取材

水島精二監督らが2D・3Dのアニメ制作システムの違いや技術面について語りまくった「楽園追放テクニカルミーティング」レポート


11月15日公開予定の劇場アニメ「楽園追放 -Expelled from Paradise-」のスタッフらが技術的な部分などを含めていろいろとしゃべりまくるイベント「楽園追放テクニカルミーティング」が5月上旬に行われたマチ★アソビ Vol.12の中で開催されました。

『楽園追放 -Expelled from Paradise-』テクニカルミーティング - マチ★アソビ vol.12 2014.05.03~05.05開催
http://www.machiasobi.com/events/rakuen.html

会場となったのはufotable CINEMA。


登壇したのは監督の水島精二さん、造形ディレクターの横川和政さん、プロデューサーの野口光一さん、チーフアニメーションプロデューサーの吉岡宏起さん。進行はアニメポータルサイトAniFav・編集キャップの前田久さんが務めました。


主人公・アンジェラのコスプレを紹介するなどして軽いオープニングトークが行われた後、4分間の映像を上映し、トークイベントがスタート。


水島精二さん(以下、水):
今見てもらったものは去年の9月ぐらいに完成した映像です。実はこれ、パイロット映像なんです。「楽園追放」という作品を作るにあたって、クオリティとスケジュール面でどれぐらいの作業をすることができるのか、僕とグラフィニカさんとがお互いに把握するために作ったものです。

吉岡宏起さん(以下、吉):
水島監督から「グラフィニカはどれぐらい作れるのだろうか」と試されて、一方、僕らも「水島さんとうまくやっていけるだろうか」というのを試したものです(笑)

水:
なにぶん半年以上前に作ったもので、その間にはみなさんご存じのように「蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-」や「シドニアの騎士」が出てきているという状況です。我々も日進月歩でクオリティを上げていかなければと作業しているので、スタッフは古いものをあまり外で見せるなというのですが、プロデューサー陣は4分もあるものなのでぜひ見せたいと言い、監督はその間で「また見せるの?」と怒られています(笑) 3月のイベント向けに作った映像もありますが、これをマチ★アソビ用に編集し直したものをあとで上映します。

横川和政さん(以下、横):
若干ブラッシュアップしたり、昨年夏の段階だと技術的にできなかったことができるようになっていたりしますので……。

水:
アニメーターのスキルもそうですし、モデルの組み方にも改善があったりして、技術を進化させつつフィルムを作っています。ということで、PVを流せると思うのでご覧下さい。


(マチ★アソビ用PVの上映)

水:
これが最終版ですね。モデルをちょっと手直しすることにより表情が作れるようになっていたりします。

吉:
ちょっとではなくかなりガッツリだったりしますね(笑)

横:
はい、非常に苦労しつつですね(笑)

水:
日々、我々も開発しながら作っているので、そういった苦労話と、現状のテレビアニメーションの話などをしていければと思っています。

前田久さん(以下、前):
では「楽園追放」テクニカルミーティング……テクニカルという名前はハードルが高いですけれど、進めていきます。まずは改めての自己紹介みたいな形からですが、水島精二監督です。


水:
東映アニメーションの野口プロデューサーから3DCGで作品を作ってみないかということでお声かけいただきました。

前:
ちなみに、監督が3DCGに興味を持たれたきっかけというのは?

水:
以前からあるものとしては考えていたので、全部それで作るのは面白いなと。あと、人よりも先に触れられるというのはいいなと思ったので、うまくいこうがいくまいがやっていこうと考えていました。

前:
続いてはプロデューサーの野口光一さん。

野口光一さん(以下、野):
もともとは映画のVFXをやっていたんですが、今回、プロデューサーをやることになりました。何をやるか考えたとき、神林長平トリビュートに収録されていた虚淵玄さんの短編を読んで面白いなと思い、じゃあ監督は誰にしようかなと考えて水島さんの名前が挙がってきた、という感じです。

水:
虚淵くんと東映さんでプロットのやりとりをしている中で、監督が決まらないと脚本が書けないと虚淵さんが言っていたと。

野:
そこでサンジゲン松浦さんに相談したら「水島さんがいいんじゃないか?」と言われまして。

水:
他にも何人かから「水島さんは3DCGに興味がある、理解がある」と推薦していただいたそうです。

野:
それでファミレスへ行って話をしたところ「やります!」と。

前:
次は造形ディレクターの横川さん。「造形ディレクター」というのはどういう役職なんですか?

