教育にITを融合させる「EdTech」がどのぐらい実際に活用されているか把握する方法
By Wesley Fryer
教育の仕組みにIT技術を取り入れることで革新的な教育・人材開発を狙う「EdTech (エドテック)」が日本でも注目を集め始めています。IT技術を活用することで生徒の学習進捗や達成度を把握することができるEdTechですが、「導入=成績up」というほど容易なものではありません。せっかく導入したEdTechをフルに活用するために、どのくらい生徒に利用されているかを把握する方法がまとめられています。
A Clever Way to Measure How Students Actually Use Edtech (and Whether It Works) | EdSurge News
https://www.edsurge.com/news/2018-01-17-a-clever-way-to-measure-how-students-actually-use-edtech-and-whether-it-works
IT先進国であるアメリカや中国では、「創造性」「課題解決力」「科学技術」等に重点を置いたEdTechの実装が進んでいます。EdTechは「Education」と「Technology」を組合せた造語で、デジタル技術を活用した個別学習、文理融合、教科横断などを特徴としています。日本の経済産業省でも、EdTechの今後について考える研究会が設置され、2018年1月から取り組みが始まっています。
『「未来の教室」とEdTech研究会』を設置します~産業と地方創生の未来を切り拓く人材育成の場とEdTechの姿を考えます~(METI/経済産業省)
http://www.meti.go.jp/press/2017/01/20180116001/20180116001.html
アメリカのSoftware and Information Industry Association(ソフトウェア&情報産業協会:SIIA)の調査によると、アメリカでは幼稚園から高等学校までのK-12と呼ばれる期間の教育において毎年83億ドル(約9200億円)の予算がEdTechのために使われています。そんなアメリカでも、生徒がさまざまなソフトウェアを活用方法や、実際にこれらのツールがどの程度使われているのかを手動で確認するのは容易ではないとのこと。ソフトウェアのベンダーから時間をかけてデータをダウンロードし、エクセルの表と格闘してデータを集めて必要な情報を抽出するために、多くの労力が必要とされています。
この状況について、シカゴ北西部の郊外にある学区「U-46」の評価責任者であるマシュー・ライモンディ氏は、「さまざまなウェブサイトに行き、さまざまな使用レポートを見つけ、ベンダーと話をしなければなりませんでした。生徒が実際にツールを活用しているかどうかを知るためには、さまざまな場所を飛び回る必要がありました」と、一筋縄ではいかない様子を語ります。
しかし、この学区では2017年秋からClever製のEdTechツール「Goals」を導入することで、事態の改善を図っているとのこと。Goalsでは、いくつもあるデジタル学習プログラムにどれくらいの時間を費やしているか、そしてEdTechソフトウェアの種類ごとに定義された「進歩」の様子を教育者や生徒、保護者が見ることが可能で、教師は個々の学生の毎週の使用目標を設定し、その目標に対する進捗状況を追跡することもできます。
Goals | Clever
https://clever.com/products/goals
Goalsを開発したClever社はサンフランシスコに本拠を置く企業で、かつては学校の教育現場で生みだされる大量のデータをソフトウェアベンダーとの間で同期させるAPIを提供していたとのこと。その後Cleverは、1度のサインインで生徒が全てのアプリケーションを利用できるようになるソリューションを開発しています。
Cleverによると、同社の製品はアメリカ中で6万以上のK-12教育機関で活用されているとのこと。さらに、そのシステムには300以上の教育アプリケーションがひも付けられているといいます。同社のCEOであるタイラー・ボスメニー氏は、全米の生徒のうち20%がClever製のソフトウェアにログインしたことがあると述べています。
レイモンディ氏によると、より早く、より信頼性の高いデータを使用することで、生徒がプログラムで壁に突き当たった時に教師がすぐ手を差し伸べられるように手助けをできるとのこと。これは、単にコンピューターの画面にアプリケーションが立ち上がっていることを確認するだけでは気付けない「個別の生徒の進捗度」を把握することで、きめ細かいフォローを可能にするものとなっている模様。
かつては前述のAPIへのアクセスを課金対象にしていたCleverにとって、Goalsは新たな収益源となる可能性があります。ボスメニーCEOは「これは、もし学校が望めば追加のプレミアムオファーを提供することを可能にする初めての製品です」と語っています。ボスメニー氏は詳細な料金プランについては言及を避けていますが、基本的には学区の規模や追加の開発の必要性に応じて価格が変化すると述べています。
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