手書き文字のフォントを売ってホームレスを支援する「HOMELESSFONTS」
仕事や住む場所を失い、やむを得なく路上で野宿生活を送らざるを得ないホームレスの増加は世界のさまざまな場所で社会問題化しています。あるホームレス支援団体は、そんなホームレスが助けを乞うために書いている「文字」を加工してフォントに変換、そして販売することで支援のための資金を得るというプロジェクト「HOMELESSFONTS(ホームレスフォント)」を行っています。
HOMELESSFONTS
http://www.homelessfonts.org/
「HOMELESSFONTS」では何が行われているのか、以下のムービーを見るとわかるようになっています。
HOMELESSFONTS on Vimeo
ダンボールに書いたメッセージを見せるホームレスの男性。「俺たちには、ときどき助けが必要な時がある」と書くのはフランシスコという名の男性。
「助けてください。お願いします」
「何でもいいんです。『おはよう』と言ってくれるだけでも」
「全てを失ったけれど、他の人を信じる気持ちだけは忘れていません」
そんなホームレスをサポートして生きるすべを手にさせるのが「HOMELESSFONTS」。スペイン・バルセロナに拠点を置く財団「 Arrels Foundation」が立ち上げたプロジェクトです。
「ダンボールに字を書いて物乞いをするのは気持ちのいいものじゃない。いい内容じゃないし、ましてや愛を語るものでもない。何か書くたびに気持ちが滅入ってしまう」
ひと言で表現するとすれば……
「街は恐ろしい」ということだ。
ひとりひとりが書く文字には個性があるもの。それは、多くの人が目を背けるホームレスが書く文字にも同じことが言えます。
「ストリートで食べ物をめぐんでもらうために書いていた文字が、彼らをそんな生活から抜け出させようとする」
「文字には個性が表れているものだ」
「私と同じ字を書く人は、この世にはいないわ」
「この字には流れがある。エネルギーにあふれてるんだ」
そんなホームレスが書く文字をフォントに変換するワークショップが開設されました。
「俺の文字には二通りの書き方がある。一つは他人に対して使う文字。そしてもう一つは俺だけの文字さ」
「俺だけの文字は、他人にはほとんど読めないものだがね」
「俺の字にはエネルギーがある。自由なんだ」
「僕の字は……優しさがある」
「ある娘が筆跡鑑定の視点で俺の字を見たんだが……あいつ俺の字を『狂人と天才が書く字ね』って言ったんだ」
「あいつはマエストロだな」
このようにしてワークショップで書かれた文字を、PCに取り込みます。
そして文字を拡大し、字の形にそってトレースしてデータ化。
そしてこの「A」の文字のように、フォント化されました。
データ化されたフォントは、誰でもPCにインストールして使ったり……
広告で使う文字に取り入れる企業も存在しています。
「このボトルに書かれているのは私の字なのよ」
「『自由』、それは何ものにも替えがたいもの」
「自由がないのなら、俺は何も要らない」
「俺が必要なのは『Rosa』。俺の母親」
「愛」
「希望」
「助けをさしのべる手……」
その取り組みが、Arrels Foundationが進めている「No-one sleeping on the street(誰もストリートで寝るものはいない)」の一環として進められるHOMELESSFONTSでした。
Arrels Foundationはホームレスをサポートして自立を手助けする団体。住む場所や食糧などを支給し、生きるために必要な仕事と生きがいを持つことを支援しています。
Arrels Fundació | Nobody sleeping on the street
http://www.arrelsfundacio.org/en/
HOMELESSFONTSのサイトでは、数々の「フォント作家」の作品がラインナップされています。
各人のページに進むと、これまでの生い立ちとフォントが表示されています。
フォントの価格は個人使用の場合で19ユーロ(約2600円)、商用利用の場合は290ユーロ(約4万円)となっていました。
売上から得られた利益は、ホームレスを支援する財団の運営資金に充てられることになっています。
このほかにも経済の面からホームレスを支援する試みとしては、一部300円程度の雑誌をホームレスが販売し、収入を得る国際的な取り組みのBig Issue(ビッグイシュー)などがあり、日本でもビッグイシュー日本版が刊行されています。
ビッグイシュー日本版|BIGISSUE JAPAN
http://www.bigissue.jp/
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