横:
会社やプロジェクトによって立場はいろいろ変わったりしますが、僕のこのタイトルでの立場は「何でも屋」です。

吉:
アニメには作画設定とかありますけれど、その設定のまま影を入れることはできますが、3Dでやると絶対に違いが出てくるんです。前面を作って、横を作って、また前面に戻してみるとおかしな部分があったりする。それを調整するにはデザイン力がないとダメで、そこに造形ディレクターになれるかなれないかの差があります。

水:
「楽園追放」のキャラクターが生き生きと動くのは、彼がその点を理解して骨組みを作ってくれているからなんです。これはマジで「こんなに違うのか?」って思うぐらいで、俺が「あそこがあーでこーで」って言った後、1カ月ぐらい経ってみるときれいになっていたりするんですが、それは横川くんのところへ一端戻されて調整していたという話を聞くと、やっぱりセンスなんだなと思います。ツールを使う人間が用途に合わせて何が必要なのか、事前にわかっていると動かしやすいし表現しやすいものになるけれど、それは個人のスキルであって、ソフトがあれば誰でもできるということではないんです。各社でキーになる人というのは育ってきていて、それが力のある映像を作る大元になっているんです。

横:
ものすごく褒めていただいて、ハードルも上がっているのを感じます(笑)

水:
いやいや(笑)

横:
基本的にはキャラクターやメカなど、3D全般含む形状や質感、動かすためのコントロールツール周りも整備させていただいています。あとは質感設定だとか、細かいところだと、上から描いたりだとか……。

前:
上から描く?

水:
ツールを使って上からレタッチを入れたり、2Dのブラシワークみたいなところも自分でやってくれるんです。それは「やってくれ」と言われてやるのではなく、こだわりでやっちゃう(笑)

横:
アニメには「特効」という作業(メカの光沢を入れたりしてリアルな質感を出す)があって、専門の方に任せる部分なんですが、自分でやっちゃってるところもあります。

前:
ということは、手描きアニメでいうところの作画監督的な仕事をしつつ、演出・撮影・特効など絵作りに関わる仕事をマルチにやっている、と……。

水:
さらに、3Dアニメーターに近いことをやるんです。セルアニメーションは分業ですけど、3Dアニメーションだとツールがあるから、それを使うセンスがあれば最終的な作りたい絵に持っていくことができるんです。だから、撮影さんが絵の調子を作る部分がそんなになかったりします。PVの中でいうと、アクションシーンなどでにじんだようなフィルタをかけたりしてますが、その直前まではすべて3Dアニメーター側で質感を作ってくれています。

野:
テクニカルミーティングっぽい内容になったね。

前:
最後は吉岡さん、アニメーションプロデューサーという役職ですがこの作品ではどういうお仕事をされているんですか?

吉:
基本的には企画に関しては触らないんですが、その内容をふまえてどういう現場を構築していくか、「カラー」を考えつつやっていきます。会社の中でどういうものが強い、こういうところはこだわるというのがカラーだと思いますが、それをアピールしてどこまでやるか。あと、監督との相性というのも結構あります。結局のところ、現場と監督が楽しく仕事できないと絶対にいい作品はできないんです。水島監督とそれができるかどうかを見させてもらったら、めっちゃくちゃ仲良くなって、それこそ気持ちが悪いぐらいにくっついちゃって(笑)、うまくやっていると報告を受けているので、足りないところはスタッフを回しつつ、間を取り持つような感じのお仕事です。

水:
吉岡さんには、この作品をやるにあたって生産システムを作るというところで大きな役割を果たしていただきました。通常、アニメーターがレイアウトを切り、それを3D側で再構成する、いわばガイドを作るようなやり方がリスクが少ないと言われてきました。でも、3DCGアニメーターの実力がわからないし、絵作りの時点からベタ付きでモニター上で見てチェックしていくやり方でいいからやりたい、その方がスタッフも成長するし、ましてやグラフィニカならできるんじゃないですかと僕が主張したら、それに共感してくれて、システムを作らせてくれたんです。

吉:
3Dについてはまだまだわかってくれない監督もいて、個性の出し方や作品にどう持っていくかというところで、3D側としてはもっとうまく利用して欲しいというのがあるんです。でも、わかっていないのにチェックに入られると、お互いにストレスになってしまうだけなんです。水島さんと話し込んだら、この人ならわかってくれるんじゃないか?と思ったので、僕からも「やってください」とお願いしました。

水:
直近で放送されている3Dアニメーションでは2Dアニメーターが動きのラフを先に作る事はないんですが、以前はアニメーターが3Dに動きのラフを入れないことはまずなかったので、こういう決断をしてもらえたのはすごく大きかったです。3年ぐらいの間にみんな同じようなことになっていて、珍しい話ではなくなっちゃったけど(笑)

前:
ということで、本日のお品書きはこんな感じです。まずは「なぜ今、3DCG作品が増えているのか」、そして「『楽園追放』はどこを目指すのか」「『楽園追放』今、どんな感じ?」「『楽園追放』の見せ場はココだ!」、最後に「3DCGの未来は、そしてアニメの未来はどうなるの?」という話を聞いてみたいと思っています。


前:
まずは、なぜ今3DCGが増えているのか。昨今の作品をリストにしてみました。ここに出しているのでも全部ではないですが、最初は映画が多くて、2011年以降になるとフル3DCGが増えています。


