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いかにスロットマシンが人から最大限のお金と時間を奪うように作られているのかを解説

by Jeff Kubina

カジノやゲームセンターにあるスロットマシンは、プレイしている時には「あともうちょっとで当たる!」と思いますが、実際に大当たりを出すのはごく少数の人。これは製造側が「あと少し!」と人にお金と時間を費やさせるよう多くの工夫をしているためですが、それゆえに海外では多くの中毒者を生み出してています。スロットマシンはいかに人々が依存するように作られているのか、The Guardianがその仕組みを解説しています。

Hooked: how pokies are designed to be addictive | Australia news | The Guardian
https://www.theguardian.com/australia-news/datablog/ng-interactive/2017/sep/28/hooked-how-pokies-are-designed-to-be-addictive


上記のウェブサイトにアクセスすると、まず「止めたくなるまでボタンを押してください」という文字と共に登場したのは赤いボタン。このボタンは押すとすぐに「+100」という表示が現れるので、ボタンを押すと「ほうほう」と納得してすぐに押すことをやめてしまいます。


次に現れたのは青いボタン。このボタンは押しても基本的に「0」と表示され報酬なしなのですが……


何度かボタンを押していると「+100」が現れました。「+100」が出る頻度はまれなので、始めは「本当に報酬がもらえるようになっているの?」と不信に思いつつボタンを押し、なかなか「+100」が出なかったら出るまで高速でボタンを押し、出たら出たで「もっと出るのでは?」と高速でボタンを押してしまいました。


上記の赤いボタンは「定期的報酬」、青いボタンは「不定期・断続的な報酬」を示したもの。前者は報酬がでることを予測できますが、後者はいつ報酬が出るのかが、報酬が出るまでわかりません。この「予測できない報酬」はスロットマシンを初めとする多くのゲームの基本的なメカニクスの1つ。報酬がいつ与えられるかがわからないからこそ、人々はゲームを長い時間プレイしてしまいます。


元ギャンブラーで中毒者の更正プログラムを運営しているKate Seselja氏によると、このように「報酬が予測できない」というスロットマシンはプレイする人を緊張と期待の状況に置くとのこと。そして「次こそ当たる」と考えて目の前のスロットマシンに100%集中することで、人は多くのお金を費やしてしまいます。


例えば以下のスロットマシンでは、同じシンボルが一列にそろうとプレイヤーの勝ち。シンボルによって価値が異なり、ジャックポットのシンボルになるほど一列にそろう確率は小さくなります。しかし、このスロットは、たとえ当たりが出なくともプレイヤーに「もう少しでシンボルがそろう」という印象を持たせるようにデザインされているとのこと。「SPIN」を押すと……


真ん中の一列はそろいませんでしたが、その上の一列にはパイナップルが出そろいました。これがプレイヤーに「惜しかった!」という印象を持たせる仕組みの1つ。


スロットマシンで回転する「リール」には数種類シンボルが描かれています。例えば8種類のシンボルを示すリールを展開した以下の図では、ドルマークのついたジャックポットが当たる確率は8分の1に見えます。


しかし、実際には価値の高いシンボルは頻繁に出ないよう製造者が調整を加えています。なので、現実にジャックポットのシンボルが出る確率は16分の1。


この時、重要なのは「ポジション」です。当たりが出なかった時に価値の高いシンボルが隣に出るように配置することで、プレイヤーの印象を操作するわけです。以下の図では赤で示されているのが価値の高いシンボルで、青で示されているのが価値の低いシンボル。


上記のようにデザインすることでプレイヤーに「惜しかった!」と思わせるのです。


そしてスロットマシンでは3つのリールが並びますが、3つのリールによって含まれルシンボルの数は異なります。一番最初に止まる左のリールはジャックポットの数が多く、真ん中、右に進むほどジャックポットが出る確率は小さくなります。以下の図では左のリールでジャックポットが出る確率は16分の1ですが、真ん中は32分の1、右は44分の1です。これらの要素を組み合わせることで、プレイヤーに「予測できなくする」のがスロットマシンの仕組み。


また、1列ではなく、3列でシンボルがそろうかどうかを見るスロットマシンもあります。このマシンでは3つのラインでシンボルがそろう「勝ち」をプレイヤーは予測しますが、実際には1つのラインにおける「小さな勝ち」が表示されます。費やしたお金を鑑みると、この「勝ち」は微々たるものなのですが、ライトが点灯するなどして「あなたの勝ちです!」とマシンが示すことで、「自分は勝っているんだ」と運気の上昇を感じてユーザーはプレイし続けてしまうわけです。


ギャンブラーに勝たせていくらかのお金を得られるようにすることは、ギャンブラーをより長い時間スロットマシンに縛り付けるという結果を生み出します。

以下の青いグラフは1列だけで勝ち負けを決めるスロット、赤いラインが複数のラインで勝ち負けを決めるスロットを示します。縦軸が残金、横軸がプレイ数を示しており、複数ラインで勝ち負けを決めるスロットの方が、より長い時間プレイヤーをゲームに費やさせることが示されています。


Seselja氏も「1日のうちどれくらいの時間をギャンブルに割けるか」ということを常に考えていたと言います。仕事やライフスタイルのため毎日ギャンブルをするのは困難であったため、ギャンブルに費やせる時間があったらできる限り費やし、他のことに一切お金を費やせない日々を送ったそうです。

なお、オーストラリア政府の統計によると、スロットマシンを定期的に行う人6人のうち1人は深刻な中毒と言われています。ギャンブルについての研究を行っているチャールズ・リビングストン教授は、スロットマシンは人々が中毒になるようなデザインになっていること、人が最大限の時間とお金を費やすように作られていること、そして、人々がこれらの点を理解していないということという問題点を挙げています。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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