携帯電話基地局になりすましてスマホの個体識別情報や位置情報を集める捜査手法「スティングレー」の実態

By aussiegall

アメリカ国家安全保障局(NSA)が1日で全世界50億台の携帯電話の現在地を追跡していたことが判明しているように、いまや犯罪捜査においては携帯電話やスマートフォンからの情報取得が不可欠といえるものになっています。そんな捜査の一例として、強力な電波を発することによって携帯電話網の基地局になりすまし、一般市民にはほとんど気付かれることなく個人の位置情報などを特定してしまう「Stingray(スティングレー)」と呼ばれる捜査手法の実態が明らかにされました。

VICTORY: Judge Releases Information about Police Use of Stingray Cell Phone Trackers | American Civil Liberties Union
https://www.aclu.org/blog/national-security-technology-and-liberty/victory-judge-releases-information-about-police-use

これは、一度は非公開とされた裁判記録について、アメリカ・フロリダ州の裁判所が公開を命じた決定によって明らかにされたもの。公開を求めたのはアメリカにおける言論の自由を守ることを目的とした団体である「アメリカ自由人権協会(ACLU)」で、一度は合衆国政府の意向に基づいて非公開とされた情報が異議申し立てにより公開されることとなりました。

ACLUはこの数か月前、フロリダ州タラハシーの警察が実施した捜査で、令状が出ていないにもかかわらずスティングレーが用いられたことを確認。その事件の裁判では捜査担当者がスティングレーの使用を証言していましたが、裁判所は連邦政府からの要請を受け入れる形で審議を非公開とし、記録書類を機密扱いとしました。

By Michelangelo Carrieri

ACLUはこの動きに対し、合衆国憲法 修正第1条の規定に基づいて情報公開を求める緊急動議を発動。これに対してアメリカ政府は、2002年にブッシュ政権の下で制定された国家安全保障法などに基づいて情報非公開の正当性を主張しましたが、ACLUは「このケースは州レベルの判決に対するものであるため、同法の規定は及ばない」と反論を行いました。

その結果、裁判所は記録書類の公開を命じる決定を下すことに。公開された書類によって捜査内容が明らかにされ、以下のようなスティングレーの実際の使用方法や使用の実態が明らかにされました。

◆スティングレーは携帯電話基地局になりすまし、範囲内に存在するあらゆる端末をそのネットワーク内に登録させる。そして、本来の基地局になりかわって各端末の位置情報や個体識別情報を収集する。
◆スティングレーは、各端末が通話を行う場合のみならず、電源がONになった瞬間からトラッキングを開始できる。
◆スティングレーは各端末に対し、スティングレーとの通信をフルパワーで行うように強制できるので、バッテリー消費が速くなる。消費スピードが速くなっている場合は、警察がスティングレーを使っている可能性が考えられる。
◆実際の使用時には、圏内にある全ての端末の評価が行われる。そのため、捜査対象者以外の無関係の住民に対しても同様の調査が実施されてしまう。
◆このケースの場合には、警察車両に搭載する車載タイプと手持ち可能な2タイプのスティングレーが用いられている。捜査にあたり、警官はまず警察車両に乗ってエリア内を周回して容疑者が住む住居の絞り込みを行う。次に、手持ちタイプのスティングレーを用いて、疑いのあるエリア内全ての住居のドアの前で捜査を行い、どの部屋に容疑者が住んでいるのかを特定する。これはいわば、「警察が住民の住居に対し、窓の外から電波を照射して中に住む人の情報を抜き取っている」ということになる。
◆証言に立ったタラハシーの刑事は、2007年の春から2010年8月までの間に同様の手法が200回以上用いられた、と明らかにしている。

ACLUでは、この情報開示を命じた判例によって政府によるスティングレーを用いた捜査手法の非公開には根拠がないことを指摘。同時に、合衆国政府が州政府の公的記録の公開に干渉する根拠がないとしています。

携帯電話の仕組みを用いることで、従来では考えられなかったレベルで個人の行動が追跡されてしまうことが明るみにされた事例となったわけですが、公の利益と個人の利益にまつわる争いは今後も続きそうです。

By Seth Anderson

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