ハードウェア

「オフィスのプリンター」に偽装したステルス携帯電話基地局が存在する

by Vernon Chan

世の中にはニセの携帯電話基地局が存在し、警察・軍・政府などが個人情報の収集に活用していることが報じられています。そんな中、オフィスに溶け込み、人畜無害な風貌で周囲の人間の個人情報を集めることが可能なプリンターが開発されています。

Stealth Cell Tower
https://julianoliver.com/output/stealth-cell-tower

一見するとただのHPのプリンターに見えるこれが、実は周囲の人々の個人情報を盗み出すためのデバイス。


Stealth Cell Towerと呼ばれるこのデバイスは、強力な電波を発することによってGSMベースの携帯電話網の基地局になりすまします。そしてモバイル端末ユーザーの通話をキャッチし、電話番号を把握して、知人のふりをしてSMSでメッセ―ジを送ることが可能です。この時、送り手は自分の電話番号を明かさずにメッセージを送信可能。


モバイル端末のユーザーがメッセ―ジに返信してしまうと、返信メッセージだけでなく、自身のIMSI番号や、ほかの個人情報がプリンターに印刷されてしまうとのこと。また、プリンターから電話をかけたり、電話に出たりすることもできようようになるそうです。


これがプリンターの内部。Raspberry Pi 3が左側に、NuandがKickstarterで出資を受けて開発したbladeRFというSDRプロダクトが右側に配置されています。


プリンターの右側面にはRaspberry Pi 3やbladeRFを出力させるため、プリンターの21-22Vの電圧を5Vに変換するためのUSBデバイス充電器が設置されています。


これがカートリッジ部。トランスミッターとレシーバー用アンテナがSMAケーブルでBladeRFと接続されています。


HPのプリンターを装ったStealth Cell Towerは、ドイツ・ベルリンを拠点として活動するアーティスト兼ハッカーのJulian Oliver氏が作ったもの。もともとOliver氏は、警察・政府・諜報機関・軍などがIMSIキャッチャーを使って市民の携帯電話を監視していることについて、調査を行っていました。

「スティングレー」と呼ばれるIMSIキャッチャーについては、以下の記事を読むとよくわかります。

携帯電話基地局になりすましてスマホの個体識別情報や位置情報を集める捜査手法「スティングレー」の実態 - GIGAZINE


IMSIキャッチャーを使うと、政府や高度な技術を持つ組織であれば、ダイレクトに特定ユーザーの所在地データを収集することが可能アメリカ自由人権協会が、イギリスで20以上のニセ携帯電話基地局にIMSIキャッチャーが仕込まれていたことを発表した際には、大きな騒ぎになりました。

Oliver氏は、これまで木やレンガを装ったニセの携帯電話基地局に興味を持っていたとのこと。例えば、以下は針葉樹を装った携帯電話の基地局。


ヤシの木を装ったもの。


本物の街灯柱の隣に設置された、街灯柱に偽装した携帯電話基地局。


隠れきれていませんが、レンガ風もあります。


上記のようなニセの携帯電話基地局を見つけるだけではなく、自分で作ってみようということで作られたのがHPのプリンター風Stealth Cell Towerというわけです。

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in ハードウェア,   セキュリティ, Posted by darkhorse_log

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