水:
僕は「鋼の錬金術師」を作っているとき、鎧が動いているところは3Dのほうが労力かからないのではと思って、サンジゲンと組むことにしました。初めはアニメーターが原画で描いたものを3Dに当てはめたりしていて、後ろのモブはざっくり演出の説明をしてお任せでやってみたりしたんです。チェックしてみると、ドロップキックしているヤツがいたりして、それはさすがに使えなかったんですけど(笑)、「ああ、こういうことをやりたいアニメーターっているんだ」と思って興味を持つようになりました。それから、機動戦士ガンダム00のときには重たいものなんかは3Dでやろうと案を出し、全部これでできたら面白いなと思って劇場版をやったりしました。3D作品は3Dを理解している人間が監督をした方がいいという考え方もありますが、「楽園追放」に関しては、せっかくチャンスが巡ってきたのなら、尻込みしてやらないよりもやったほうがいいだろうと。

前:
まずはCGの現場の熱意、いわば昔の暴れん坊アニメーターみたいな(笑)、仕事の中の熱意のアピールがあって気持ちが動いた?

水:
そうですね、こういう人たちとであれば、セルアニメと同じってわけではないけれど、映像的にもお話としても見応えのあるものが作れるのではないかなと。実は、他に世に出ないパイロット映像を作ったりはしているんですが、現場と相性が合わずに全然負け負けの気分で完成させたこともあるんです。ディレクターとして望んでいるものに対しての答えは現場の考え方によって変わってくるので、そこはまだ怖いなというところはあります。でも、今回幸せだったのは、3Dだけどセルルックアニメーションで、作画の凄いアニメーションにいかに近づいていくかをモチベーションにしている若いスタッフというのがたくさんいてくれたことですね。

前:
3DCGでアニメーションに関わっていた皆さんは、こうして作品が増えていって、やることもできる中でどう感じてらっしゃったんですか?

吉:
現場を含めて、せっかくやるのであれば成功して欲しい、と。ライバルではあるけれど共存共栄というか、3DCGのアニメーションを育んでいきたいという思いはあります。ただ、ときどきどうしても沈没してしまう船も出てくるので、その時には本当にガックリ来ます。でも、一定の結果が徐々に出てくるようになって、それはシステム的にどう組めばいいのか、スタジオの理解や取り組み方を変化させてきたというところがあるし、それが絵に反映されるとお客さんも認めてくれるというのはあるんじゃないかなと思います。

横:
テレビアニメや遊技機、ゲームなどの仕事に取り組んでいて、周りの会社がどんどん先に行く中で、いつか確実にこういった仕事が来るだろうけれど、やったときにはしっかりできるという自信はありました。世には出せないものを作りつつも、技を培ってきましたから。

吉:
グラフィニカは後出しなので、1発目で成功しないとダメだったんです。なので、取り組む作品はすごく選びました。実は「楽園追放」をやる少し前に別の仕事も来ていて、少し進めていたんですが、心配なところがあったので「やります」という段階まで持っていけなかったんです。

水:
我々の実力で一番いい成果を出せるかどうかは、企画段階でちゃんと考えた方がロスが少ないので、そこをよく勉強できているので次に繋げたいと思いつつ日々やっています。最初、何の条件もなく3Dでやってくださいと野口さんが言うので、アンジェラの髪が長いのは大変だとか、パーツが食い込むのが大変だとか、技術的ないろんな課題が……。

野:
聖闘士星矢」の沙織も髪が長いと聞いていたので、後出しならいけるだろうなと(笑)

水:
最初はこちらも髪をばっさり切る予定だったんですが、そのシーンがなくなって(笑) でも、グラフィニカとお互いに手の内を明かして、どのぐらいできるか測りましょうと、その結果できたのが先ほどの映像です。業界的にいうと2Dアニメに追いつくことが目標で、やってるとその先に何ができるかとか、3Dでやったほうが面白いのは何かというのが見えてくるんです。単純に言えばカメラが自由になることは大きいことなので、それもモデルの問題や空間の問題を考えると、最初に空間設定をちゃんとコストを考えて組んでおくとプラスになるし、それを考えないとすごく大変です。

前:
コストが大変とは?

