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温風を冷風に変えて室内を快適にする3Dプリンター製のレンガ「Cool Brick」


2015年の日本の初夏は例年よりも平均的に高い気温を記録しましたが、暑くなってくると扇風機やクーラーを回せば涼しい部屋で過ごすことができ、熱中症などを回避することができます。一方で、はるか昔の砂漠地帯などでは、クーラーのような冷却システムが登場するまでは、液体が蒸発する際に周囲の熱を奪っていくという摂理を利用した「気化冷却」によって冷風を生み出す特殊な窓が使われていたとのこと。そんな気化冷却の仕組みを利用し、外気を冷風にして室内に取り込むことができる特殊なレンガが3Dプリンターで作られた「Cool Brick」です。

EMERGING OBJECTS » Cool Brick
http://www.emergingobjects.com/projects/cool-brick/

「気化冷却」とは水蒸気が空気中に含まれることで空気の温度が低下する自然現象の1つ。冷蔵・冷凍技術が発明されるまでは、気化冷却は一千年にわたって使われてきました。代表的なものが砂漠地帯に位置するアラブなどの家屋に使われている「マシュラビーヤ」という格子状の窓です。2007年にはマシュラビーヤのような格子状の窓に、日よけを付けて水を張った容器を置くことで気化冷却による冷たい風を室内に取り込めるという「マスカティーゼ式気化冷却システム」が発表されています。

Evaporative-Cooling.pdf
(PDFファイル) http://greenpassivesolar.com/wp-content/uploads/2012/02/Evaporative-Cooling.pdf


3Dプリンターを使ってユニークで快適な建築素材を製造する「EMERGING OBJECTS」は、マシュラビーヤやマスカティーゼ式気化冷却システムから影響を受け、さらに冷却効率を向上させる新素材として「Cool Brick」を開発しました。Cool Brickは多孔性セラミックを使ったレンガとなっており、スポンジのように水を吸収できる反面、空気が通り抜けるように設計されています。Cool Brickを空気が通過するとき、内部に保持されていた水分はミクロの穴から風に運ばれて室内に入るため、気化冷却によって温度が低下した涼しい風になるとのこと。


これがCool Brick。


Cool Brickは各ブロックを連結することができ、表面の凹凸がパズルのようにフィットするため、モルタル素材でしっかりと接着することが可能。また、デコボコした特殊な形状は日よけの効果を持っており、表面温度の低下だけでなく、強い太陽光による素材の劣化を防ぐことができるようになっています。窓や型枠は不要であるため、理論的には乾燥した気候であればCool Brickだけで家屋を作ることもでき、Cool Brickの近くに水を張って置いておけば、壁全体が電源のいらない自然のクーラーになるとのことです。


なお、Cool Brickが製品化されるかどうかはわかっていませんが、2015年1月17日~4月19日の期間にサンフランシスコのクラフト&デザイン美術館で展示されていたとのことです。

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in ハードウェア,   デザイン, Posted by darkhorse_log

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