メモ

「ネフェルティティの胸像」をKinectでスキャンして盗み出すことは不可能だと専門家らが指摘


2人組のアーティストがベルリン新美術館へKinectを隠して持ち込み、「ネフェルティティの胸像」を3Dスキャン、そのスキャンデータを公開するという“事件”が起きました。しかしこのデータに対して、「Kinectでは胸像の完璧なコピーを作ることはできず、公開されているスキャンデータは捏造である」という指摘が行われています。

Could the Nefertiti Scan Be a Hoax — and Does that Matter?
http://hyperallergic.com/281739/could-the-nefertiti-scan-be-a-hoax-and-does-that-matter/

The Nefertiti 3D Scan Heist Is A Hoax | Cosmo Wenman
https://cosmowenman.wordpress.com/2016/03/08/the-nefertiti-3d-scan-heist-is-a-hoax/

アーティストのノーラ・アル=バドリさんとジャン・ニコライ・ネレスさんは2015年10月にベルリンの新美術館を訪問。衣類に紛れてKinectを持ち込み、展示されていた「ネフェルティティの胸像」の3Dスキャンを行いました。Vimeoで公開されているムービーでは、胸像のスキャンに挑む姿が見られます。

museumshack on Vimeo


いかにも隠し撮りのようなカメラ位置。


青いストールでKinectを隠しています。


そして美術館の中へ……。


周囲の人に気付かれないように、こっそりとスキャンを実行。


カメラの映像にはネフェルティティの胸像は映りこんでいませんが、どうやらこうやってスキャンを行ったようです。


そしてスキャン後のデータは、誰でも利用できるようにと、クリエイティブコモンズライセンスで公開されています。

Nefertiti Hack
http://nefertitihack.alloversky.com/


Sketchfabではスキャンデータから作られた「ネフェルティティの胸像」モデルが公開されています。


しかし、実際に3Dデザインなどを行っている専門家や芸術家は、Kinectでこれだけのデータをスキャンするような芸当は不可能だと指摘しています。


Kinectの3Dスキャンを何度も利用している芸術家のフレッド・カールさんは「私自身の経験から、50万を超えるような三角形で構成されるような形状をKinectはうまくスキャンできません。ネフェルティティの胸像は、少なく見積もっても200万以上の三角形で構成されるものです。つまり、この解像度でスキャンすることはKinectには不可能です」と完全否定。ただし、フォトグラメトリー(写真測量法)を用いたスキャンや、レーザースキャナなど他の高品質な機材を用いれば可能であるとも語りました。

3Dプリントや3Dスキャンのコンサルタントもやっているマルチメディアアーティストのコスモ・ウェンマンさんも、Kinectによる盗撮に最初から懐疑的な見方をしていた人物で、データを見たときに「これは博物館が過去に行って、まだ公開していないスキャンデータの1つなのでは?」と思ったそうです。そこで調査を行い、2008年にネフェルティティの胸像の高品質スキャンを行ったTrigonArtが、自らの仕事実績としてその360度スキャンデータを公開しているのを発見、今回の「Kinectによるスキャン」というデータと比較を行いました。

ウェンマンさんが作成した比較画像がコレ、上がTrigonArtによるスキャン、下が今回のスキャン。


左がTrigonArtによるスキャン、右が今回のスキャン。


「TrigonArtによるスキャンの未公開データが流出した」としてもおかしくはない一致具合を見たウェンマンさんは、TrigonArtの代表にアポイントを取って直接話をしたそうです。その印象は、とても親切で、かつ仕事には真摯に取り組んでいる人物であり、ウェンマンさん自身と同様、こういったクライアントの損害になるようなことをする人物ではないであろうというものでした。

そして、さらに調べを進めたウェンマンさんは、2月26日にAllThingsDがこの件について、ネレスさん本人にインタビューを行った映像を見つけました。

3D in Review for February 20 - 26, 2016 "Spy Scans" - YouTube


この中で、ネレスさんはスキャン自体は自分たちが行ったものの、機材を用意した人物は別にいて、スキャン後の端末もその人物に渡してデータ化を行ってもらったこと、提供された3Dデータの品質にはネレスさん自身も驚いたことを告白しています。

ウェンマンさんはこの映像を見て、ネレスさんがこういった技術面のことについてまったくの素人であると判断。「Swiping a Priceless Antiquity ... With a Scanner and a 3-D Printer」という記事を書いたニューヨークタイムズのチャーリー・ワイルダー記者とも接触し、ネレスさんたちに機材を提供したという謎の人物とは連絡が取れていないことを確認。「アーティスト2人も、ニューヨークタイムズも、タイムス読者も、正体不明の人物に騙された」と結論づけました。

なお、ウェンマンさんは各美術館が所持している、収蔵品の高品質な3Dスキャンデータは広く公開されるべきであると考えていて、その点についてはアル=バドリさんとネレスさんが実際に行動に出たことをうらやましく思うとコメントしています。

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in メモ,   アート, Posted by logc_nt

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