インタビュー

牙狼プロジェクト最新作劇場版「媚空-ビクウ-」公開を控えた雨宮慶太総監督にインタビュー


特撮ドラマシリーズ「牙狼〈GARO〉」のプロジェクト最新作として、11月14日(土)に劇場版「媚空-ビクウ-」が公開されます。本作は2014年4月から放送された「牙狼〈GARO〉-魔戒ノ花-」に登場した魔戒法師・媚空を主役とした、まったく新しい作品です。ちょうど「牙狼〈GARO〉」プロジェクトが10周年を迎えたということで、シリーズの原作者でもある雨宮慶太総監督に話を伺ってきました。

牙狼<GARO>10周年記念作品 劇場版『媚空-ビクウ-』
https://garo-project.jp/BIKUU/


GIGAZINE(以下、G):
「媚空-ビクウ-」は牙狼10周年記念作品だということなので、作品単体だけではなく、シリーズ全体についてもいろいろとお話を伺えればと思います。

ちょうど5年前、映画「牙狼〈GARO〉~RED REQUIEM~」公開時にインタビューを行ったのですが、それ以降に「牙狼〈GARO〉~MAKAISENKI~」があり、映画第2弾の「牙狼〈GARO〉~蒼哭ノ魔竜~」で冴島鋼牙の物語が終わって、シリーズが終わるのかと思いきや、道外流牙や冴島雷牙が出てきて、どんどん物語が広がっています。10月に発売されたムック「牙狼〈GARO〉ぴあ」の中で、こうした物語は初期構想時にはなく、新しくコンテンツが始まる時に掘り下げたという記載がありましたが、雨宮さんの中にはどれほどの規模の「牙狼ワールド」が広がっているんですか?

雨宮慶太(以下、雨):
今の目先のことぐらいだけです。そんなには膨らませていないですが、雷牙の話の最後ぐらいはぼやっと考えています。

G:
雨宮さんは劇場版「媚空-ビクウ-」では総監督を務めていますが、「牙狼〈GARO〉~闇を照らす者~」では横山誠さんが総監督だったので、原作のクレジットで、またアニメ2作品でも原作クレジットとなっていますが、この場合は作品にどういった関わり方をしているのですか?

雨:
「闇を照らす者」とアニメに関しては、スタッフとして参加しているというよりは「監修」で、話があれば相談に乗るという感じのスタンスです。

G:
他の作品だと監督、あるいは総監督なので、実制作にも携わっていると。

雨:
総監督とクレジットされているコンテンツに関しては、基本的には物語をどういう風にするのか、どちらかといえばプロデューサーに近い関わり方ですね。台本をどういう話にするのか、どういう作家さんが描くのか、そして監督がどういう俳優さんを使って撮っていくかを全部決める、という感じです。


G:
アニメ「炎の刻印」は中世ヨーロッパ風で、10月から放送されている「紅蓮ノ月」は平安京が舞台となっているのですが、これは「こういう作品をやりたいです」と話が来たのですか?

雨:
そうですね、「紅蓮ノ月」については平安時代をやりたいという相談を受けました。

G:
これまでの「牙狼〈GARO〉」といえば現代を舞台に黄金騎士ガロが活躍するドラマでしたが、そういったアイデアを聞いた時の印象というのは?

雨:
僕自身には「こうでなくちゃいけない」というところは実はあまりなくて、こういう作品をきっかけに「牙狼〈GARO〉」シリーズや僕らのコンテンツを見てもらうきっかけになればと思っています。そういう意味では、寛容に判断しているのではないかと思います。

G:
この中世ヨーロッパや平安京というアイデアについては、「それはやってもよかったな」というものだったりしますか?

