アニメ×鉄道を画像まみれで紹介した「旅と鉄道」の増刊号「アニメと鉄道」レビュー


アニメや映画の中で美麗に描かれる背景、その元ネタとなる地を訪ねていく「聖地巡礼」は、アニメファンの趣味の域を越えて大きなビジネス・町おこしにつながるケースが増えています。鉄道趣味および旅行雑誌「旅と鉄道」が、そんなアニメのシーンに描かれる「鉄道」をクローズアップした「旅と鉄道 2017年 05 月号『鉄道×アニメ 聖地巡礼』」が好評だったこともあり、2017年10月28日に増刊号「アニメと鉄道」が刊行されました。アニメで描かれる美しい鉄道のシーンをピックアップしていたり、アニメの中の鉄道と実際の鉄道の写真とを比較していたりと、アニメファンが鉄道のことを、鉄道ファンがアニメのことを知ることができる一冊ということです。

アニメと鉄道 10月28日発売!(『旅と鉄道』増刊12月号) | 旅鉄web


「アニメと鉄道」の表紙には、「秒速5センチメートル」の列車のシーンが載せられています。本の大きさは縦28.5センチ・横21センチで、A4より1センチほど縦に大きくなっています。


ページ数は128ページで、暑さは6ミリほど。


帯状のデザインには「アニメが描く美しい鉄道」とメインとなる特集が紹介されているほか、「聖地巡礼へ」と題された特集と関連作品の一覧も記載されています。


表紙をめくると目次ページ。「鉄道を美しく描くアニメ監督の世界へ」や「鉄道聖地巡礼」をはじめとした、数々のアニメ×鉄道の特集が組まれていました。本の中で扱われている作品は以下の通りです。


君の名は。/ほしのこえ/雲のむこう、約束の場所/秒速5センチメートル/星を追う子ども/言の葉の庭/この世界の片隅に/マイマイ新子と千年の魔法/サマーウォーズ/ラブライブ! サンシャイン!!/ガールズ&パンツァー/アクティヴレイド~機動強襲室第八係~/笑ゥせぇるすまん NEW/ふらいんぐうぃっち/DIVE!!/アクションヒロイン チアフルーツ/月がきれい/ヤマノススメ セカンドシーズン/ジパング/コンクリート・レボルティオ~超人幻想~ THE LAST SONG/機動警察パトレイバーREBOOT/RAIL WARS! ~日本國有鉄道公安隊~/銀の匙 Silver Spoon/Wake Up, Girls!/4月は君の嘘/SHIROBAKO/とある魔術の禁書目録・とある科学の超電磁砲/きみの声をとどけたい/生徒会の一存/冴えない彼女の育てかた/ミラクル☆トレイン~大江戸線へようこそ~/Aチャンネル/ハナヤマタ/あの夏で待ってる/けいおん! !/涼宮ハルヒの憂鬱/花咲くいろは/メガネブ!/たまゆらシリーズ/クロムクロ/うどんの国の黄金毛鞠/ゆるゆり/サクラクエスト/ハルチカ/グラスリップ/のうりん/境界の彼方/「鉄子の旅」/あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。/心が叫びたがってるんだ。/響け! ユーフォニアム/中二病でも恋がしたい!/駅メモ!/ポケットモンスター/エヴァンゲリオン/クレヨンしんちゃん/けものフレンズ/有頂天家族/ルパン三世/ちびまる子ちゃん/ゲゲゲの鬼太郎/究極超人あ~る/おもひでぽろぽろ/銀河鉄道999/あしたのジョー/サザエさん/シティーハンター/AIR/Free!


特集「鉄道を美しく描くアニメ監督の世界へ」では、現実よりも美しい背景で印象的なシーンを手がけ、最近のアニメブームをリードする新海誠さん、片渕須直さん、細田守さんの3人が表現した鉄道描写を掲載・解説しています。


ひとつめの作品は2016年8月に公開し、世界での興行収入が日本映画の歴代1位に達する記録的大ヒットになった「君の名は。」の鉄道描写。新宿駅を上から見たシーンがでかでかと貼り付けられています。


ほかにも新海誠さんの商業デビュー監督作「ほしのこえ」の、監督1人で制作のほとんどをこなしたという細部までこだわり抜かれた鉄道描写や……


離別のつらさを表現するのに鉄道が重要な役割をになった「秒速5センチメートル」。


「秒速5センチメートル」は列車というより、踏切の印象が強いです。


そのほかにも「雲のむこう、約束の場所」「星を追う子ども」「言の葉の庭」についても同様に、鉄道が描写されたシーンとその説明が記されています。文章による説明が多くないため、見たことのない作品まで熟読するのは難しいですが、作品のファン同士は「このカットは鉄道が重要だろうか」「あそこの鉄道シーンの画像がほしかった」と盛り上がることもできそうです。「作品は、桜の舞い散る小田急線の踏切で始まり、そして終わる。しかしラストでは、通過する列車の向こうに明里はいない。この対比効果が、鮮烈な印象を与えるようになっており、全体を通して鉄道が大きな役割を果たしている」のように、作品ごとに「どう列車が物語に関わっているか」のコメントがひとことだけ掲載されていました。


片渕須直さんの「この世界の片隅に」では、6年間かけて史料を掘り起こした緻密な描写により、失われた世界がよみがえっています。作中の「鉄道シーン」は主人公・すずの人生の重要なターニングポイントとなった場面のほとんどで背景になっているとのことで、鉄道描写の説明と関連づけながらストーリーの流れが記されていました。


