取材

世界中の映像・音声・ビッグデータを自動で収集・解析してコンテンツを作り、確実に相手に伝える「スマートプロダクション」の技術


テレビやネットなどで配信されているニュース番組は人の手や記者の取材で集めた情報をもとに作られていますが、今後はその「常識」が変わる日がやってくるのかもしれません。2016年5月26日(木)から29日(日)まで一般公開されているNHK技研公開2016の会場では、コンピューターの自動認識技術を使うことで世の中に氾濫する情報を正確にピックアップして番組を作り、そして幅広い人に迅速に伝えるまでを網羅する技術「スマートプロダクション」の仕組みが展示されています。

NHK技研公開2016 〜進化が続く放送技術をご体感ください〜
https://www.nhk.or.jp/strl/open2016/

エントランスロビーにある「スマートプロダクション」のコーナー。多くのディスプレイを駆使して技術の概要が説明されています。


スマートプロダクションは、ネットなどに氾濫する多様な情報をもとに、認識技術やビッグデータ解析技術を使って正確に幅広く番組を制作し、目や耳の不自由な人を含む全ての人にさまざまな手段で情報を届けるところまでをカバーする技術とのこと。今後の取材や番組制作の流れを大きく変えるものになるかもしれません。


社会にはニュースや映像、テキストなど非常に多くの情報が飛び交っており……


スマートプロダクションでは、これらの情報をもとに社会をリアルタイムに解析します。


たとえば、映像や音声、テキストを解析することで、「世田谷で落雷が多発して渋滞が発生している」という出来事を正確に特定する様子が順を追って説明されています。


カメラが捉えた映像や、ネット上のつぶやきなどがリアルタイムにモニタリングされています。


ネットに投稿された「雷すごいよ」や「雷落ちたみたい」といったワードを解析して……


情報となるものをピックアップ。


また、車載のカメラが捉えた映像をもとに落雷の事実を認識したり、音声データから雷の発生を認識して蓄積することで、情報源をくまなく収集。


そしてこれらの情報をもとに、「NHK技研前で落雷」「世田谷通りで渋滞」「雷で電車遅延」といった出来事の特定が自動的に行われるというわけです。ニュースの収集技術は今でも人間の記者による取材が重要ではあるわけですが、NHKではこのような認識技術を使った情報収集手段の開発が進められています。


こんな感じで出来事を特定したスマートプロダクションですが、やはり報道機関だけあってその情報を広く発信するとことまでが考えられています。


多くの人にはラジオやテレビ、ネットなどで配信することが可能ですが、小さい子どもや日本語にあまり慣れていない外国人向けに、やさしい日本語に置き換えて配信するシステムや……


画面に表示された字幕と、CGで自動生成される手話によるバリアフリーな情報伝達方法なども開発されています。


また、外出中などで情報に触れにくい人に対しても、街角に設置されたスピーカーを通して情報の伝達を行うシステムが開発されています。


実際に情報を認識するための画像認識技術なども展示されていました。こちらはカメラで撮影した映像などを解析して、メタデータを自動付与する文字列検出技術のコーナー。


画像解析技術が発達したおかげで、人力を使わずとも映像に映っている文字などを認識し、活用が可能な文字データを生成してメタデータとして付与することが可能。


例えば、このようなセットをカメラが撮影すると……


「1.文字候補の検出」→「2.文字列の検出」→「3.文字列の認識」→「4.効果の付与」という処理がコンピューター上で行われ、単なる映像だった素材に、活用が可能なメタデータが付与されました。


文字列の検出にも、さまざまなアルゴリズムが用いられている模様。


また、気象警報など緊急性のある情報を耳の不自由な人に伝えるための、手話CGの自動制作技術が開発されています。これは、XMLなどのデータ形式で送信された気象電文を解析して手話表現のテンプレートに挿入し、そこから手話CGを生成するというもの。手話通訳スタッフを必要とせず、即座に情報を手話で発信できるというシステムとなっているわけです。


日本語の文章に自動でふりがなをふったり、日本語にあまり慣れていない人に対する「読解支援情報付きニュースサービス」という技術も開発されています。これは、日本語から外国語に翻訳するというのではなく、日本語の文章を解析して、読みが難しい漢字に日本語・外国語のふりがなを付与するというもの。


ニュースで読まれた原文を文法的に解析し、読解が難しいと判断される場所を平易な表現に置き換えることが可能。例えば「大気」は「空気」に、「不安定」は「変わりやすく」というふうに読解を支援する情報を付け加えることで、確実に情報を届けることを狙っているというわけです。


日本語以外にも、以下のように韓国語をふりがなとして付与することも可能。自動翻訳を行うと妙な文章に翻訳されてしまうことも多いわけですが、このように日本語の形式をベースに要所だけを外国語に置き換える方法をとるというのは、情報伝達の確実性を考えると確かに理にかなった方法なのかもしれません。

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in 取材,   モバイル,   ソフトウェア,   ハードウェア, Posted by darkhorse_log

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