映画

「バック・トゥ・ザ・フューチャー」30周年で脚本のボブ・ゲイルが赤裸々に語る

by JD Hancock

映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」が公開されたのが1985年。それから30年が経ち、続編の「バック・トゥ・ザ・フューチャー Part2」の舞台となった2015年がやってきました。映画の中で描かれた「未来の生活」の答え合わせをしてみると、当時想像もつかなかったようなものも現実には出てきていますが、それでも3部作が今でも人気のある映画なのは間違いありません。そんな記念の年に、作品の脚本を手がけたボブ・ゲイル氏がインタビューに答え、企画経緯や制作現場、設定などの話を明かしています。

An Interview with Back to the Future Co-Writer/Producer Bob Gale | The Hundreds
http://thehundreds.com/bob-gale-interview/

一部だけですが映像付きの部分もあります。

A Conversation with Back to the Future Co-Creator Bob Gale - YouTube


前述したように、「バック・トゥ・ザ・フューチャー Part2」の舞台は1作目の「30年後の未来」で2015年でした。映画の通りであれば、明日・2015年10月21日にマーティたちは1985年から「未来」へやってくることになっています。その未来を生み出したボブ・ゲイル氏がThe Hundredsのインタビューに対して「まさか30年経っても楽しんでもらえる映画になるとは思っていなかった」と応えています。

・マーティ・マクフライ役のマイケル・J・フォックスについて
制作時の有名なエピソードの1つとして、マイケル・J・フォックスより前にエリック・ストルツがマーティ役を務めていたことが挙げられます。

もともとゲイル氏らはフォックスに目を付けていたのですが、フォックスはドラマ「ファミリータイズ」に出演していて多忙だったため諦め、ストルツを起用したものでした。しかし、撮影に入って6週間が経過してもストルツの演じるマーティにしっくりこなかったゲイル氏らは、ストルツの降板を決定。改めて、ファミリータイズのプロデューサーに、フォックスを融通してもらう案はないかと相談。撮影時間の空きであればそちらの映画に出てもOKという答えをもらい、フォックスの承諾も得て、ファミリータイズの撮影時間を外しての収録が行われました。しかし、ファミリータイズの拘束時間は月曜~木曜が18時まで、金曜日は22時までと長く、当時のことをゲイル氏は「本当にばかげたものでした」と振り返っています。

「バック・トゥ・ザ・フューチャー」がヒットするかもしれないと感じたのは1985年3月、ホイッティアー高校で「魅惑の深海パーティー」のシーンを撮影していた時のこと。前年12月に、ストルツが同じシーンを撮影していた時には観客はいなかったのですが、フォックスが来るという噂が人を呼び、一目見ようと人垣が7重にもできたそうです。


ちなみに、当時のマイケル・J・フォックスは「テレビスター」という扱いでした。2015年現在、映画とテレビはとても近しい存在であり、テレビで活躍している人が映画に出たり、反対に映画スターがテレビに出ることも珍しくありませんが、当時はそんな雰囲気はなく、映画のスタッフはテレビスターを映画に出そうとは考えず「テレビスター?うちの映画には要りません」という態度だったそうです。しかし、ゲイル氏らは慣例を気にせず、ファミリータイズを見て「フォックスはいい役者だ、我々の作品にピッタリだ」と気に入り、起用に至ったとのこと。

・ドク(エメット・ブラウン博士)役のクリストファー・ロイドについて
マーティの「相棒」として映画に登場するドクを演じたのはクリストファー・ロイド。1975年公開の「カッコーの巣の上で」が映画メジャーデビューだと言われる、映画界の人間ですが、テレビのシットコム「タクシー」にも数年にわたって出演して人気を博しました。「バック・トゥ・ザ・フューチャー」への出演は、1984年公開の映画「バカルー・バンザイの8次元ギャラクシー」の共同プロデューサーがゲイル氏の知り合いで顔合わせする機会があったためだそうです。

マイケル・J・フォックスが人懐っこいタイプだったのに対して、ロイドはとてもシャイ。リハーサルでも物静かなのですが、いざ「アクション」の声がかかると一瞬でドクになってしまったとのこと。

by RiKx...

・2作目以降の制作について
1作目「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を作った時点ではまったく続編のことは未定でした。その証拠がマーティの恋人であるジェニファーで、ロバート・ゼメキス監督は「最初から続編を考えていたら、1作目のラストでジェニファーを車に乗せはしませんでした」と語っています。

Part2は1作目のラストと重複しつつ、未来を見てきたドクがマーティとジェニファーを連れて2015年へ行くわけですが、ジェニファーはそこまで練り込まれたキャラクターではなく、ストーリーもジェニファーのために考えられた部分がなかったため、Part2のジェニファーは大半が眠らされたり、気絶させられたりしているだけとなりました。キャストがクラウディア・ウェルズからエリザベス・シューに変わっていますが、これは1作目の撮影中にウェルズの母親がガンと診断されて続編に出ないことを決めたためで、役の中身とは特に関係ないようです。

キャスト変更という点では、マーティの父親のジョージ・マクフライを演じたクリスピン・グローヴァーも出演は1作目のみ。ゲイル氏によると、続編への出演オファーも出していたものの、出演料で折り合いがつかなかったとのこと。このため、Part2・Part3では1作目の流用シーンを除いてジェフリー・ウェイスマンが演じ、特にPart 2ではジョージが出てこないように「ビフに殺された」という話になりました。

・設定を支えたのはボブ・ゲイル自身
タイムトラベルものの作品では時間と空間の管理が重要になってきますが、バック・トゥ・ザ・フューチャーでは特に専門家は雇わず、ゲイル氏が担当していたとのこと。

