取材

「現地の猫と出会う」「キューバの学者と日々の生活を感じる」など旅先で振り切った体験ができるAirbnbの「Experience(体験)」を使って「紙すき」をやってみた


ホテルではなく、地元の人に部屋を貸してもらって宿泊ができる旅行プラットフォームのAirbnbは、2016年11月に宿泊施設だけでなく、現地の人とともに現地ならではの体験ができるという「Experience(体験)」というサービスを開始しています。「キューバの学者と日々の生活を感じる」「リアリティ番組のビジネスをプロから教わる」といった、日常生活ではなかなか味わえない「体験」があるのですが、2017年3月からは東京に続いて大阪でもサービスが始まっているとのことなので、「実際にどんなことが体験できるのか?」ということを見てきました。

「体験」にどんな内容があるのかは、Airbnbのウェブサイトから見ることができます。

現地の人から借りる家、体験&スポット - Airbnb
https://www.airbnb.jp/


ページの左上に「おすすめ」「宿泊」「体験」「スポット」というタブがあり、この「体験」を押すと、世界12都市で行われている体験の内容が表示されます。サムネイル画像は映画のポスターをイメージして作られているとのことで、見ていると想像力を刺激されます。


実際に体験として登録されている内容は以下の通り。例えば、バルセロナにはヌード・ドローイングの体験がありました。飲み物を飲みながらグラフィックデザイナー&写真家のベネットさんから書き方を教えてもらいヌード・ドローイングを行うというもので、全行程が2.5時間、価格は1934円です。

Nude Life Drawing Session - Airbnb
https://www.airbnb.jp/experiences/53622


上記のように1日で完結する短い体験があれば、数日にわけて行われる体験もあります。以下は、ロサンゼルス在住の天体写真家・マーティンさんと一緒に過ごす体験。1食、2軽食、ドリンク、用具、移動送迎付で2万2926円でした。

Shooting Stars - Airbnb
https://www.airbnb.jp/experiences/639


これは3日にわたって行われる体験ですが、1日目はマーティンさんのスタジオで特殊な器具などを見せてもらうツアーが3時間、2日目はマーティンさんと一緒にキャンプファイアーや食事をし山の頂上で写真を撮るという7時間の内容、3日目はお茶を飲みながら撮影した写真を加工するという内容が3時間で、合計3日の体験となっています。


このほか、「現地の猫に会うツアー」など、さまざまな体験が登録されていますが、どれも中心に据えられているのは行為や物ではなく「人」であり、ただ単にワークショップを行うのではなく、「ストーリー」が存在し、体験ホストと人生観や情熱をシェアするのがポイント。

GOOOD Cat Experience - Airbnb
https://www.airbnb.jp/experiences/53347


場所を指定して体験を検索することも可能。大阪を指定して検索してみると、こんな感じで、現在は20ほどの体験があるそうです。見てみると、「自分で作った讃岐うどんを2種類の食べ方で楽しむ」「日本のローカルな生活を写したいい写真を撮る」などがありました。


そして、今回、体験していくのは「紙すき」。和紙を作るワークショップはほかにもありますが、この体験は、紙すきを行うだけでなく、訪れてきた海外の人が日本語を学び、作った和紙に手紙を書いて郵便局に持っていって自分で投函するところまでを行うのがユニークなところ。

Postcard making & posting - Airbnb
https://www.airbnb.jp/experiences/41090


ということで、やってきたのは東大阪にある倉庫のようなところ。


建物の1階には荷物が積まれており、一体どこで紙すきをするのだろう?と少し不安に思っていると……


「紙 TO 和」と書かれた入り口を発見。


階段を上がっていくと、こんな感じのスペースが広がっていました。


写真の女性が体験ホストの美和子さん。美和子さんはキャビンアテンダントや通訳などの職業を経たあと、祖父母が85年前に始めた「紙」ビジネスの世界へ。2017年2月から「紙すき」「和紙工作」など「紙を通して和を創る」というスタジオ「紙 TO 和」をスタートし、Airbnbの体験に登録したそうです。