水:
3Dと2Dの一番大きな違いは、セルアニメであれば1カットだけ使う用の設定を作って、そこだけ特殊な設定下にするということができるんですが、3Dは箱庭を作っていくことになるので、カメラを自由に動かしたいと考えると、フルHDで見ても遜色ないモデルを、たとえ1カット用であっても作らなければいけないんです。これが積み重なっていくとえらいコストになるわけです。モデル数が多いから力を平均化しましょうと言ってもできないので、その分は人を足すか時間を足すかになるけれど、そうやると普通のセルアニメで考えているよりも莫大な金と時間がかかるし、さらにそれを管理しなければいけないことになります。

それに、これは俺のハートが強ければできるのかもしれないけれど、そうやって作ったカットを編集していると「やっぱいらないな」という部分が出てくるけれど、セルアニメでもやった人に「ごめんね」って言うのに、3Dだととても無理だって思います。


逆に、3Dじゃないけどアクションをどうできるかと工夫するとき、2Dアニメーションの疑似的な空間の作り方みたいなものの中で、アクションしているキャラだけは3Dというのはあって、「3Dモデルは使っているけれど2Dとのハイブリッド」みたいなところは進んでいます。それを印象づけたり表現したりするのは、やりとりの中で誰かが発明するだろうと。夢のある現場だと思います。若い子たちがひらめいてヘンなことを始めるんじゃないかなと。

ぼくらは年を取っているので、この要素を組み合わせるとこうなるというセルルックの考え方を念頭に置いて、そこに3Dのいいところを……と考えてここまで作っていますけど、この先はたぶんプロパーで「こういうの」というのを取り出す人が出てくる、そういう可能性を秘めたメディアだなと思います。セルは逆に湯浅政明さんみたいに、アニメーターの癖に特化していくものに関しては3Dで作り出すことはできないので、その方向に進むんじゃないかと思います。アメリカのカートゥーンとかそんな感じですよね。

前:
こうやって盛り上がっている現場の期待を一身背負っているのが横川さんですね。

水:
2Dアニメーションは長い年月かけて育ってきているので、わりとやり尽くしている感がありますよね。その中で、3Dを融合させたりして進化してきたけれど、次は3Dだけを取りだして、さらにその先を作る体制を構築できたらいいなと。現場に入ったとき、3Dの人たちが俺に新しいものを見せてくれるだろうと思ったけれど、一緒に作らなければ出てこないのは「あ、そうだよね」と思いました。

吉:
ただ、3Dはお金かかりますよね……。それぞれ最高スペックのPCを渡して、中には数十万円するソフトを入れて、もう本当大変で、スクリプト何個あるんだとか、どの機体に使うんだとか……。

前:
3DCGは安く上がるとか、楽に上がるという誤解があるんですよね。

水:
たぶん、動きも曲線入れると自動的に反映してくれるとか思われてたり、モーションキャプチャー使ったりもしていたけれど、今は手付けが多いんですよね。そういう意味では、アクションの表現は見ている方も2Dの優れたアクションを見てきているから、質感だけ近づけてもどうにもならない。それをどう進化させたかというと、フレーム単位でポーズを弄るという、手付けのアニメなんです。セルアニメと変わらないんですよ。そこまでできるアニメーターが揃ったというのが一番大きくて、アルペジオとかでも語られていると思いますが、それがあったからこそ、我々のようにセルを作っていた監督も3Dでいいなと思うようになったんです。

前:
「『楽園追放』はどこを目指すのか」ということで、手付けアニメでやるというお話がありましたが、横川さん。


横:
3Dに不慣れな監督だと、先ほどもあったように「3Dなんて一回作ったら使い回せばいい」と思われていることがあるんですが、1フレームずつ3Dアニメーターや造形担当がアニメとして気持ちよく見えるように、形や絵作りに手描きと同じぐらい手間をかけているという部分はご理解いただきたいです。

前:
1枚ずつの構図を整えつつ、動きも整えつつやっていらっしゃると。

横:
手描きのアニメで、顔を横に振り向かせる動きでも1フレームずつ形がよくよく見えるように調整したり、調整するために私や弊社の作画スタッフにアドバイスをもらったり、作画修正をしてもらって3Dで直したりだとか……。

水:
「1つのキャラクターモデルを作ればそれでいけるでしょ」ということではなくて、どの画角でどう映るかとかを考える必要があります。プログラム上でレンズを決めると、歪みが大きくなってしまったりするんです。2Dアニメであれば、一番キャラクターがかっこよく、かわいく見えるように、アニメーターがベストチョイスを描くんです。それは絵コンテを描いている僕らでも勝手な解釈をするものです。ところが、3Dはプログラムで成り立っている形状なのでウソをつかない分、なぜこうなる?みたいな顔になってしまうんです。以前は「これは3Dモデルだからおかしくない」と突っ張っていたところですが、今は「これはおかしいな」と思ったところは「この角度ならこのモデル」というものを用意してくれるので、ぱっと見でおかしいと思うようなところを減らす努力をやっています。

前:
CGで作ると物理的正確さはあるけど、映像として見てみると不自然さがあるので、そこを逐一見つけては直していくことになると。

水:
造形から直したりもしますし、2Dアニメーターから「もっとパースが効いていた方がいい」とアドバイスを受けて、手付けで直すこともあります。パイロットフィルムのときに作ったカットで金田パースでものすごいことになってるシーンがあって、爆笑しましたから。でも、それでも違和感はなくてかっこよくできていて、すごいことだなと。その時に「これ、変形させてるよね?絶対にモデルそのまんまじゃないよね?」って聞いたら「そうです」って言われたので、「いや、全然怒ってない、むしろ、やって!」と返しました。絵コンテで求めているものをさらにパワーアップさせているならよし、演出意図を踏まえて広げてくれるのは全然OKですと、そういうところから信頼関係を結んでいます。このときは「ああ、こういうスピリッツでできる人がこれだけ出てきたんだな」と感動しました。

前:
そういう調整は1つ1つケースバイケースなんですか?それとも、ある程度の法則はあるんでしょうか?

