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元NASAのエンジニアが本気でゲームセンターのルーレットマシン攻略に挑戦するとこうなる


ものすごい速度でスポンジ弾を発射するトイガン水圧でスイカを真っ二つにできるほどハイパワーな水鉄砲など、エンジニアならではの技術力を駆使した工作を発表する元NASAのエンジニアであるMark Roberさんが、ゲームセンターに置かれている電子ルーレットマシンを自作の機械を使って検証している様子を以下のムービーで公開しています。

ARCADE SCAM SCIENCE (not clickbait) - YouTube


Mark Roberさんの傍らにあるのが電子ルーレットマシンのCycloneです。


Cycloneにはたくさんの電球で作られたルーレットがあり、ボタンを押してジャックポットの目で流れる光をぴったり止めることができると景品がたくさんもらえるというゲームです。


Mark RoberさんはこのCycloneのジャックポットを確実に当てることで景品を子供にばらまきたいという大人げない夢を抱きます。


そしてCycloneを研究しまくった結果に開発したのがこの秘密兵器です。


青い触手部分の先端には光を読み取るセンサーが備えられています。


光センサーはルーレットを流れる5~6つ分の電球の光を読み取ると、設定した時間を挟んで、ボタンを押すべきタイミングで信号を送ります。


3Dプリンターで設計された土台部分にはソノレイドが備え付けられており、センサーからの信号を受け取ると作動し、ボタンを押せるようになっています。


乾電池式の20V電源装置によって、持ち運びもできるようになっています。


制御はマイコン基板のArduinoによって行われ、Wi-Fi接続も可能となっています。


スマートフォンのアプリから、センサー反応からソレノイドの作動までの間隔を調節することもできるので、ルーレットマシンの個体差や設定に合わせて動作させることもできます。


この持ち運び可能な秘密兵器をバックパックに詰め込みます。


ソノレイドがボタンを押すためにバックパックの底には穴が開けられています。これで秘密兵器をわざわざ取り出さなくてもこっそり使えるようになるというわけです。


早速ゲームセンターに行って検証します。Cycloneの操作パネルの上にバックパックを置いて、ルーレットの流れを見ながらスマートフォンで秘密兵器を操作します。


途中で背後をゲームセンターの警備員が通りかかってヒヤリとする場面もありましたが、特に怪しまれることはありませんでした。


しかし、1回目の検証で30回もルーレットに挑んだところ、何度やってもジャックポットの隣で光の目がとまってしまい、全く当てられずに終わってしまいます。考えられる原因は秘密兵器に何らかの欠陥があってばらつきが生まれているか、もしくはルーレットのシステムそのものに問題があるかということ。


「計画通りに事が運ばない状況を解決するというタスクはエンジニアには日常茶飯事です。解決するためにはエラーの原因がどこにあるのかを体系的に探っていかなければなりません。SF作家のカール・セーガンも晩年のインタビューで『科学とはひとつの知識体系である以上に考えるための手法そのものだ』と述べています」とMark Roberさんは語ります。


まずは秘密兵器の光センサー・ソノレイド・マイコン基板で何か問題があるかを調べます。またルーレットに使われている電球の光にムラがあるためにセンサーに誤差を生じさせている可能性も考えます。


光センサーの精密性を改めて確認するため、光センサーが光を読み取ってからソノレイドが作動するまでの時間差を1秒に設定し、操作に用いているスマートフォンを使って何度も計測してみたところ、1000分の1秒単位まで狂いなく作動していることが分かります。スマートフォンの光を電球に変えても同じように正確な計測結果が得られました。人間の反射神経を軽く超えた精度が維持できているので、秘密兵器の動作に問題があるとは思えません。


そうなるとルーレットに使われている電球の光をセンサーが正確に読み取れていないという可能性を検討しなければなりませんが、実験してみた結果、等間隔で点滅する電球の光をセンサーで読み取ってその信号データを分析したところ、こちらも1000分の1秒単位の精度で正確に反応しているという結果が得られました。


さらに同系統の電子ルーレットマシンを試すため、友人家族と子供たちと一緒に違うゲームセンターで秘密兵器を使用してみることにしました。


すると数回ジャックポットを当てることができました。マシンから山のように排出される無料プレイチケットに子供も大興奮で、動画冒頭で述べていた夢はとりあえず達成。しかし当たりは毎回出るわけではなく、ほとんどの場合はジャックポットの左右で光が止まってしまうのは変わりません。


ここから電子ルーレットマシンがジャックポットを排出するのは確率によってランダムに決まっているということがはっきりと分かります。そしてMark Roberさんは25年前に作られたCycloneの説明書を入手して調べることにしました。


すると説明書には「このマシンはジャックポットの出る確率を設定できます」という文言がありました。


つまりこの手のエレメカはゲームスキルによって勝利が得られるものではなく、サイコロを転がして目を当てるギャンブルでしかないとMark Roberさんは指摘します。ほとんど当たりのような惜しい外れを引いた時、人は「次は当たる」と思ってもっとお金をつぎ込んでしまうというニアミスの効果というものが心理学の世界でも唱えられています。


「公式サイトで『もっとも利益率の高いマシンだ』という煽り文句がこの詐欺のような機械につけられているのは何ら驚くことではないし、みんなはそのお金を別のゲームにつぎ込むべきだね!」という言葉でMark Roberさんは締めています。


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in ハードウェア,   サイエンス,   動画, Posted by log1i_yk

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