細田守さんの「サマーウォーズ」では、忠実に再現された東京駅・新幹線「あさま」の解説が詳しくされています。片田舎からインターネット上の仮想世界にアクセスするという構図を演出するために、列車のシートの模様まで再現して地域性を醸し出しているといった解説もありました。


もうひとつの目玉企画「鉄道聖地巡礼」には、2017年10月にアニメ2期も放送開始した「ラブライブ!サンシャイン!!」の舞台・静岡県沼津市の伊豆箱根鉄道の特集がありました。


下の画像のように、劇中のカットと実際の写真とが並べられていて、伊豆箱根鉄道の3000系電車の再現度が非常に高いとわかります。


ほかにも伊豆箱根鉄道の駅などで見ることのできるラッピングバスなど、スクールアイドルがエスコートする聖地巡礼の紹介もありました。「まるで巨大交通テーマパーク」と掲げており、「アニメは見るけど聖地巡礼に行こうとは思わない」というアニメファンでも、ラッピングされたコラボ乗り物があったり、アニメのカットと現実の風景とを並べて掲載してくれていると、「ここまでわかりやすく再現されているなら」と聖地巡礼への興味が少しわいてきます。


また聖地巡礼として人気が高い「ガールズ&パンツァー」も特集されています。名実ともに茨城県大洗町の顔となった「ガールズ&パンツァー」の背景と実際の風景との比較画像や、ラッピング電車などの観光スポットの紹介もされていました。比較画像を見るとアニメの背景は再現度がとても高く、聖地巡礼スポットとして人気が高いのもよくわかります。


「ガールズ&パンツァー」は女の子たちが戦車に乗って「戦車道」なる競技で奮闘する物語ということで、鉄道とは関係ない、「戦車が走った街角聖地巡礼」と題した背景の元ネタ解説などもあります。「アニメ視聴済み」程度では立ち向かえない細かい部分ですが、ファンにとっては有名すぎるくらいだとか。


そのほか編集部が厳選した「注目のアニ鉄BEST36」という、アニメの鉄道シーンをクローズアップしたものも掲載されていました。目次によると、モデルとなった地を基準に東日本編、西日本編と分かれています。


青森県弘前市を舞台にした「ふらいんぐうぃっち」では、1話冒頭に主人公・真琴が引っ越しのために乗車してきたシーンをクローズアップ。静かな車内と美しい車窓からの風景描写は、ふんわりとした独特の雰囲気を物語のはじめにもたらしていました。やはり「地域感」を出すために、鉄道はうってつけなのだなと納得させられます。


2016年に「日本アニメ(ーター)見本市」で公開された「機動警察パトレイバーREBOOT」では、全幅4メートルを越えるロボット「レイバー」を鉄道がけん引する描写が見られます。このような「アニメの中で描かれる鉄道」が36作品選び抜かれているので、思い当たる作品が入っているか、その作品のどのシーンが掲載されているか、ワイワイと話しながら読むのが面白そうです。なぜか最初に思いついたアニメ「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」の千葉モノレールは選ばれていませんでした。


同じ埼玉県の秩父を舞台にした「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」と「心が叫びたがってるんだ。」で描かれる線路や駅の特集。


同じ市内というだけで、全く同じ場所の背景があるわけではなさそう。


「京阪×アニメ」と題した京阪電鉄が登場する特集では、「響け! ユーフォニアム」と……


中二病でも恋がしたい!」の第1話の乗車シーン。同じ京都アニメーションの「けいおん!」もラッピング電車が走っていたりと京阪と関わりが深いのですが、「注目のアニ鉄BEST36」の西日本側に東海道新幹線京都駅が紹介されていただけでした。関西近郊の読者からすると、「京阪×アニメ」が2つだけなのは少しさみしく思います。


アニメ×鉄道の特集で外すわけにはいかないということで、「スタジオジブリの鉄道描写」のクローズアップとして、「おもひでぽろぽろ」に登場した往年の名列車「あけぼの」の深い解説など。寝台特急の静かな描写は、鉄道ファンにはたまらないハズ。


巻末には「銀河鉄道999」の生みの親・松本零士さんのインタビュー記事が掲載されています。


数え切れないほどの子どもたちや鉄道ファンをとりこにした、空へと走り出すSLの姿がどうやって生まれたのかが語られている貴重なエッセイです。


2010年代後半からさらなる盛り上がりを見せるアニメ×町おこし・聖地巡礼に、「鉄道」に焦点を当てて着目した「アニメと鉄道」は、ガイドブックとしては文章の解説が少なく、フォトブックとしてはアニメ画像・写真ともに質にバラツキがありますが、近年よく耳にする「聖地巡礼」に興味を持ち始める人にはよい指標になりました。アニメの鉄道描写と参考にされた路線・風景の掲載で終始しているので、眺めているぶんにはいいですが、読み物としては少し退屈な印象も。編集部では、「Re:CREATORS」や「幼女戦記」、「STEINS;GATE」、「School Days」などを集めたアニメ×鉄道の特集とか見てみたい、という意見が出ていました。聖地巡礼の第一歩を手伝う旅と鉄道2017年増刊12月号「アニメと鉄道」は、Amazonにて1000円で販売中です。

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