横:
ある程度の法則はあります。

吉:
バラバラにやっているとお金がいくらあっても足りないので(笑)

前:
作業工程として考えたとき、大変なことだなと思ったんですが。

吉:
基本のパイプラインと呼べるものをしっかり組んだ上で、ケースバイケースのものもありますが、「こういうケースの場合はこうしよう」といういくつかのパターンがあります。その上で、監督が出したい部分だとか、プロダクションとしてこれをやるにはコストがかかってしまいますよという部分もあるので、でも、なるべくいい作品にしたいのでうまい落としどころを見つけつつやっています。

水:
作業工程やコストの問題はスケジュールにも影響してきて、そうなると十分なプロモーションができなくなったりしますよね。こちらはみんなに見てもらいたくていいものを作っていて、この時期に完成させるということを目指しているのだから、「これってこんなにこだわることなんだろうか?」というのは出てきます。そういう時はディレクターさんたちと「俺はここをこうしたいんだけれど、どれぐらいかかる?」ということを相談します。「じゃあここは今のままで行こう、俺はもうちょっとブラッシュアップしたいと思っているけれど、見ているお客さんからすると変わらない部分だから」というのは長くやっているとわかってくるので、ここはしっかりやろうという部分とバランスを取ってやっています。そういった、わからないことを聞ける環境があって、理解が深まってきたからこそ疑問を出せたりするので、まずは3DCGアニメーションのことを理解していくということが大事だなと思いますね。

前:
作画の善し悪しが一昔前に比べると語られるようになりましたが、振り向きの時にどんな微調整をしているのかというのは、あまりに自然すぎて出てきませんが、アニメーターの方は無意識にやっていることなんですよね。

水:
本当にそうなんです。僕らの作品でも壁にぶち当たっているのは「影の表現」です。これがまた難しくて、立体的に正しいが故に、ほんのちょっとのライティングの角度違いでよくわからない影が出てくるんです。セルアニメが好きで細かいところが好きな人は気になるかもしれないけれど、業界内で問題だと感じている部分と、見ている人が「?」って思う部分はちょっと乖離しているという実感はあるので、じゃあ、それをどう埋めていくのか、ならしていくのか、それが3D表現の開発に繋がるんじゃないかと感じています。今放送されているニコロデオンの「ミュータントタートルズ」なんか、いかにローコストで全て3Dで作るかが追求されていて、コストと実際にできたフィルムのバランスを考えるとめちゃくちゃいいなって思います。日本のアニメって2Dでやっているとどうしても努力と根性でなんとかしがちなんですが、それはプロダクションとしてはヤバいですよね。

吉:
ヤバいけど、努力と根性でやるしかないじゃないですか(笑)

横:
最終的には努力と根性です(笑)

前:
最後の最後に努力と根性をつぎ込むためには、その前にシステムチックにできるところを増やしていかなければということですね。

横:
いかに作業を簡略化できるのか、効率よく回せるかというところはワークフローを作っていますね。

水:
本当にちょっと動かすだけでも歪みみたいなものが出てしまうんですよ。絵だと、口を動かしたら輪郭のこの部分を膨らませて……と、アニメーターがバランス良く描けるんですけど、3Dモデルで同じことをやるとすごく違和感が出てしまうので、僕が見て「ダメだっ!!」って怒る前に直したり整えたりということを3Dアニメーターや横川君がやってくれています(笑) それがわかったとき、「これって、つまるところアニメーターと同じくセンスなんだな」と。3Dも2Dも変わらない、いかにセンスのある人間を多く業界として育てていけるか、言葉は悪いけれど、生産性を考えて管理していけるか、いつでもその力を出せるようにしていけるか。その前の地ならしというのがすごく大事だなって思います。2Dアニメーションはその部分がどうしても経年劣化してしまっていて、アニメーターもすごく上手い人と全然描けない人に二極化してしまっています。大変なんです。制作は楽な方に流れるので、ヘタな人に原画を出してしまって大変な思いをしている演出家がいたりするわけです。

前:
お話がかなりアレな方向に……(笑)

