【訃報】レーザー発明のノーベル賞受賞者、チャールズ・タウンズ氏が死去
メーザーおよびレーザーを発明したことで1964年にノーベル物理学賞を受賞し、物理学・天文学の分野に大きな貢献をもたらしたチャールズ・ハード・タウンズ氏が、2015年1月27日に体調を悪化させ、オークランド州の病院へ向かう途中で亡くなっていたことがわかりました。享年99歳でした。
Nobel laureate and laser inventor Charles Townes dies at 99
https://newscenter.berkeley.edu/2015/01/27/nobel-laureate-and-laser-inventor-charles-townes-dies-at-99/
Inventor of the laser, Charles Townes, dies at 99 | Circa News
http://cir.ca/news/charles-townes-obit
チャールズ・タウンズ氏は1915年7月28日にアメリカ・サウスカロライナ州のグリーンビルの農場で生まれました。地元のファーマン大学に進学し、物理学や博物学に魅了されるようになり、1935年に19歳で大学を首席で卒業。その後物理学の博士号を取得したタウンズ氏は、1947年までベル研究所で働きました。第二次世界大戦中はレーダー爆撃システムの設計に携わり、1950年からレーザーの発生に関する研究を開始しました。
1951年のある日、35歳になったタウンズ氏がワシントンの公園のベンチに座っている時、突如として「短波長と高周波の光によるビームを発生させる」という、長年取り組んできた問題の解決策を思いついたとのこと。その後、1954年にタウンズ氏らはアンモニアガスを使った装置によって、誘導放出によるマイクロ波の発生と増幅に成功。「microwave amplification by stimulated emission of radiation(放射の誘導放出によるマイクロ波増幅)」の頭文字をとって、「メーザー」と名付けられました。
1958年、義理の兄弟でノーベル賞受賞者のアーサー・ショーロウ氏とともに、メーザーを可視化するアイデアを提案。これが後の「レーザー」となるアイデアで、1959年にアメリカ国防分析研究所で「レーザーでドアを開ける」というデモンストレーションに初めて成功しています。これらの業績が認められ、タウンズ氏・アレクサンドル・プロホロフ氏・ニコライ・バソフ氏の3名は1964年にノーベル物理学賞を受賞しました。
現在、レーザーは家電製品・光ファイバー・測量機器・プリンター・エンターテインメントショーのライトやレーザーポインターなど、さまざまな製品に使われています。タウンズ氏自身はメーザーを電波天文学に応用した研究を続けたほか、レーザーによって中間赤外域を観測する世界初の天文用干渉計となる「赤外線空間干渉計」を開発したことで、星間物質の発見および、銀河系中心部のブラックホールの質量を初めて測定するなど、活躍を続けました。
輝かしい業績を残したタウンズ氏は、米国科学アカデミー・National Inventors Hall of Fame(全米発明家殿堂)のメンバーに認められており、25の大学から名誉学位を受けているほか、各所から科学栄誉賞などのさまざまな賞を受賞しています。1941年に結婚した妻とは4人の娘をもうけ、6人の孫と2人のひ孫も生まれています。亡くなる前年の2014年まで、カリフォルニア大学バークレー校物理学部の名誉教授として、キャンパス内のオフィスや宇宙科学研究所に訪れていたとのことです。
レーザーの進歩は今なお続いており、中国ではドローンをレーザーで迎撃するシステムが構築中とのこと。また、初めてレーザー光線の軌跡を毎秒200億枚の超ハイスピードカメラで捉えることに成功したムービーも公開されています。
Laser flight path caught on camera for the first time - YouTube
・関連記事
米海軍が1発100円のレーザー砲発射実験を公開、強力な破壊力もプレステ感覚で操作可能 - GIGAZINE
3Dプリンタよりカンタンに立体を作れる3Dレーザーカッター「LaserOrigami」 - GIGAZINE
金属表面をレーザー処理して徹底的に水をはじきまくる表面加工技術が誕生 - GIGAZINE
622MbpsでNASAがレーザーを使った宇宙とのデータ通信に成功 - GIGAZINE
レーザー砲・レールガンなどの未来兵器をアメリカ海軍が実戦配備の見通し - GIGAZINE
・関連コンテンツ