を持たせていますが、依然として中断が発生する可能性があります。

「ゾーン」は、端的に言うと別のデータセンターのことで、ゾーンが異なるというのは、電源やコアネットワーク、さらには建物などの要素を一切共有していないことを意味します。完全に分離されているため、複数の異なるゾーンにインスタンスを立てておくことで、あるゾーンが使用できなくなってもサービスを継続して提供することができます。


また、AWSサービスではできる限りゾーン内で完結できるようにさまざまなサービスが設計されています。これは冗長性を確保するためという理由もあるのですが、ゾーン内のサービスへのアクセス速度が早いという効果を副次的に生み出しています。例えば同じゾーンのEC2インスタンスにパケットを送信した場合、届くまでに必要な時間は0.05ミリ秒を切っています。また、複数のゾーンに同じシステムが置かれているため、緊急時には問題箇所を特定することなく「1つのゾーン全体を削除」という荒技も可能。


また、AWSのサービスが別の地域に進出した際、当初はシームレスなグローバルネットワークとしてデザインすることが考えられていました。例えばAmazon Simple Storage Service(S3)の場合、世界中で同期される一つの大きなS3として動作するように設計することが考えられていました。しかし、この設計はリージョン間にエラーを拡大してしまうため大規模な障害が発生する可能性があり、「ゾーン」のメリットを実感していたこともあるため、結局リージョンを分離することにしたとのこと。


ゾーンを導入してから10年たった2018年では、AWS上で18のリージョンと54のゾーンが動いています。さらに12個以上の新しいリージョンが計画されており、ゾーンという概念をさらに延長してもっと効果的なものにしたい、とヴォゲルスさんは締めくくっています。

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in ネットサービス, Posted by log1d_ts

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