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Amazonなどのオンラインショッピングサイトと地域の小売店は共存できないのか?

By raymondclarkeimages

Amazon.comなど「ネットショッピング」と呼ばれる「e-コマース(電子商取引)」は、家にいながら、多数の商品を手軽に購入可能なとても便利なサービスです。しかし、電子商取引により、地域経済の店舗の売り上げが下がり、存続の危機に陥っているお店が多くあります。一方で、電子商取引を利用して売り上げを伸ばす町の小売店や、電子商取引にはマネできないサービスで生き残る小売店などもあります。そんな小売店が集まるグリーンフィールドでは、電子商取引を相手にどのように戦いを挑んでいるのかを海外メディアのAtlanticが紹介しています。

A Small Town Kept Walmart Out. Now It Faces Amazon. - The Atlantic
https://www.theatlantic.com/business/archive/2018/03/amazon-local-retail/554681/

大資本により建設される大規模小売店は、日用品から家電までを毎日安く商品を販売しているので便利ですが、地域に進出すると地域経済とコミュニティーにダメージを与えるケースがあります。大規模小売店ウォルマートのWikipediaのページによると、ウォルマートが地域に進出してくると、「景観や環境の悪化」「ウォルマートの駐車場で強盗殺人事件が多発」「他の小売店舗の売り上げへの悪影響」そして「新たに創出される雇用のほとんどが、時給4ドル(約420円)から7ドル(約750円)で医療保険がない低賃金の仕事」であることなどが挙げられています。安い価格で提供されているウォルマートにより地域の小売店から客が離れ、地元の店舗は閉店していき、ウォルマートが撤退すると残された町は小売店がなくなり、街は存続の危機となります。

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反ウォルマート運動を行い店舗の進出を阻むことを成功したAl Normanさんは自著の概要でウォルマートは、国民1%にあたる大企業の富裕層であり、客と従業員である99%の国民から不当に利益を得ているとしています。そんなNormanさんを記者のAlana Semuels氏が取材しており、新たな敵に苦戦を強いられていることを伝えています。

Normanさんは、マサチューセッツ州のグリーンフィールドという小さな町を守るために大規模小売店と1993年から約25年間戦い続けています。グリーンフィールドは、Normanさんの生まれ故郷であり、そしてウォルマートと最初に戦った場所です。グリーンフィールドでNormanさんは、ウォルマートの進出を阻むことにより、町の繁華街で店を構えている本屋やレコード店そしてアメリカで数少ない家族経営の百貨店ウィルソンズなどの個人経営の小売店を守ることにより、地域の経済とコミュニティーを維持しました。そして、この活動をアメリカ全国に広げました。Normanさんは現在、ウェブサイト「Sprawl Busters ~ International Clearinghouse for Anti-Sprawl Information(スクロール・バスターズ~反大規模小売店舗拡大情報案内所)」を運営しながら反大規模小売店の活動を続けています。


しかし、Normanさんを含めてグリーンフィールドの地域小売店は、新たな敵、「電子商取引」との戦いに苦戦を強いられています。グリーンフィールドの書店ワールド・アイでは、客がお店に入ったとしても新発売の書籍とゲームを確認してからスマートフォンのカメラで撮影し購入せずに、新発売の商品を安く販売されているオンラインショッピングで購入する「ショールーミング」が行われています。オーナーを務めるJessica Mullinsさんは、「お客たちはAmazonで買っており、ワールド・アイで買いません」と嘆いています。

このグリーンフィールドやニューインランド州の町の数々では、ウォルマートなど大規模小売店の進出を防ぐため、地域議会で町の区域毎に土地利用の許可や禁止を変更するゾーニングを制定したり、反対運動を起こしました。しかし、電子商取引を相手に、ゾーニングなど今まで使っていた方法は使えません。現実に店舗がないAmazonなどのネットショップには地域を規制するゾーニングは行えず、かといって地域住民のインターネットのアクセスを制限するわけにはいきません。


調査会社のフォレスターは、Amazonや他のサイトを含めた電子商取引の売上高は2022年まで増加傾向と予想。2017年のアメリカの小売り分野の売り上げ高のうち約13%が電子商取引による小売り分野売り上げで占められています。加えて、アメリカでの電子商取引による売り上げの3分の1はAmazonでの売上で占められているともフォレスターは試算しています。また、2016年はアメリカの成人人口の83%がAmazonで1回以上買い物をしたとのこと。CNNのニュースでは、2016年に比べ、チェーン店の店舗が増加し、対して個人経営の店舗は減少したと報じられています。

一方でAmazonは、中小企業にビジネスの機会を提供しているという一面があります。Amazonは、2017年度でAmazonで取引した中小企業の中には、売り上げ高10万ドル以上(約1000万円)の中小企業が14万社を超えたと発表。Semuels氏からのメール取材でAmazon広報担当のErik Farleigh氏は、「私たちは、世界中の消費者とつながるように多くの企業に手を差し伸べています」と中小企業とメインストリートの小売店舗を含めた企業とアメリカ国内だけではなく世界中の客をつなげていることを表すコメントをしました。