雨:
それはありますね。自分が総監督をしている作品の中でも、この回は自分で監督してもよかったかなと思ったりすることはあります。でも、脚本家・監督・俳優さんを自分が選んでお願いしているもので、「こうやればよかったかな?」と思う部分は細かいところ、ちょっとしたシーンやセリフなので、意見として伝えた上で、修正可能であればしてもらったり、場合によっては再撮影で付け足してもらったりしています。以前ほどに「自分だったらこうするのに」というのはないですね。


G:
今回の「媚空-ビクウ-」は、「魔戒ノ花」第18話に出てきた魔戒法師・媚空をヒロインとして描かれる物語です。資料では「牙狼シリーズとは繋がりがなく、外伝でもスピンオフでもない」とありましたが、牙狼〈GARO〉シリーズの新たな作品の「媚空-ビクウ-」ではなく、完全に別作品だと切り分けて考えた方がいいのでしょうか。

雨:
スピンオフという言い方はあまり好きではないんです、この作品はこの作品として単体で成立しているので。とはいえ、「牙狼〈GARO〉」から派生したものではあるし、でも独立して作った作品でもあるし……そこにはあまりこだわっているわけではないですね。

G:
ドラマに媚空が出てきた時点で、「このキャラクターを主役として1つ作品を作ろう」と決まっていたのですか?

雨:
いえ、決まっていなかったです、後からですね。最終回が終わってからかな?最終回の媚空の優しい顔なんかを見ていて、このキャラクターが活躍するところをもうちょっと見てみたいと思い、気になってきたからというのはあります。

G:
牙狼外伝 桃幻の笛」は、冴島鋼牙の名前は出てくるけれど姿は出てこず、邪美と烈花という2人の魔戒法師の戦いが描かれましたが、あれも同じように、ドラマの中で邪美や烈花の活躍を見て、「この2人の姿をもうちょっと見てみたい」という思いから作られたのですか?

雨:
そうですね、邪美と烈花にはそういうところがありましたね。


G:
2015年9月まで「牙狼〈GARO〉-GOLD STORM-翔」の放送があり、その放送終了後にブログで「牙狼はもうちょびっと続く・・・」と書かれていました。こうして劇場版「媚空-ビクウ-」の制作・公開があったりして、「ちょびっと」なんだろうか?と思ったのですが。

雨:
「ちょびっと」というのは人によって感覚が違うからね。

G:
なるほど……「牙狼〈GARO〉ぴあ」の中で、作品が10年続いているわけですが、制作側としては2、3年ぐらいに感じていると書かれていましたね。このシリーズはもともと、オムニバス・ジャパンの持つすさまじいCG技術がスターになるような企画を、ということで生み出されたものです。10年にわたって作り続けてこられて、その間の技術の進歩はすさまじかったのではないでしょうか?

雨:
うーん、技術的には進歩しているのかな。あまり劇的には変わっていないという感じがしています。解像度は良くなっているけれど、技術的に良くなったなと感じている部分が、実は10年近くやってきた人間のスキルやセンスの向上によって絵が良くなっているもので、マシンの性能によって良くなったという部分はそんなに多くはないんです。感性やスキルが上がってきたので、10年前よりも見せ方が上手くなっているということの方が大きいかもしれません。

G:
なんと……。

雨:
ハリウッド映画のように、100人や200人かけて作るとマンパワーをマシンパワーが上回って劇的な差が出るのかもしれないけれど、「牙狼〈GARO〉」では少なくはないにしても大量に導入しているというわけではなく、コツコツと作っているというやり方は変わっていないので、10年やってきたことで成立している部分はCGだけではなく撮影や現場でも多くあると思います。


G:
「牙狼〈GARO〉」についてのアイデアはもちろん、デザイン画や書き文字もアートとして昇華されています。これだけのものをアウトプットするために、普段どういったインプット作業をしているのですか?

雨:
なんだろうな?……おもちゃを買ったりゲームをしたりというのが一番多いですね。おもちゃを手元に所有しておくためにみんなお金を出すわけですが、そこには機能的なことだけではなく、根源的には形や造型に対して「かっこいい」「強そう」と思ったということがあるんだと思います。そこから離れてしまうと「欲しいな、いいな」と思うだけになってしまう。それを手に入れて眺めることで、かっこよさや強さを体感する、というのは結構あります。わりとおもちゃは買っていますね。

ゲームも同じで、いつまで経っても映画が勝てない表現という点で、ゲームの方が先に行っているので、それをどうすれば映画に落とし込めるのかはずっと考えているんですが、なかなかうまくいきません。

G:
おもちゃはどういったものを買われるんですか?特撮関係のおもちゃだけではなく?

