次期iPhoneのLTEモデムチップをIntelが供給しQualcomm単独供給が終わる見込み

Appleが次期iPhone(iPhone 7)のLTEモデム用のチップを、QualcommだけでなくIntelからも調達する見込みであると、Bloombergが報じています。この報道によって、Intel、Qualcomm双方の株価が大きく揺れています。

Intel Gets Chip Order From Apple, Its First Major Mobile Win - Bloomberg
(ムービー自動再生注意)http://www.bloomberg.com/news/articles/2016-06-10/intel-said-to-get-chip-order-from-apple-first-major-mobile-win

iPhone 6sまでiPhoneのモデムチップはQualcommが独占的に供給していましたが、この一社供給体制が揺らぐ可能性は2016年4月にQualcomm自身がほのめかしていました。Qualcommのスティーブ・モレンコフCEOは、四半期決算発表において、「Qualcommの主要な顧客が競合他社に発注先を切り替えるかもしれない」と発言。Qualcommの主要顧客といえばAppleとSamsungですが、「切り替える」という表現からチップを単独供給しているAppleであると想像できること、および、2015年末からIntelがモデムチップをiPhone向けに開発しているという噂が出ていたこともあり、「主要顧客」とはAppleであると市場は判断し、直ちに株価が2.5％も下がるという事態を招いていました。

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このQualcommの発言を裏付けるように、BloombergはAppleが主に北米向けのiPhoneにはIntel製のモデムチップを採用することに決めたと報じています。Intelがモデムチップを供給するのは、主にAT&T向けのiPhoneで、Verizonや中国向けのiPhoneについては引き続きQualcommがモデムチップを供給するとのこと。これによって、SamsungとTSMCが供給するSoCやJDIやシャープが供給するディスプレイモジュールなどと同様に、モデムチップについても複数ベンダーによる供給体制に移行することになりそうです。

Appleの売上げの3分の2を占めるドル箱のiPhoneの部品供給先を多様化することは、製造トラブルで部品供給できないという最悪のリスクを分散させるだけでなく、チップベンダー同士を競争させて部品価格を買いたたけるという点で戦略上優れています。そのためAppleがモデムモジュールについてQualcomm一社から供給を受けるという体制にメスを入れたのは、ある意味当然と言えるかもしれません。

ただし、部品供給先を複数持つことは品質のバラツキが生じる可能性を意味します。iPhone 6sでは「TSMC製造のA9チップに比べてSamsung製造のA9チップは消費電力が高い」という指摘が挙がり混乱を招きました。次期iPhoneでのモデムチップがQualcommとIntelで性能が異なるならば、再び混乱が生じる可能性は十分あります。

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IntelのiPhoneへのチップ供給を巡っては、ちょっとした因縁が知られています。2007年以降、iPhoneへモデムチップを供給していたInfineon社のモデム開発部門をIntelが2010年に買収したのですが、2011年登場のiPhone 4SはVerizonの採用するCDMAへ対応するためにAppleはモデムチップをQualcommに切り替えました。その結果、Infineonはモデム供給ベンダーの地位を失い、IntelがiPhoneへチップを供給することはありませんでした。iPhone 7でIntelのモデムチップが採用されることになれば、Intelは実に6年越しにiPhoneへのチップ供給ベンダーの地位を取り戻すことになりそうです。

なお、Bloombergの報道を受けて、年初来、約7％下落していたIntelの株価が上昇し、反対に年初来、10％高騰していたQualcommの株価は約3％も急落しています。