家電製品を中心に安全性をチェックしてリコール発令まで行う消費者製品安全委員会(CPSC)が抱える問題
アメリカでは消費者の健康と安全を守るために市場に出回る商品の安全性を監視して、場合によってはリコールをかける権限を持つ大統領直轄の機関「米国消費者製品安全委員会(CPSC)」が設立されています。そのCPSCが、増え続ける電子機器のトラブルによってうまく機能していかない可能性が危惧されています。
As Batteries Keep Exploding, Consumer Product Safety Commission Prepares For Change : All Tech Considered : NPR
http://www.npr.org/sections/alltechconsidered/2016/11/27/503132072/as-batteries-keep-catching-fire-u-s-safety-agency-prepares-for-change
CPSCはConsumer Product Safety Act(消費者安全法)に基づいて設立された政府機関で、家電製品を中心に、ベビーベッド、芝刈り機、電動工具、オフィスチェアなどの日常生活で一般市民が使う多くの製品の安全性を監視する役割を持っています。製品の安全性が確保できておらず消費者を危険にさらしていると判断した場合、CPSCはリコールをメーカーに要求する権限を持っており、最近でも中国製の電動ホバーボードやSamsungのスマートフォン「Galaxy Note 7」で、使用中に発火したり爆発したりする危険性があるとして、リコール措置に踏み切っています。
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消費者の身の回りにある日常品の安全性を常に担保するべく確認しているCPSCには567人の職員が働いているとのこと。CPSCの権限は、同じく食品の安全性を守っているアメリカ食品医薬品局(FDA)に比べると非常に小さいのが現状です。FDAは食品の安全性が確認できるまで市場に出回ることを承認しないという権限があるのに対して、CPSCが持つのはあくまで市場に出回る製品を発売後に事後的にチェックするのみ。また、製品が安全であること自体は、定期的な試験が要求されるベビー用品をのぞくとメーカー側のチェックに委ねられている部分が大きく、CPSCはメーカーおよび消費者からの報告を受けるという構造になっているとのこと。
CPSCの研究所では、危険性が指摘された製品の安全性は専門家チームによって試験されています。現在、最も多くの調査が行われているのはリチウムイオン電池に関するトラブルとのこと。スマートフォンやノートPCだけでなく、広範に使われているリチウムイオン電池による発熱や発火のトラブルは、リチウムイオン電池を使う製品の増加と共に急増しており、CPSCの調査リソースはリチウムイオン電池に割かれているようです。例えば、Galaxy Note 7は依然として安全性の確認作業が行われており、現在進行形の調査の内容は明かされていません。
また、CPSCの予算も限られており、FDAが年間50億ドル(約5600億円)という巨額の予算を割り当てられているのに対して、CPSCの予算は1億2500万ドル(約140億円)とのこと。2016年度におけるFDAの前年からの予算「増額分」以下の予算でCPSCはやりくりしており、例えば、リコールされた製品がオンラインで販売されていないかはわずか10人に満たないインターネット監視チームによってチェックされている状況で、監視対象の多さに比べて予算の規模が小さく、慢性的な財政不足の状態にあるそうです。
ドナルド・トランプ次期大統領は、CPSCの予算をさらに削る方針であることがささやかれており、現在、CPSCのトップを務めるエリオット・ケイ氏の降格に踏み切るとの予想があるとのこと。トランプ氏の大統領選出はCPSCにとっても寝耳に水であり、今後、CPSCの予算不足の状況がさらに悪化するのではないかと懸念されています。
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