雨:
いろいろ買いますよ、トランスフォーマーだったり。

G:
ゲームについてはブログに「ゲーム」カテゴリがあるほどですからね。以前、Twitterでどういったゲームをするのかと聞かれた時に、家では洋ゲーを、外ではキッズカードゲームをと回答されていました。

家で遊ぶのは洋ゲーだけど外で遊ぶのは子供向けのキッズカードゲームが主。“@miyu4ki: @keita_amemiya ゲーム好きなんですね?どんなのをするんでしょうか?”

— 雨宮慶太 (@keita_amemiya)

このキッズカードゲームというのは、大きな本体の前に座ってやるタイプのものですか?

雨:
そうです。いろいろとやりますよ。

G:
どれか1つに集中しているわけではなく、いろいろ。

雨:
はい、大体やります。

G:
ブログだと「バイオハザード5」「バイオショック2」「デッドライジング2」と、かなりガッツリとやり込むゲームの名前が挙がっていて、特に「デッドライジング2」は「宇宙で一番面白いゲーム」とまで書かれていました。最近はゲームカテゴリの記事がないのですが……。

雨:
今はあまり新しいのをやれていないのと、面白さを追求するところまでいっていないので、昔やっていたゲームをちょこちょこやっているぐらいですね。正直なところ、最近はあまり面白いゲームに出会っていないというのもあります。

G:
多忙もありつつ、これだというゲームが出ていないというのもあると。

雨:
出会えていないですね……。

G:
先ほど「映画が勝てていないゲームの表現を、いかに映画に落とし込むか」という話が出ましたが、ゲームの映画化として「バイオハザード」は実写化もしていますし、CG映画にもなりました。ご覧になりましたか?

雨:
見ました。あれは「ゲームで起きている現象や世界観を映像化している」という面白さで、「ゲームの上の映像表現を目指している」というものではないので、ちょっと別物ですね。「ゲームの上の映像表現を映画文法に入れていく」ということをやっている作品にはまだ出会っていないので、「本当にできるのだろうか?」という感じです。CGだとできるのかもしれませんが、実写でやらないと意味がないと思っています。

G:
なるほど……。以前お話を伺った時、雨宮さんの中で映画といえば「怪獣が出るもの」と「怪獣が出ないもの」の2種類だと伺いました。これから、怪獣が出るものの構想はありますか?

雨:
実は「怪獣が出るもの」モノのイメージで「牙狼〈GARO〉」を作っているんですよ。さすがにゴジラみたいな大きなヤツが出るかというと、それは大事なので難しいんですが、思いとして、「怪獣が出る映画」というカテゴリで作っているという感覚は変わっていません。

G:
今後の作品としては、5年前に「アクションものではないもので、妖精を題材にしたものをやりたい」というお話がありましたが……。

雨:
これはやろうと考えています。ただ、なかなか体が空かないので、できていないですね……。

G:
なるほど。また「牙狼〈GARO〉」について、そして新たな作品について、お話を伺うことができればと思います。本日はお忙しい中、ありがとうございました。

牙狼のシャツで来てくれた雨宮総監督。


……ということで、総監督:雨宮慶太、監督・アクション監督:大橋明、主演:秋元才加による劇場版「媚空-ビクウ-」は11月14日(土)から新宿バルト9ほかで全国ロードショーです。「牙狼〈GARO〉」シリーズの作品であり、かつ、独立した作品としても成立しているので、シリーズのファンの人はもちろん、「牙狼〈GARO〉」を見ていない人でもここから牙狼〈GARO〉ワールドに入るきっかけとして、見てみて下さい。

【予告映像】劇場版『媚空-ビクウ-』本予告 90秒編(主演:秋元才加)/GARO PROJECT #88 - YouTube

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in インタビュー,   映画, Posted by logc_nt

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