グリーンフィールドのメインストリートから1マイル(約1.6km)先にある中古本を中心に販売する小規模の書店「Roundabout Books」は、Amazonによってビジネスの機会を得た中小企業の1社です。店主のRaymond Nealさんは元教師で、Roundabout Booksを2012年に開店。Amazonでも本を販売し、Amazonでの売り上げが収入の半分を占め、もう半分がボストンなどのグリーンフィールドより大規模な街でのポップアップ店舗による出張販売の売り上げによる収入で占められています。グリーンフィールドでの売上はほとんどなく、1日の売上が50ドル(約5000円)に達すれば良い方とのこと。

By Aritra Sen

記者のSemuels氏は、客が個人経営店舗からオンライン店舗への移行することは、グリーンフィールドを含めてアメリカ全国の経済とコミュニティーに影響をあたえるものと予想しています。国勢調査のデータによると平均的なアメリカ国民は、小売店での購入費用が年間1万5000ドル(約160万円)と示されています。アメリカの個人経営連合(AMIBA)によると、小売店での購入費用が個人経営の地域で買い物に使用されると、使用されたお金が従業員の賃金や従業員の支出、地域への事前寄付など連鎖的に地域の経済につながり、個人経営店で使った金額の4倍に相当する良い経済効果を地域に与えます。また、Semuels氏が以前書いた記事によると、個人経営店のオーナーは、近隣のバーや他の小売店でお金を使い、消費税による税収に大きな影響を与えるとのこと。

しかし、小売店での支払いが、オンラインショッピングサイトやチェーン店など地域に資本を置いていない店舗に流れると、連鎖的な地域経済につながらないことで、地域経済が冷え込んでいく原因になるとのこと。地域経済が冷え込んでいくと、メインストリートの個人経営店の小売店が閉店しメインストリートに人通りが少なくなり、コミュニティーが過疎的になっていきます。加えて、地域の中小企業の経済的な体力が弱くなることにより、多くの中小企業の出資により成り立っている地域社会の根幹であるソフトボールチームや地域イベントのバーベキュー大会やパレード、チャリティーオークションなどが開催ができなくなることもコミュニティーが過疎的になる理由になります。

By acme401

多くの地域でオンラインショッピングサイトに客が流れる問題が起きており、各地で解決しようと取り組みが起きています。非営利団体のInstitute for Local Self-Reliance(地方自治研究所)のディレクターStacy Mitchell氏によるとアリゾナ州のNPO法人Local First Arizonaやメイン州のNPO法人Portland Buy Localなどは、「地域での買い物を促す」キャンペーンを行い、市役所は、繁華街の新しい団地の中に住宅と小売店を両方建設可能な混合地区を作れるようにするゾーニングすることにより、手頃な商業地区ができるとしています。グリーンフィールドでは独自の地域通貨Greenfield Dollars(グリーンフィールド・ドル)を発行し、個人経営店の店主たちが期待をしています。

しかし、記者のSemuels氏は、都市がAmazonのものよりも便利なショッピング環境を作り出すことは難しいと予想しています。グリーンフィールドに住んでいる女性Julie Keaneさんは、地元の個人経営店で買い物することにより、個人経営店を支援することを重要だと家族と共に理解しています。しかし、Keaneさんの生後10カ月になる息子に、地元百貨店のウィルソンズのものではない「Amazonのベビー服」も買い与えています。なぜなら、赤ちゃんである息子の面倒を見ながら車で30分先の大型店に行き同じベビー服を買うのは合理的ではないからです。

Normanさんは、ウォルマートを相手に反対運動を行い、ウォルマートで買い物をしません。しかし、電子商取引はこれからの買い物方法だと考えており、Amazonをウォルマートと同じように嫌悪できません。Normanさんの奥さんは、Amazonで無料配送などのサービスを受けられるプライム会員の資格をもっており、最近はグリーンフィールドで見つけられなかった紅茶を購入しました。Normanさんは、ウォルマートの時のような抗議やゾーニングを計画するミーティングをAmazon相手に開催する予定はありませんが、世界一裕福な人物であるAmazonのJeffrey Bezos CEOの懐に自分のお金がいくのは好みません。25年前にウォルマートと戦った時の場合、グリーンフィールドでウォルマートが建設される予定の時に、Normanさんは反対運動で、「ウォルマートが建ったとしても、私たちは客として行かない」というステッカーを持ち、活動家として住民たちを先導しました。しかし電子商取引の場合、仲間として反対運動に参加したグリーンフィールドの住民たちは、既に客として電子商取引を利用しています。

By Aurelijus Valeisa

アメリカの大型スーパーマーケット・チェーンA&Pと中小企業との戦いを記した書籍「The Great A&P」の作者、Marc Levinson氏は、「地元の小売店が自ら優位性について真剣に考えるべき時だと思います」と語りました。一部の小売店は、電子商取引の企業が行えないサービスを客に提供しています。グリーンフィールドのゲーム店「グリーンフィールドゲームズ」では、オーナーのSeth Lustigさんが、「イベントのボードゲームナイトやライブオークションなど開催することにより、客が一般的に電子商取引をしていても巡り会えない商品の知識を提供することができたと」述べました。バーモント州でBob Nelsonさんがオーナーを務めているホームセンターでは無料で組み立てを行っており、客さんたちはそのサービスを求め、電子商取引で購入して自分で組み立てるよりNelsonさんの店を選んでいます。Nelsonさんは、「お客へのサービスがお店で買い物をする魅力につながる」と述べました。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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