ステルス爆撃機はどうやって姿を消すことができるのか
By mashleymorgan
ステルス爆撃機は第一次世界大戦の頃から開発されてきましたが、最も高性能で象徴的なステルス爆撃機と言われているのが、尾翼を持たない全翼機「B-2」です。そんなB-2がどうやってレーダーから探知されにくくするステルス性を発揮しているのかを解説したムービーが公開されています。
Stealth - How Does it Work? (Northrop B-2 Spirit) - YouTube
レーダーは短パルスの電磁エネルギーを発射することで、離れた位置にある対象物の反射を利用して位置や距離を特定するというもの。
現代のレーダーは検知した対象物がどれだけの電波を反射しているかを表わす値であるレーダー反射断面積を示すことができます。この数値が小さければ小さいほどステルス性が高いことになります。
B-2の翼長は52メートルあります。ステルス性を持ち合わせていなければ、レーダーは巨大な航空機が飛行していることを検知することができます。
しかし、B-2は大きめの鳥と同程度のレーダー反射断面積を持っており、レーダーに映っても航空機が飛んでいることはわかりません。
このステルス性を実現しているのは、B-2の持つユニークな形状です。B-2は電波を遠くに乱反射するよう設計されているため、レーダーに反射される電波からB-2を検知することは困難を極めます。
B-2の驚異的なステルス性は、徹底的に合理化された翼と、エンジンを内部に埋め込むという機体設計によるもの。電波を反射するエンジンファンが露出していないことや、地上から赤外線による探知を防ぐため、吸気口も機体上面に位置しています。
同じアメリカ軍のステルス爆撃機であるF-117が複雑な形状をしているのは、開発当時のコンピュータでは曲面的な設計が難しかったため。技術の進歩によって、より理想的な形状を持つB-2を開発できるようになっています。
B-2の機体設計で最も注目すべき点は、通常のジェット機のような尾翼を持ち合わせていないということ。垂直尾翼や水平尾翼を持たないため、レーダーを反射する部分が少なくなり、ステルス性の向上に有利に働きます。
尾翼の代わりに右翼・左翼に1つずつ、片翼のみ動作させることで空気抵抗を発生させて方向転換を可能にする「スプリットラダー」と呼ばれる方向舵の役割を果たす装置が取り付けられています。一方で、スプリットラダーを使うことでレーダー反射断面積が増加する状況に備えて、両翼のエンジンを異なる出力で使用できる機能も備えており、ステルス性の維持を最優先して方向転換の方法も変更可能とのこと。
ステルス性を高めているのは機体設計だけでなく、表面は電波を吸収して熱に変換する特殊な塗料でコーティングされているほか、翼には電波を吸収する炭素繊維強化プラスチックが使われています。
これほど高度な技術によって最高レベルのステルス性を実現しているB-2ですが、恐るべきことに1944年にナチス・ドイツがB-2によく似た全翼機「ホルテン Ho229」を完成させていました。ナチスドイツが敗戦したため、製作は打ち切られましたが、もっと早くに実用機が完成していたら、歴史が変わっていたのかも。
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