日本のお菓子を世界中に届ける「Candy Japan」が150万円かけてYouTube広告を出してみてわかったこと
日本のお店で売っているお菓子を詰め合わせ、世界中のお客さんに発送するというビジネスを運営しているCandy Japanは、2011年の設立から着実に売り上げと利益を伸ばしてきているとのこと。そんなCandy Japanはさらなる成長を目指してYouTubeでの広告配信を実施。その一連の流れと結果がブログで公開されています。
What I Learned Burning $13,867 on YouTube Ads for Candy Japan
https://www.candyjapan.com/behind-the-scenes/what-i-learned-advertising-on-youtube
日本人が外国のスーパーに並んでいるお菓子類を見て「わぁ」と思うことがあるように、外国の人にとって日本で売られているお菓子はとても興味深く目に映ることがあるようです。そんなところに目を付けたフィンランド出身・日本在住のBemmu Sepponenさんは、日本で売っているお菓子を詰め合わせ、世界中のお客さんにひと月に2回発送するサービスを2011年に立ち上げました。
サービスは徐々に拡大して2012年には利益を上げられるようになり、2014年には月間収益が100万円を超える規模にまで成長。立ち上げ後からの足跡は全て同社の公式ブログで公開されているのですが、2015年には不正なカード使用が発生していたことが発覚したり、2016年には円高に悩まされるなど苦労が続き、2017年は苦難の年だったことが明らかにされています。
Candy Japan 2017 Year in Review
https://www.candyjapan.com/behind-the-scenes/2017-year-in-review
◆アニメーション広告の制作
Candy Japanでは、YouTubeに広告を出すことで利用者の拡大を図ったとのこと。同社は日本国外に住む人を対象にしたサービスであり、インターネットを使った広告は世界中にアピールできる上に、ターゲットを絞った広告を配信することで効率性を高めることが可能です。
そこでCandy Japanはまず、広告用の映像を作成することからスタートしました。広告で使われる映像には、アプリケーションなど画面をキャプチャした「スクリーンキャスト」型のもの、実際の人や風景、CGなどを使って商品を説明する実写型のもの、そしてアニメーション型の大きく3つがあります。Candy Japanでは、同社のサービスを利用しているユーザーにはアニメ好きの人が多いことから、アニメーション型の広告映像を制作することを決定しました。
実際に制作に乗り出すにあたって避けられないのが、制作費用の問題です。一般的にアニメーションを作る場合、「1秒あたり100ドル~150ドル(約1万円~1万6000円)」程度が制作費の相場となっており、Candy Japanが想定していた30秒広告になるとその費用は3000ドルから4500ドル(約32万円~48万円)のレベルになります。制作を誰に任せるか検討していたCandy Japanは、アニメーション制作会社ではなく、同社のサイトのイラストを担当している絵師に発注することで映像の制作を開始しました。
映像のコンセプトや構成、タイムラインを考え、セリフも自分たちで考えて映像を制作したところ、結果的に映像の制作費用で3000ドル(約32万円)、プロに頼んだナレーションの費用として100ドル(約1万円)がかかったとのこと。このようにして作られたのが、このムービーです。
What is Candy Japan? - YouTube
◆作った広告をYouTubeで表示させる
アニメーション広告の制作が完了したら、今度はその映像をYouTubeにアップロードして広告として使う準備を行います。Googleの広告プラットフォーム「AdWords」で広告キャンペーンを設定し、そこでYouTubeのIDを指定することで、広告を設定することができます。
YouTubeでの広告表示にかかる費用は、Google AdWordsと基本的に同一です。そのコストは広告主間のオークション形式で決定され、より多くの費用を支払った(=高い単価を設定した)広告主の広告がより多く表示されることになります。その単価は通常、表示1000回あたりのコスト「CPM」で表され、最低価格は10ドル(約1000円)となっていますが、もちろんこれでは効果の高い広告にはなりません。そこでCandy Japanでは、テレビでCMを打つ時と同じぐらいの単価を設定してYouTubeで広告を表示させることで、その有効性を確認できるようにしたとのこと。なお、YouTubeの広告の場合、視聴者が広告を途中でスキップした場合はその分の広告掲載料は徴収されません。Candy Japanの場合、全広告表示回数のうち、実際に最後まで30秒の広告が見られた割合は30%だったそうです。
インターネット広告の優れている点は、事前に「トピック」や「プレースメント」、対象となる「オーディエンス」、「キーワード」などを設定しておくことで、広告が響きそうな相手を絞り込んで表示させることができるところにあります。Candy Japanでは、これらの設定に苦労を重ねながら、2017年夏からYouTube上での広告動画配信をスタートさせました。
◆最終的な広告のパフォーマンスは?
広告配信スタート後は、AdWordsなどから得られる情報をもとに最適化を行い、効率的なアピールをねらってきたCandy Japanでしたが、結果的に今回の広告戦略は失敗に終わり、投じた費用を超える売上を回収することはかなわなかったとのこと。実際に広告を目にしてサービスに申し込んでくれた人も多数存在していたとのことですが、長期的な影響を加味しても、広告を打つのに投じた1万3867ドル(約150万円)というコストを回収するのに必要な数には達していないという結論に達しています。
Candy Japanでは今回の広告キャンペーンをいったん終了させ、次のキャンペーンのアイデアを検討している段階とのこと。今回の経験をもとにCandy Japanは、YouTubeの広告は決して安くはないことから、「商品が売れることで少なくとも数千円の純利益が上がる商品」を用意できる場合に限り、Candy Japanのサービスや月額制のアプリのような定額制の売上構造を持つ商品はYouTube広告には向いていないという考えを述べています。
また、広告に適したと思われる商品を持っている場合でも、状況に応じて広告キャンペーンを変更して推移を見守れるだけの体力(=金銭的余裕)を持っておくことも重要であるとしています。
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