取材

音像の圧倒的な臨場感を自由自在にコントロールできる「22.2マルチチャンネル音響」の実力をNHK技研公開2016で体験してきました


2016年5月26日(木)から29日(日)まで一般公開されているNHK技研公開2016では4Kテレビの4倍の情報量を持つフルスペック8Kスーパーハイビジョンの技術などに触れられるようになっているのですが、この技術で実現されるもののうちの一つ「22.2マルチチャンネル音響」を実演しているコーナーではなかなか驚きの体験をすることができました。

NHK技研公開2016 〜進化が続く放送技術をご体感ください〜
https://www.nhk.or.jp/strl/open2016/

22.2マルチチャンネル音響を体験できる場所は技研公開2016のメインエリアから少し横にそれたところにある部屋。


この部屋では、フルスペック8Kスーパーハイビジョンの特長の1つである、22+2本という圧倒的な数のスピーカーが可能にする3次元音響を体験できるとのこと。これまでにも、4chサラウンドや5.1chサラウンドなど、身近に体験できるサラウンドシステムを体験したことがある人も多いと思いますが、はたして上下の高さまで再現できるという22.2マルチチャンネル音響はどんな音像を作ってくれるのでしょうか。


部屋に入ってみると、思わず笑ってしまいそうなおびただしいスピーカーの数。実際には比較用にセットされた2chステレオ用と、5.1ch用のスピーカーも置かれているのですが、それにしても画面から大きく離れた場所に配置されたスピーカー、そして2つある低音用のサブウーファーと、見た目からすでに圧倒的な雰囲気があります。


サイドとリアにも複数のスピーカー。22.2マルチチャンネル音響は、リスナーの前面に11本のスピーカー、リスナーの左右真横に4本、リスナーの頭頂部に1本、リスナーの後方に6本、そして低音補強用のサブウーファーをL+Rで2本という、合計24本ものスピーカーを配置することで、リスナーの周囲をくまなく包み込むという究極のサラウンドシステムと言えるものとなっています。


デモでは、オーケストラによる演奏を素材として、2chステレオ、5.1chサラウンド、そして22.2マルチチャンネル音響の順番に聴き比べ。ステレオは確かに前面だけが鳴っており、これは予想どおり。次の5.1chで音に包まれたときにも「おおっ」と思わされたのですが、最後の22.2chになると「さっきのは何だったんだ?」というぐらい密度の高い響きが再現されることにビックリ。デモに使われている部屋はごく普通の会議室のようなスペースなのですが、オーケストラが空間の空気を震わせているような生の雰囲気が感じられ、残響音が消えていく様子などに耳を傾けていると、部屋の壁がなくなって広いホールの中に立っているではと錯覚してしまうほど。確かに物量にモノをいわせるシステムではありますが、それによって得られる圧倒的な臨場感を体験すると、思わず「これ…欲しいな…」と思ってしまうという恐るべき技術となっていました。

22.2マルチチャンネル音響の概念や、ダイアログ(ナレーションなど)の音量調整・差し換えなどが可能になる技術詳細はこんな感じ。


文字どおり余韻に浸りながら次の部屋へと移動。この部屋では、実際に22.2マルチチャンネルの3次元音響を制作する装置や効果を体験することができます。


ここではサッカー中継の素材を使ったデモが行われたのですが、先述の「ダイアログ制御」を体験することが可能。実況アナウンサーの音量だけを調節して聞こえやすくしたり、逆に実況音声をばっさりカットしたり、英語の副音声に変えたりなど、自由自在に調節できる様子が実演されました。また、サッカースタジアムの中にいるような、圧倒的な包まれ感も確かに3次元音響のなせる技なのかも。さらに、サラウンド用のスピーカーに残響音を付加して音場を変化させるデモも併せて行われています。

この装置が、音源に3次元残響を負荷するための装置。専用のソフトウェアで残響音がプラスされるシステムになっており、ディスプレイの下のラックには、FURMANのパワー・ディストリビューターと、YAMAHAのネットワークオーディオI/Oラック「RMio64-D」、そしてその下に専用の三次元残響付加コントローラーなどがセットされています。


残響を付加する際は、実際のホールなどで計測した残響特性をベースに処理が行われているとのこと。ただしその場合は元の環境よりも長い残響を付加することができないわけですが、「ブロックシフト法」という手法を用いた独自に開発したアルゴリズムを用いることで残響時間をコントロールすることが可能になっているとのこと。


これにより、元は2chだった音素材に残響音を加えて22.2chへと「アップミックス」することが可能になります。つまり、元はステレオの素材であっても、非常に臨場感のある素材に生まれ変わらせることができるというわけです。


また、これらのシステムによって得られるリスナーの反応を数値的に表示できる「ラウドネスメーター/超臨場感メーター」が新たに開発されており、実際の制作現場にも取り入れられることになるようです。


ラウドネスメーター/超臨場感メーターの概念はこんな感じ。音から得られる、人間の主観的な反応を図式化するという画期的なメーターシステムと言えるのかも。

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in 取材,   ソフトウェア,   ハードウェア, Posted by darkhorse_log

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