オリンピックのスケート競技・パシュートを「車でやってみた」ムービーが公開中
冬季オリンピックに採用されているスケート競技の1つ「パシュート」。3人のスケート選手が一列になって滑り、順番を交代しながら技術とチームワークでタイムを削り取って速さを競い合う競技です。そんなパシュートを「車で行うと面白いはず」ということで、実際に車でパシュートを行ったムービーがベストモータリングの公式YouTubeチャンネルで公開されています。
冬季五輪 日本 金メダル!! クルマでパシュートやってみた!!【Best MOTORing】2011 - YouTube
この企画は、自動車雑誌「オートスポーツ」のコラムでレーシングドライバーの木下隆之選手が「パシュートを車で行うと面白いはず」と書いたことがきっかけになったもの。反響が大きかったことから、「それじゃあ実際にやってみよう」ということで2011年に実現していたのがこのムービーで、2018年2月にYouTubeでも公開されました。車で行うパシュートのバトルということで、「バトルパシュート」と名付けられています。
車に乗ってパシュートを行うのは、レーシングドライバーの荒聖治選手(左)と木下隆之選手(中)、そして大嶋和也選手(右)の3人。3人が運転する3台の車がチームになって、集団でコースをぐるぐると周回します。
バトルパシュートのコースは、スケートのパシュートの国際規定と同じ全長400メートルのコースを、パイロンを並べて再現。コース幅は車のサイズに合わせて、人間用の4メートルからミニサーキットと同等の12メートルに拡張されています。まずはこのコースで実際に車を走らせ、バトルパシュートを行えるかをテストします。
設定したパシュートコースが「車ではどんなものか?」をチェックするために、身のこなしが軽やかなコンパクトスポーツ車を3台用意。
3台の詳しいスペックは以下の通り
【レーシングドライバー3名のパシュート使用車】
◆木下選手
・モデル:ホンダ CR-Z
・トランスミッション:MT
・サイズ:全長4080mm、全高1740mm、全幅1395mm
・車重:1130kg
・エンジン最高出力:127ps/6000rpm
・エンジン最大トルク:22.7kgm/4800rpm
・使用タイヤ:BS POTENZA RE050A(195/55R16)
・価格:249.8万円
◆大嶋選手
・モデル:ホンダ CR-Z
・トランスミッション:CVT
・サイズ:全長4080mm、全高1740mm、全幅1395mm
・車重:1160kg
・エンジン最高出力:128ps/6000rpm
・エンジン最大トルク:22.8kgm/4800rpm
・使用タイヤ:BS POTENZA RE050A(195/55R16)
・価格:249.8万円
◆荒選手
・モデル:スズキ SWIFT SPORT
・トランスミッション:AT
・サイズ:全長3765mm、全高1680mm、全幅1510mm
・車重:1060kg
・エンジン最高出力:127ps/6800rpm
・エンジン最大トルク:15.1kgm/4800rpm
・使用タイヤ:DLSP SPORT(195/50R16)
・価格:161.7万円
3台の車がコースを1台ずつ走った際のタイムは、以下のように21秒40から21秒91とバラツキが生じています。各車のトップスピードは時速90km弱ですが、最もタイムが遅かったCR-Z (CVT)の大嶋選手は最高速が86.7km/hと最も低くなっています。パシュートコースの路面はなだらかに見えますが、外から見るよりも凹凸が激しいために車体の姿勢が乱され気味だとのこと。
◆3台のパシュートコースラップタイム一覧
・黒いCR-Z(MT):21秒40(木下選手)
・白いCR-Z(CVT):21秒90(大嶋選手)
・黄色い SWIFT SPORT:21秒51秒(荒選手)
各レーシングドライバーが、それぞれコースの感想を語ります。木下(中)選手は、「この大きさコースだとパシュートの入れ替わりができそう」。荒選手(左)は「パシュート独特の入れ替わりが難しくテクニックが必要そう。車のキャラクターに合わせた走りが重要そう」。大嶋選手(右)は「アクセルを踏みこんでいると、コース幅がちょっと足りなくなる」など感想を語り、パシュートのコースと車の感触を確かめていました。
1回走って車でコースの感覚をチェックしたところ、バトルパシュートのコースは変更せずに、このままに決定。
スケートのパシュートは、空気抵抗により先頭の選手の体力が削がれるのを防ぐために、先頭を次々と入れ替えることで体力を温存します。対して、時速90km弱の車による入れ替わりでも空気抵抗の低減は起きるのでしょうか?
