「ホームレスに食べ物を提供すること」を制限する条例が増加傾向に
by daniellehelm
アメリカ全体のホームレス人口は減少しているものの、シリコンバレーなど一部都市においては増加しており、いまだに大きな問題です。慈善活動としてホームレスの人々に食事を提供する団体なども多く存在しますが、市政がこの動きにストップをかけています。
Food-Sharing2014.pdf
(PDFファイル) http://nationalhomeless.org/wp-content/uploads/2014/10/Food-Sharing2014.pdf
More Cities Are Making It Illegal To Hand Out Food To The Homeless : The Salt : NPR
http://www.npr.org/blogs/thesalt/2014/10/22/357846415/more-cities-are-making-it-illegal-to-hand-out-food-to-the-homeless
ホームレスの支援を行うThe National Coalition for the Homeless(NCH)が発表した報告によると、2013年以降、21都市がホームレスに対する食べ物の提供を制限する目的の条例を可決し、可決されていないものの条例案が提出された都市は10都市に上っており、2010年と比べるとこれは47%の増加であるとのことです。
フロリダにあるフォートローダーデール市も条例が可決された都市の1つ。新しい条例によってフォートローダーデール市内でホームレスに食べ物を提供する場合、それぞれの提供場所が500フィート(約150メートル)以上離れている必要があり、さらに1ブロックにつき1箇所しか提供場所を設けてはいけないようになったとSun Sentinelが報じました。
by David Blackwell.
上記のような動きについて、NCHの責任者であるマイケル・ストゥープスさん「各都市は観光や経済成長を優先しなければならないと感じており、パブリックスペースで大々的に行われるような食べ物の提供を問題だと考えたのです」と語っており、条例がホームレス問題の深刻化とホームレスの犯罪化を助長するのではないかと懸念しています。条例によって表面的にホームレスを追いやることができても、「ホームレスが生まれる」という問題そのものの解決にはならないためです。
最近になって提出・可決されてきている条例には2つの傾向があります。1つが上記のようにパブリックスペースを使った食べ物の提供に関するもの、もう1つが食べ物の安全性についてです。後者の条例を定めているのがソルトレイク市で、食べ物を準備する人は許可制になりました。
また市政だけではなく、NIMBY(Not In My Back Yard/自分の裏庭以外なら)、つまり「施設の必要性は認めるが、自らの居住地域には建てないでくれ」という住民たちによる圧力も存在します。
by Lynne Hand
しかし利益の観点からホームレスに対する食べ物の提供に反対する人がいる一方で、別の視点で反対を行うのが、ホームレス問題について自治体とやりとりを行うロバート・マーブットさん。「路上で食べ物を提供する行為こそが彼らをホームレスにとどめている最悪な行為の1つ。ホームレスから抜け出すための回復プログラムから彼らを追いやる不毛な行為です」とマーブットさんは語りました。
マーブットさんが提案しているのが職業復帰サービスといった施設の近くでだけ食べ物の提供を行うという方法。その日の食べ物を求めるだけ、というホームレスたちを再び自立させることが目的です。
なお、路上ではなく空調のきいた室内で食べ物を振る舞うという選択肢も当然ありますが、必ずしもホームレスたちが室内での食事を求めているわけではなく、「最もよいのはホームレスたちがいる場所でサービスの提供を行うことです」とストゥープスさんは語っています。
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