電力不要のパワードスーツ「EksoVest」でフォード労働者の事故が83%も激減する絶大な効果を発揮
人間の動きをサポートする動力補助ツールを開発するアメリカのEkso Bionicsが、バックパックのように背負うタイプのベスト型パワードスーツ「EksoVest」を開発しました。フォード自動車の製造現場で長期間の実証試験が行われたEksoVestは、製造工程における事故を激減させ労働者の疲労を軽減し生産性を高めるなど、劇的な効果を発揮しています。
Ford Pilots New Exoskeleton Technology to Help Lessen Chance of Worker Fatigue, Injury | Ford Media Center
https://media.ford.com/content/fordmedia/fna/us/en/news/2017/11/09/ford-exoskeleton-technology-pilot.html
EksoWorks & Ford Partnership | Ekso Bionics
http://eksobionics.com/eksoworks/ford/
電力などの動力源なしでパワーアップを可能にするバックパック型外骨格「EksoVest」がどのようなパワードスーツなのかは以下のムービーを見れば一発で理解できます。
Power Without Pain for Manufacturing and Construction - YouTube
EksoWorksはすでに「EksoZeroG」という重労働者向けのパワーアシストツールを開発してきました。
EksoWorksは次のステップとして、より移動性に富むスーツ型のパワーアシストツールの開発に着手。
こうして完成したのが「EksoVest」です。
EksoVestはバックパックのように背負うタイプのパワードスーツで、簡単にセットできます。
バネ式のシステムは電力を使いません。
5ポンドから15ポンド(約2.3kgから約6.8kg)の重さをアシストすることが可能。
バッテリーがないため軽量で、ケーブルもないため作業効率を下げません。
重さは10ポンド(約4.5kg)以下で軽量かつコンパクト。
背負うタイプの形状は、毎日使っても快適。身長5フィート(約150cm)から6フィート4インチ(約2m)の人に対応します。
両手を自由に使えるので、多種多様な労働に対応できます。
たとえば自動車ラインでの組立作業や……
天井の穴開け作業……
配管作業……
切断作業など。重労働を強力にサポートします。
労働者を労苦から解放する強力な味方がEksoVestです。
Ekso Bionicsは自動車メーカーのフォードと協力してEksoVestをライン工に着用してもらい、その効果を試験しました。ラインでの組立作業では、1日に4600回以上、1年間に100万回以上も工具を上げ下げする作業が行われており、ライン工の背中・首・肩に大きな負担が生じていたそうで、この負担軽減を目的にExsoVestがテストされたというわけです。
実証試験がミシガン州にある自動車製造工場で2年がかりで行われた結果、1日に発生するインシデント(事故)がなんと83%も激減するという効果を発揮したとのこと。
実際にEksoVestを着用した労働者からの評判は上々。ライン工のポール・コリンズさんは、「頭上での作業が求められるため、背中・首・肩などが痛むのが常でした。しかし、EksoVestを使い始めると、痛みがなくなり、帰宅して孫と遊べるほど体力が温存できています」と述べ、EksoVestの負担軽減効果を絶賛しています。
フォードはEksoVestを使うことで労働者の身体的負担が軽減し、ケガのリスクを下げ、労働者を快適に保ち、士気をあげることで生産性が高まると結論づけています。すでにアメリカ国内の2工場でEksoVestが導入されていますが、フォードは今後、ヨーロッパや南米を含む他の地域でもEksoVestの導入試験を行う計画です。
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