紙のデザインから製造までを行う会社がベースとしてあるので、体験を行うスペースにもさまざまな和紙が置かれていました。


この体験でも、いきなり紙すきに入るのではなく、まずは抹茶とお菓子を楽しみつつ、美和子さんとおしゃべり。


海外からの旅行客が多いため、和室の隅には「靴を脱いでください!」の注意書き。ちなみに、この和室に使われている畳も、いぐさではなく和紙で創られているとのこと。なので、検疫に引っかからずに持ち帰ることができるとのことです。


抹茶は自分でたてていただきます。


そして、プロジェクターで和紙がどのように創られていくのかを、「コウゾ」という植物を刈り取るところから説明するムービーを見て学びます。


知識がついたところで、いざ実践へ。ここが紙すきの作業場。


実際にコウゾを見せてもらいました。


成長したコウゾを根元から刈り取り、蒸して剥いだ皮が和紙の原料となります。


コウゾの皮は干した後に寒気に当てて凍らせ、表面の黒皮を取り除いて雪の上に並べて太陽の紫外線で漂白させたあとに釜で煮て繊維をほぐす……という気が遠くなるほどに手間暇かけた作業を経て、以下のような状態に。


これを水に溶かして……


トロロアオイという粘液を加えます。


木の棒を使ってをかき混ぜます。ちなみに、作業場にある装置などは多くがDIYで創られているとのこと。和紙の原液が入っている以下の容器も、シンクと木の板を組み合わせて作ったそうです。


これが紙をすく「簀桁」。簀桁は水面に対して垂直になるように入れて……


すくい上げ、上下左右に動かして水を落とします。紙すきの作業は3回ほど行います。


紙すきの様子は以下のムービーから確認可能。

Airbnbの「体験」で紙すきをやってみた - YouTube


次に脱水作業。写真に写っているのが脱水の装置なのですが、これもDIYで作られていて……


木の箱の中には掃除機が入っていました。掃除機の吸引力で紙を脱水するわけです。


実際に脱水している時の様子をムービーで見ると、「あっ本当に掃除機だ……!」というのがよくわかります。

掃除機を改造した脱水機はこんな感じ - YouTube


脱水が完成したら乾燥機に貼り付けます。


実際に紙すきをやってみたところ、簀桁を動かすタイミングが難しく、タイミングが遅くても早くても紙にしわやヨレができてしまいます。海外からのお客さんもここは苦労するらしく、紙を水に戻せばやり直しがきくので、納得がいくまで何度もやりなおす人もいるとのこと。


すきの作業が終わったら、ケタの部分についた余分な紙をはがすのですが……


ここで勢いがよすぎると破れます。なかなかうまくいかずに試行錯誤することになり、「破れてもそれも味!」と開き直れるか気が済むまでやり直すのかは本人次第というわけ。


終わったら、和紙で作った飾りやおしばなが置かれているので、好きなように配置します。


和紙の原液を上からかけて装飾を接着。


脱水したら……


乾燥機にはりつけて、しばらく待ちます。


完成したものがコレ。


作った和紙はA4サイズなので、4つ折りにして折り目に水をつけていきます。


あとは4つに切り取れば完成。


端から繊維が見えているのが和紙から作ったはがき独特の点です。


実際のAirbnbの体験では、和紙に家族や恋人・あるいは帰国した際の自分への手紙を書き、郵便局まで持っていって手紙を出すところまで行います。日本語教室を開いて「アメリカまでお願いします」というような言葉を教えてもらい、海外からのお客さんが郵便局員さんに自分ではがきを手渡すので、単なる「ワークショップ」ではなく、「和紙を作る」「手紙を書く」「郵便局に行って自分で手紙を出す」ということが観光名所を回るだけでは体験できないような「ストーリー」となっているわけです。


ということで、「体験」は旅にでかけた時に、現地の人とディープに語り合い、現地の人の目線で都市を見て日常を体験できるものとなっていました。なお、記事作成時点で28都市以上で500の体験が存在するとのことですが、2017年中には世界51都市で展開される予定とのこと。また、以下のページから体験ホストになることもできます。

体験ホストになろう
https://www.airbnb.jp/host/experiences

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in 取材,   ウェブアプリ,   動画, Posted by darkhorse_log

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