古代ギリシャは驚くほど好景気な民主政治だった
By Vicky Tsavdaridou
財政破綻の危機が迫るギリシャは財政再建案への賛否を問う国民投票を控えており、ユーロ圏から離脱するか否かの瀬戸際に立っています。ギリシャ政府がATMの引き出し限度額を60ユーロ(約8190円)に制限するほどの経済的危機に直面しているギリシャですが、はるか昔の古代ギリシャでは、これまで古典学者の間で考えられていたより経済の状態が良く、民主主義政治に支えられて驚異的な経済成長率を持っていたことがスタンフォード大学の研究で明らかになりました。
Scholar at Stanford debunks long-held beliefs about economic growth in ancient Greece
http://news.stanford.edu/news/2015/june/greek-economy-growth-061115.html
もともと古代ギリシャに経済成長は存在しなかったという説が古典学者の中で常識となっていましたが、スタンフォード大学古典学教授のジョサイア・オバー氏は、約紀元前1000年~300年ごろの古代ギリシャが他に類を見ないほどの経済成長率を持っていたことを示す証拠を発見しました。
オバー氏はスタンフォード大学の政治学教授や学生とともに研究チームを組み、古代ギリシャに関する大量の記録や文学的資料をデジタル化して、当時のギリシャの経済成長率を可視化できるツール「POLIS」を作りました。POLISには人口、人口分布、人口1000人以上の規模の都市国家の位置、当時の有名人が住んでいた場所などのデータが含まれており、地図上に当時のギリシャの状態を表示することができます。
POLIS
これらのデータを調査していくうちに、オバー氏は古代ギリシャが貧困な国だったという説を覆すに十分な証拠を発見したとのこと。オバー氏によると、当時のギリシャは多くの独立国を従えた独特な分散型構造を持つ都市国家群を築いており、いくつかの強豪国を合わせても及ばないほどだったそうです。国家が分散することで相対的に民主主義の繁栄につながり、技術革新や文化的発展が発生しやすい環境になっていたとのこと。
また、POLISに家の平面図やこれまでの埋蔵ギリシャ通貨の発見情報といった考古学的データが追加されたことで、当時のギリシャ人は危機的状況に陥ると、通貨を家の床下に埋めて貯蓄を保護する傾向にあったことが判明。危機的状況が深刻だった場合、埋められた通貨が日の目を見ることはなかったとのこと。
このデータは古代ギリシャでは考えられていたよりもずっと早くから鋳造貨幣が流通していたことを示しており、通貨の流通から経済の発展を考えると、当時の人口総数は考えられていた数の10倍~15倍。また、同時期の1人当たりの消費率は2倍に及ぶと考えられることから、古代ギリシャは考えられていたよりもずっと好景気で、高い経済成長率を持っていたことがわかりました。
そして、オベー氏いわく「著しく民主的だった」という古代ギリシャに潤沢な経済力があれば、人々は土地改良の技術や教育など、自分たちのために投資するようになります。それだけでは一般的な高度経済発展の条件にはなりませんが、オベー氏は「政府が公平なルールを制定していた民主主義の古代ギリシャでは、国民が『教育に投資する価値がある』と考えたでしょう」と予想しています。また、通常は集中型の集団が都市の成長発展につながると考えられていますが、国家が点在した古代ギリシャにおいては、技術の開発・改良のコンクールのような状態になるため、驚異的な経済成長につながったと考えられるわけです。
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