もともとゲイル氏には、子どもの頃にH・G・ウェルズの小説「タイム・マシン」に触れ、大学までに数多くのタイムトラベルものを読んできたという積み重ねがありました。

また、実際の時空間のロジックと、映画の中でのロジックが同一ではないことも理由の1つ。その代表的なものが、3部作いずれでもキーアイテムとなってくる写真です。作中では、写真の中に写ったマーティの姿が薄れてしまうことで、何か歴史改変につながるような事件が起きていることが示されます。実際にはそんな歴史改変が起きるのであれば「写真の中のマーティが薄れる」どころか、写真自体が消えてしまうはずですが、演出により観客に対して視覚的に分かりやすく現状を示すことができます。また、作中でドクが無知なマーティに対してタイムトラベルの基本的な概念を伝えることで、観客にも伝わるような作りがなされています。

by The Conmunity - Pop Culture Geek

・続編(Part4)について
これだけの人気作品なので続編を望む声はPart3公開直後から多々あるのですが、ロバート・ゼメキス監督はPart3のパンフレットの中で否定的意見を述べ、今回、ゲイル氏もはっきりと「ありません」と明言しました。その理由は「誰がマイケル・J・フォックスのいないBTTFを見たいのですか?」というもの。フォックスはパーキンソン病により俳優業を休業。近ごろは少しずつですが仕事に復帰中。キャストを変えるという方法もありますが、ゲイル氏は「誰かを新たなマーティ役にしても、それを見たいとは誰も思わない」とこれも否定的。

さらに、バンドの再結成に例えて、「私はビートルズが解散した時のことを覚えています。再結成したらどうだろうと聞かれても『いやいや、見たくはありません。我々が期待しているほど良くはないだろうから』と答えるでしょう」と述べています。

ユニバーサル映画はゲイル氏ら抜きでも続編を作ることは可能だそうですが、現在、ゲイル氏らはバック・トゥ・ザ・フューチャーの新たなストーリーが描かれるミュージカルを制作中なので、ユニバーサル映画がそのような無茶な手段に出ることはないとのこと。この作品はゲイル氏、そしてゼメキス監督が監修し、満足のいくものでない限りは公開させないつもりなので、ファン含めてみんながハッピーになれるものになるだろうと語りました。

1作目が終わった後の続編のアイデアとしてはいろいろなことを考えたそうです。1つは、マーティが1967年に飛び、ジョージとロレイン(両親の若いころ)のハネムーンを邪魔してしまい、また自分が危機に陥るというもの。このアイデアは脚本段階まで進んだところで、1作目でやったことと同じになるため取りやめになりました。

もう1つは、1920年代まで戻って、ドクの母親が出てくるという話。このアイデアでは、ドク役のクリストファー・ロイドに母親役もやってもらえば面白いのではないかという意見が出ていたそうです。

・ドクとマーティの新たな姿について
映画3部作が終わり、マイケル・J・フォックスが病気で休んでいる中、クリストファー・ロイドにはドク役のオファーがいくつもあり、近いところではセス・マクファーレン監督・主演の映画「荒野はつらいよ 〜アリゾナより愛をこめて〜」にカメオ出演しています。

「ドク役」についてはユニバーサル映画がオファーを丁重に扱ってくれていて、ゲイル氏らが「門番」となり、ドクとしてのイメージに合わないオファーについては断っているとのこと。しかし、セス・マクファーレン監督はバック・トゥ・ザ・フューチャーの大ファンでもあり、出演が実現したそうです。

なお、直近ではマイケル・J・フォックスがマーティとしてドクとともに出演した、トヨタの水素自動車のCMが制作・公開されています。

“Diner” | Back to the Future | Presented by Toyota Mirai - YouTube


・Part3について
The Hundredsによる「3部作の中で、Part3はイマイチだという声があるが、必要だった?」という質問を「もちろん。なければ『3部作(トリロジー)』にならないですから」と笑い飛ばしたゲイル氏。

西部劇っぽい部分については、ゲイル氏もゼメキス監督も西部劇で育ってきたということによるもので、作品自体は「ロマンチックな古典的冒険小説」だと表現。「問題があるとすれば、みんながあまり西部劇を評価しないという部分だけれど、いいものですよ」と、愛を込めた作品の良さを語りました。3作のどれが好きかという質問には、どれかを選ぶとなるとリア王のような例もあるから3作品ともいい、と前置きした上で、「オリジナルなので1作目は特にいいものです」と答えました。

10月20日(火)に発売された「Back to the Furure: The Ultimate Visual History」には、他では明かしたことのない話や、各種ビジュアルなどが掲載されているとのこと。

Amazon.co.jp: Back to the Future: The Ultimate Visual History: Michael Klastorin, Randal Atamaniuk: 洋書


なお、マーティたちがバック・トゥ・ザ・フューチャー Part2で訪れた「未来」の日であることを記念して、2015年10月21日の11時~17時限定で、シェアライドサービス「Lyft」にマクフライモードが登場。マンハッタンならデロリアンを呼ぶことができるそうです。

Great Scott! DeLorean Rides in NYC ? Lyft Blog
http://blog.lyft.com/posts/2015/10/14/back-to-the-future


2015/10/23 12:10追記:
記事中にある、現在のマイケル・J・フォックスとクリストファー・ロイドが登場する映像「Diner」の完全版「Fueled by the Future」が公開されていました。

Fueled by the Future | Back to the Future | Presented by Toyota Mirai - YouTube

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in 動画,   映画, Posted by logc_nt

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