ハードウェア

ついに大台突破、クロック周波数1THzで動作するチップセットの開発に成功


従来の記録を大きく塗り替え、1テラヘルツ(1THz=1000GHz)という大台を超える周波数で動作するチップの開発が成功し、ギネスブックに世界記録として認定されたことが発表されました。

DARPA creates first 1THz computer chip, earns Guinness World Record | ExtremeTech
http://www.extremetech.com/extreme/193343-darpa-creates-first-1thz-computer-chip-earns-guinness-world-record!

動作周波数1.03THzという超高速で動作するチップを開発したのはアメリカ国防総省の機関であるDARPA(国防高等研究計画局)で、これは従来の記録である850GHz(0.85THz)を一気に上回る数値となっています。

チップセットの進化といえば、スーパーコンピューターに代表されるような超高速な演算を実現するものと捉えられることが多いのですが、DARPAが開発を進めてきたのは極めて短い波長の電波(ミリ波)を発生させる増幅素子。ミリ波を用いることで、軍事用に用いられるレーダーの解像度を向上させたり、電波に乗せて通信するデータ量を飛躍的に増加されるといったメリットが実現されるほか、すでに空港のセキュリティなどにも導入されているミリ波を使って全身を詳細にチェックできるミリ波スキャナーなどの性能を向上させたり、現在の主流である2.4GHz/5GHzの電波を使うWi-Fi通信をはるかに上回る速度での無線通信が可能になると考えられています。

By Wendy J. Bush

動作周波数が1THzともなると、わずか1秒の間にスイッチのオン/オフを1兆回も切り替えることになるので、これはもちろん「クロック周波数を上げてブン回すだけ」という単純な方法では実現不可能。DARPAが開発した技術はまだほとんど明らかにされていない状況ですが、ここにはノースロップ・グラマン社と共同で開発したCMOSプロセスを用いたモノリシックチップが投入されているものとみられ、チップの製造にはシリコンやガリウムを用いた素子よりも高速かつ高出力を実現しやすいリン化インジウムを用いたウエハーを用いるなどの、素材レベルからのブレークスルー技術が投入されていると考えられています。

以下の画像は、記録が破られた850GHzで操作する素子の図面。今回の1THz超えを実現した素子も、同様の構造になっていると予測されています。


ギネス記録更新を示す画像には新しい素子の一部を指すとみられる構造図が記載されていますが、いまのところ確認できるのはこれが限界レベルとのこと。


現在の常識を1000倍近くも上回る速度を達成したチップですが、これによって一般ユーザーが使うPCの速度が向上すると期待するのは時期尚早とのこと。今回は電波を発信する素子におけるブレークスルーであり、全体的なスピードアップのためにはさらに多くの部分での技術開発が求められます。さらに、供給電力の問題や発熱対策などをクリアする必要があると考えられるわけですが、一方では今後の進化に一定の道筋が見えたと考えられることも事実。今後もまだまだチップセットの進化は続いていきそうです。

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in ハードウェア,   サイエンス, Posted by darkhorse_log

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