水:
まぁまぁ、そうしたくはないので、プロダクションに頑張って欲しいなと思います。

前:
僕が壇上で語るのもなんですが、3DCGの現場では個人のスキルを磨くのと同時に、システムを作り上げていく試行錯誤を平行してやっているということですね。

吉:
顔を1つ作るにしても、水島監督がおっしゃったように作画だとなんとなくバランスを取れるんですが、そうできない部分があって。でも、そこで横川がそれに対してスクリプトを組んだりして、このモデルにはこういったパターンがあるから、このようにして下さいと配布したりしています。ところが、古いバージョンと新しいバージョンを持っている人が混在したりして……。バージョン5の1.7とか1.8とか、どんどん進化しているので。

水:
制作している間じゅうやっているよね。

横:
もういい加減止めようよって(笑)

水:
「前のバージョンだけれど、作り替える労力を考えるとこれでもOKを出せるレベルだから、このまま行こう」とゴーサインを出せれば、その分の力を他のところに回せるので、演出側にそういったことを判断するスキルが必要だなと思いました。今回は僕も京ちゃん(演出の京田知己さん)もよくしゃべるから(笑)、説明することを嫌がらないので良かったなと思います。意外とコミュニケーションが苦手な演出家っているんですよ。

前:
世界的な方でもいらっしゃいますもんね、「それなら自分で描いた方が早い!」って。

水:
その人は絶対3Dで作りたいとは言わない(笑) 僕もあまり絵が上手い方ではないけれど、誰というわけではなくて若い演出家の中には絵が描けないのに絵のことをぐちゃぐちゃ言って絵描きを怒らせてしまう人がいて……そういう人が草創期の3Dの現場に入ってきてかき回してしまうのはイヤだから、なるべく人を見て組ませないと危ないなと思います。

前:
話がどんどん広がっていくのでパワポを次にぺろっと進めてもらいます。楽園追放どんな感じですか、というところです。

水:
ちょうど今、後ろに絵が出てますけれども、先ほど言ったように「この角度ならこんな感じだとアンジェラの印象に近いし、可愛く見えますよ」というのをアニメーターさんが提示して、それを3Dに落とし込んで……というようなことをやっています。PVが70カットで、参考にしたのはそのうち5カットぐらいかな?


前:
3DCGって楽に思われているけれどこんなに手間がかかっているよという話がありましたが、作ってみて、3DCGはこういうところが手間かからずできるなとか、やりやすいなという部分はありましたか?

水:
一番良かったのは、実際にモデルを配置してレイアウトを決められるということですね。コンテ段階で「こうなるだろう」と思っていたものが違っていたこともあるけれど、絵コンテに近づけるのか、それとも演出意図に近づけるのかをアニメーターと一緒に作業していけたので。実写でいう監督とカメラマンの関係みたいなものですね。作画だと絵描きの上手・下手に左右されるけれど、実際に会話しながらベタ付きで作業できるというのは、セルアニメではあり得ないことですから。まさか、絵描きさんの背後に立って「あ、そこはそうじゃないんだけど」とは言えないじゃん(笑) 今回はそういうやり方でやろうと決めていたので、3Dアニメーターでも最初は絵コンテに近づけすぎて演出が破綻してしまってたりしたけれど、「なぜここはこういう絵を描いているのか」というのを説明すると、2度目からは「ここが大事なんだ」ということをわかってくれて、通しやすい絵が上がってくるんです。演出的な意図を伝授できるわけです。クリエイティビティを高めることになるから、やって良かったと思うし、大変だけれど楽しかったですよ。

前:
演出意図が明確にある人だと伝えやすいんですね。

水:
コミュニケーションが得意なタイプだとやりやすいです。ただ、そうじゃないタイプとか、長考型だと難しいです。どうするかを持って帰ってる間にみんな忘れちゃうので。

吉:
ハリウッドの作品みたいに時間と予算があればいいんですけれど、頑張って短期間で作らなければいけないとなると、監督の演出力に頼ることになるんです。

水:
日本だと最初から海外展開を視野に入れた企画というのは成立させづらいところがあるじゃないですか。「トランスフォーマー プライム」や「トロン:ライジング」を手がけただけあって、ポリゴン・ピクチュアズの「シドニアの騎士」は海外も考えているのではと僕は勝手に思ってますが。

野:
うちだと「キャプテンハーロック」とか「聖闘士星矢 LEGEND of SANCTUARY」は海外を狙って製作しましたよ。ただ、「クールジャパン」ですが、海外ではアニメはそんなに売れていないというところがあり、そうなると、そんなにお金をかけても売れないのであれば作れない、と……。

水:
でも、海外へ持っていくために作ろうとした2作品は、両方フォトリアルじゃないですか?星矢はそれでもマンガっぽいところはありますけど。

野:
2Dのフラットな絵は海外では売れないので、本当は立体視がいいんです。海外ではアニメは「子ども向け」であって、大人向けアニメというのは売れないんです。だから、フラットな絵ではなく立体にして子どもにもいけるような作品の方がイケるんです。

水:
東映は高いところを考えすぎていたりしない?普通にセルアニメーションで海外に持っていってヒットしているというものもあるけど、あれは違うのかなって。どこが「ヒット」というラインなんですか?

