「偽の記憶」は脳のどの部分で作られるのか?
誰にでも「記憶違い」というものが起こり得ることが知られており、恣意的に偽の記憶を作り出せることが最近の研究で分かっていますが、偽の記憶がどのようにして生み出されるのかについてはほとんど解明されていません。イギリスの研究者が偽の記憶が脳のどこから来るのかをfMRIを使った実験で見つけ出しています。
Semantic representations in the temporal pole predict false memories
http://www.pnas.org/content/early/2016/08/16/1610686113
False memories arise because the brain codes similar ideas similarly | Ars Technica
http://arstechnica.com/science/2016/08/false-memories-arise-because-the-brain-codes-similar-ideas-similarly/
ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンのマーティン・J・チャドウィック博士たちの研究チームは、間違った記憶は脳でどのように作り出されるのかを調査しました。チャドウィック博士は、単語を記憶するテストで例えば、「ice(氷)」「snow(雪)」「wind(風)」などの寒さに関連のある単語ばかりを選択すると、単語リストには挙げていなかった「cold(寒い)」という寒さに関連性のある単語がリストにあったと被験者が思い違いをする傾向があることを利用しました。
チャドウィック博士たちは、先ほどのような関連性のある単語を記憶したと勘違いする「記憶違い」を起こしているときの被験者の脳をfMRIで観察しました。すると、リストに挙がっていない単語を「覚えがある」と答える「記憶違い」の状況下では、リストに挙がっている他の単語を思い返すときに活性化している脳領域と多くの重なり合いが見られたとのこと。
また、偽の記憶を想起しているときに関連する記憶と共通する脳領域が活性しているという事象がすべての被験者で共通して見られましたが、各被験者ごとに活性化している部位自体の場所はそれぞれ異なっていたとのことです。
以上の結果から、チャドウィック博士たちは、偽の記憶が生まれる過程に他の関連する記憶が関係していると結論づけており、異なる事実を関連させて記憶することで、脳は大量の物事を効率的に記憶しているのではないかと考えています。
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