ちなみに、富士スピードウェイやスポーツランドSUGOなどのレースでは、最高時速が200kmにも達し、空気抵抗の低減を争う「スリップストリーム合戦」が繰り広げられます。
次は3台が同じコースに入り、「入れ替えなしの縦一列」になって走ります。ミーティングで3人は、3台の中で1番ラップタイムが遅かった大嶋選手が乗る白いCR-Z(CVT)が成功の鍵になると話し、ラップタイムが1番速かった木下選手の黒いCR-Z(MT)が先頭を走る作戦に決定。先頭の車両は、後続車に追突されないように一定のペースで走る方針を話します。
入れ替えなしの縦一列でコースを走ってみたラップタイムは、1台ずつ走った時とほぼ変わらず。このコースの作りと全長では、あまり空気抵抗の差はないようです。
◆3台の入れ替えなしの1列走行でのラップタイム一覧
・黒いCR-Z(MT):21秒40→21秒20(木下選手)
・白いCR-Z(CVT):21秒90→21秒82(大嶋選手)
・黄色いSWIFT SPORT:21秒51秒→21秒41(荒選手)
3名ともバトルパシュートコースでは、スケートような「空気抵抗の低減はない」という結論で一致。次は「入れ替えあり」で一列になって走ってみます。
3台が先ほどと同じ並び順で、世界初の「車でパシュート」がスタート。ちなみに、練習走行はなしのぶっつけ本番で入れ替え走行を行います。さすがプロドライバー。
スケートのパシュートと同じように、先頭の黒いCR-Z(木下選手)が内側のインコースから外側のアウトコースに行き、後続の黄色いSWIFT SPORT(荒選手)に先頭をあけます。それに白いCR-Z(大嶋選手)が続きます。
インコースに黄色いSWIFT SPORT(荒選手)が入り、先頭が交代。車でパシュートのように入れ替えが成功。
入れ替わりを行ったタイムは以下の通りでほぼ変わらず。
◆入れ替わりをありのラップタイム一覧
・黄色いSWIFT SPORT:22秒01(荒選手)
・白いCR-Z(CVT):23秒30(大嶋選手)
・黒いCR-Z(MT):21秒82(木下選手)
カーブで先頭車両の入れ替え、という高難易度の運転を行っていながら、ラップタイムが「ほぼ変わらず」という結果。プロドライバーの運転技術の高さが垣間見えます。
◆入れ替えなし単体ラップタイム→入れ替えありラップタイム一覧
・黒いCTR-Z(MT):21秒40→22秒02(木下選手)
・白いCR-Z(CVT):21秒90→22秒30(大嶋選手)
・黄色いSWIFT SPORT:21秒51秒→21秒41(荒選手)
ここで大嶋選手(左)が、この入れ替え運転を「プロじゃない人たちがやったらどうなるか?」と発言。
そこで、素人代表のベストモータリング編集部の3人とプロドライバーたちが、バトルパシュートでプレマッチすることに。
編集部側リーダーの(編)ホンダさんが使用する車は、なんと420馬力とハイパワーな「日産 S15シルビア」。
編集部の学さんは、350馬力で2.5リッターターボ搭載の「トヨタ マークII」。
編集部側で最後の制作部の辻さんは、170馬力でパーティーレース仕様の「マツダ ロードスターNR-A」。
筑波サーキットで「1分8秒台」という好成績をたたき出した経験があるとのこと。
プロドライバーでない編集部側は「車のパワーで負かそう」という作戦がうかがえます。編集部側の練習走行が終わり、両チームの準備が完了。スケートのパシュートと同じくチーム別にコースの180度反対からスタートし、コースを8周したタイムを競います。
プロ VS 編集部員のバトルパシュート8ラップ対決がスタート。
画像上段の編集部は、練習から1番ラップタイムが遅いと予想されている学さんの白いマークIIを先頭ににスタート。一方でプロ側は、前回の走行と同様に先頭からタイムが速い順番で並びます。この作戦の差がどう結果に反映されるのでしょうか。
走行中の車内にカメラが切り替わると、プロ側は無言で走っているのがわかります。
一方で編集部側は、「ふ~!」っと言いながら運転するメンバーもおり、全体的にテンションが上がっているように見えます。
1周目のラップタイムは0秒17差で、車のパワーが優勢な編集部がわずかにリード。
2周目からはルールで入れ替えが行われます。プロ側はコーナーで、編集部側はコーナーからのストレート付近で入れ替わり、別々の方法を選択。プロ側の方がスマートに入れ替えを行います。
2周目は、ラップタイムが0秒17差から0秒40差と、編集部側がさらに差を0秒23に広げます。
3周目に突入。
合計タイムは、0秒40差から1秒43差とさらに差が開きます。
8ラップ勝負の半分にあたる4ラップ目の通過タイムも1秒43差から2秒93差とさらに差が広がり……
ここでラップタイムが大差のため対決終了。
編集部側リーダーの(編)ホンダさんが「オレ達の作戦勝ちってやつかな?」と話します。勝った編集部はうれしそう。
「これ馬力があるクルマが来たらこういう事もありえる」
プロ側の木下選手は勝敗について「それを俺らがなんとかしなきゃいけなかったんだけどね」とコメントしていました。
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