野:
まずはペイラインを目指します。東映動画の設立からして、白蛇伝は「ディズニーが流行っているから」と作ったもので、「トイストーリーが流行っているから」ということで3Dに投資して、キャプテンハーロックや楽園追放が生まれたんです。だから、そこで何とか3Dアニメーションと2Dアニメーションの両立をさせていきたいんですけどね。

水:
そういう意味では「楽園追放」は3Dアニメーションだけれど、2Dアニメーションに限りなく近いですよね。そのあたりが、このアニメーションのやりたいこととリンクしている。2Dアニメーションのスタッフを使いたいというのは、質感を近づけるというか、狙いに近づけたいというだけではなく、そういうプロジェクトにしたかったということで、かつ、そんな潤沢にお金を使わなくてもいけるのもありますよね。それは、モデル数を制限したり空間を制限したり、逆にシナリオ勝負で作り込めば、増やさないことを前提に書くことは優秀なシナリオライターであればできるじゃないですか。今回確信を持ったのは、3DCGで萌えアニメを作れるということです。まだまだ皆さんにお見せできていないところは多いですが、アンジェラめちゃくちゃカワイイですよ。「俺、萌えキャラ作れるんだ」って(笑) 虚淵君も同じことを言ってました。

前:
PVでもかなり来てますよ。

水:
それは釘宮さんの力も大きいですよ。

前:
僕、「くぎゅうううう」ってなりましたから。

水:
ようやく釘宮さんにかわいい女の子をやってもらえましたよ、その前はとかですから。釘宮さんの実力は以前から高く評価していて、これをやろうとなったとき、どうキャラ付けしていこうかと考える中で、ちょっとツンツンしていないといけない子なのでシナリオを読み込んでいたら勝手に釘宮さんの声で喋っちゃったんです(笑) 「あ、これは釘宮さんだ」と思って、虚淵君に「アンジェラに釘宮理恵はどうだろう」と聞いてみたら「いいっすねえ!」と。

(一同笑)

水:
あと、齋藤君のキャラクターデザイン自体も萌え的な記号が入っていて、それは立体的なウソが多いのと、すごく曲線が多くてぷにぷにやわらかい。それを表現にいくところまでたらしめたのがこの男です。彼自身がほっぺたの柔らかさとか全力でモデルを作ってくれたので、アニメーターが気をつけて動かすとめっちゃかわいいよね!それを、女性の新人アニメーターがやって上手かったりしてすごくびっくりする。

横:
はい、キャストが釘宮さんだと聞いて、心の中で「くぎゅう!くぎゅううう!」って言いながらやってました。

水:
ははは!そんなやつばっかりか!!

(一同大笑)

水:
でも、役者がクリエイターに与えるモチベーションって本当に大きくて、こちらとしても勝負をかけなければいけないフィルムというのはわかっているから、安心できる材料って欲しいわけです。それが、釘宮さんだったり、三木さんだったり、神谷くんだったりという、自分が信頼を置ける役者であって、あと音響監督が三間さんで音楽はNARASAKIだと決めて、そのあたりは野口さんに頑張ってもらいました。

野:
はい、もう100%聞きました。

前:
すばらしい。

水:
やべえ……みんな、お願いだから見て下さい(笑)

前:
では次に行きましょう、見せ場はココだというのをみなさんから力強くうかがいたいです。


水:
これはもう、全編が見せ場ですね。虚淵君も僕もオリジナルの映画は初で、使える尺の中で精一杯面白いものをと考えて頑張っております。わりと本編はストレートなテーマを語っているので、まずはお話というのが1つと、アクション&人物芝居もかなりいい感じです。

前:
そういえば女性のお客様も多いのに、僕らはアンジェラを推しすぎなのではないかと、今ふと思ったんですが。イケメン成分もありますよね?

水:
ディンゴいいですよ、ちょっとおっさん成分入ってますけど、三木眞一郎はやっぱりいい声だな、芝居もいいわぁって(笑) このキャラクターの持っている食えない感じとかニヒルなところとか考えると、頭の中で自然に聞こえてきたのが三木さんだったので、「三木さんだね」って言ってて。

前:
男性キャラとか、アクションでいうとメカ造形とか、こだわりのポイントは?

