睡眠不足によって脳の可塑性が変化して記憶に影響が出てしまう
なぜ人は人生の3分の1近い時間を睡眠に費やすのか、睡眠の意義については完全には解明されていません。しかし、睡眠不足の脳は興奮状態にあり、記憶に大切な脳の柔軟性である「可塑性」が失われてしまうという研究報告が上がっています。
Sleep recalibrates homeostatic and associative synaptic plasticity in the human cortex : Nature Communications
http://www.nature.com/articles/ncomms12455
What a Night of Sleep Deprivation Does to Your Brain | Motherboard
http://motherboard.vice.com/read/what-a-night-of-sleep-deprivation-does-to-your-brain
University Medical Center Freiburgのクリストフ・ニッセン博士たちの研究チームは、「睡眠」の役割を研究する目的で、20人の被験者を対象に、睡眠不足の脳に起こる現象を調べました。実験では被験者にぐっすり睡眠を取ってもらう日と、寝ることなく昼夜の間起きてもらう日を繰り返すことで、睡眠が足りている状態と睡眠不足の状態での脳の違いを比較しています。
ニッセン博士たちは経頭蓋磁気刺激法(TMS)と呼ばれる方法で被験者の脳に磁気パルスを与えました。すると、被験者の手の筋肉が反応するのに必要な磁気パルスの強度は、睡眠が足りている状態よりも睡眠不足の状態の方が少ない量で十分であることが分かったとのこと。
さらに、睡眠不足の状態では脳が常に興奮状態にあることも確認されたとのこと。実験では睡眠不足の後の方が、「鉛筆と消しゴム」というような幾つかの対となる事柄をあらかじめ憶えてもらい、対のうちの片方を提示して、もう片方を思い出してもらうという対連合記憶課題の成績が悪化したことが確認されています。このような興奮状態では記憶に重要だと考えられている「脳の可塑性」が低下してしまうため、興奮状態が続くのは良くないことであるとニッセン博士は述べています。
脳の興奮状態は睡眠によってリセットされているのではないかとニッセン博士らの研究チームは結論づけています。
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