サルが野生のオオカミを飼い慣らして集団生活しているのが確認される
人間は犬や牛などの家畜と共に生きることができる高い知性を持つ動物ですが、「オオカミ」と共生する「サル」がアフリカで確認されました。まるでオオカミを飼い慣らしているかのように見えるというサルですが、一体、どのような関係が築かれているのでしょうか。
Are these monkeys domesticating wolves? - Business Insider
http://www.businessinsider.com/are-these-monkeys-domesticating-wolves-2015-6
アフリカ・エチオピアなどに生息するゲラダヒヒというサルは、体長約70センチメートルの大きさで、花や種子を食べ、草原や岩場に数十頭の小規模な集団を形成して生活しています。
ゲラダヒヒにとって野生の犬やサーバルなどの小型の肉食獣は天敵であり、ゲラダヒヒの集団が襲われることも珍しくないとのこと。
これまで肉食獣と相容れないかに考えられていたゲラダヒヒですが、エチオピアの動物学者が、捕食者として天敵ともなり得るオオカミがゲラダヒヒの集団で共生している様子を確認しました。このオオカミはゲラダヒヒの集団内を悠然と動き回り、ゲラダヒヒも逃げたりオオカミを撃退したりすることなく、まるでオオカミがそこにいないかのように振る舞っていたそうです。
ゲラダヒヒとオオカミの奇妙な共同生活を観察し続けた研究者は、オオカミがゲラダヒヒの集団内に居るときの方が、単独行動しているときよりも獲物であるネズミなどのげっ歯類を40%も多く獲得している事実が分かったとのこと。つまり、オオカミにとってはゲラダヒヒの集団で生活することはより多くの獲物をゲットするチャンスがあり、大きなメリットがあるというわけです。
By U.S. Department of Agriculture
研究者が長期間、ゲラダヒヒとオオカミの集団を観察したところ、オオカミはゲラダヒヒの赤ちゃんを食べることはなかったとのこと。無力な赤ちゃんザルを襲うことは容易なはずなのに、あえて捕食しないことから、ゲラダヒヒとオオカミとの相互関係が非常に安定したものであると予想されています。なお、赤ちゃんザルを攻撃したオオカミの例が1件だけ観察されたそうですが、すぐにゲラダヒヒの集団がオオカミから赤ちゃんザルを奪還し、オオカミが追い払われたとのこと。
他方で、「集団内にオオカミを取り込むことで、ゲラダヒヒは恩恵を受けていないように思われる」と研究者は述べています。例えば、オオカミとの共同生活状態においても、野生の犬による襲撃があり、オオカミは犬を追い払うことなく逃げてしまったそうで、オオカミには捕食者を追い払う効果はないようです。
攻撃的なオオカミを殺して排除し、従順な種である犬のみを許容することで家畜の犬を従えてきた人間の歴史を考えると、ゲラダヒヒがオオカミを許容する行動は、現時点ではメリットは不明ながら、ウィンウィンの関係を築くためのサルによる家畜獲得のスタート地点と言えるのかもしれません。
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