水:
メカもすごいですよ、変形……ウソ変形とか(笑) 齋藤君がメカデザインをしたんですけれど、あまり構造とかを考えない超見栄え重視タイプで、本人の中では変形すると思ったらしいんですが、立体を作ってくれた浅井真紀さんが「絶対無理」って模型を作って検証してくれたという。「この軸をココにやると、このパーツとぶつかる」って。

横:
僕の方でも「できるだろう」と思ってやってみたら「これは無理だ」と。

水:
そもそもアンジェラの入る場所がない(笑) 最初の設定だと大きさが足らない、そんな気はしていたけれどやっぱりダメだった。

横:
齋藤さんには伝えてますけれど、「この野郎、齋藤!」と言いながら(笑)修正をしています。

水:
途中から「トランスフォーマーでいいよ」と伝えてデザインに切り込み線が増えたりして「そんな簡単なものじゃなかった、これは無理無理!やっぱり河森さんはほんとスゲエ!」「柳瀬海老川はすごい」って(笑) その中で、本当に俺が2カットに分けていたところを野口さんが急に1カットにしたいと言い出して、「アップ用とロング用で2つモデル作ってるんですよ」「いや、1カットにできるんじゃない?」というやりとりがあって、東映のプロデューサーがそう言うから仕方がないと技術を投入して。

吉:
それが、アンジェラが「肩慣らしにはちょうどいいわね」と言っている一連の流れのところなんですが、できたときには本当に感動でした。

横:
肩慣らしにはちょうどよくなかったですよ。

(一同笑)

水:
あれは四徹とか言ってたよね……。本当、ありがとうございました!

野:
「CGだからああいうのはできますよね?」って(笑)

水:
コストとかも握ってるハズなのに、そのあたりを度外視で現場にそういう要求をするんですよ。

横:
デザイン面でもメカ周り、特にアーハン(アンジェラの乗っている機動外骨格スーツ)は齋藤さんのコンセプトデザインを崩さず、さらに3Dとして格好良く造形的にもディテール的にもこだわらせてもらっています。質感設計もやっているので、他の放送されているアニメでも、セルルックになるとコスト面で、端的に言えばセルに寄りきることで負担を抑えているところがあります。その中で、世界観まで表現したいということで、通常セルルックのアニメだとあり得ないぐらいにすべてのモデルに質感をつけています。

水:
アンジェラの服装のテカテカ感とか手にくっついてるパーツとか、当初は金属だということでデザインされていたけど、金属だと動かないことがわかって、途中からやわらかいパーツだということになって「なんだと!?」って(笑) 作画かといい感じにできちゃうけど、3Dだとモデルの作り方から質感のことを考えて、ラバーとゴムだと質感が一緒になるので変えたりしていろいろやってくれた結果、あんなすごいことになりました。

前:
そんな流れで大きな話に繋ぎましょうか。「3DCGの未来は、そしてアニメの未来はどうなるの?」とマチ★アソビということで大きなテーマにしましたが、まずは「楽園追放」の今後の展開からおうかがいします。


野:
できてないのにこんなに喋ってしまって(笑)、できてない、できてないと思いつつ……。

水:
作っているところをみんなに伝えてエンタメっぽくしたいと言ったのはあなたですよ!(笑)

吉:
万が一延期になったら「あいつらなんだったんだ?」って言われちゃいますよ。

前:
そんな怖い話しないでくださいよー。

(一同笑)

前:
イベントとかメディア展開とか、今後予定されているんですか?

野:
完成初日は考えていて、もう少しで発表します。3つぐらいは予定しているので、ぜひその時は来ていただきたいなと思います。秋のマチ★アソビでは、完成したものを持ってきて見てもらえるといいですね。

水:
11月15日には絶対に間に合わせますから、当たり前ですけど。……こんなこと力強く言ってどうするんだろう、いま自分で言って恥ずかしかった。

(一同笑)

前:
絶賛製作進行中なわけですが、「楽園追放」を作った上で、みなさんが3DCGの作り手として目指すところはどこですか?

水:
そこまででかいことは考えてなかったな……でも、さっき言ったミュータントタートルズみたいに、空間全てが3Dで構築されているような、実写と違ったアニメーションの質感の作品を、テレビシリーズで1本作ってみたいというのはありますね。僕は自分のことを映画よりもテレビ向きだと思っているので、テレビアニメーションを作りたいなと。


水:
あと、この場で言っておきたいこととして、「3Dアニメが2Dのアニメーションを駆逐する」みたいなことを言っている人たちがいますが、あり得ないと思います。なぜなら、さっき言ったように両方が向いている表現があるので、それを活かして個別に進化していくだろうし、それを合わせたハイブリッドも1つの方法としてあるからです。3Dのアニメ制作本数が増えると、全体の本数が変わらないと2Dの本数は減ることになるけれど、それによってちゃんとした人材を投入して今の濫造状態から抜け出すのが一番きれいだと僕は思っているので、本数に関しては発注するメーカーや業界全体で考えていくことで、両方がいいものになるんじゃないかなという展望があります。今回やってみてわかったんですが、作画アニメはなくならないです。

前:
序盤にもありましたね、湯浅さんとかのスーパーアニメーションはなくならない。

水:
そこまでスーパーじゃなくても、今のテレビアニメーションを支えているスタッフたち、僕と一緒にやってきた人たちや若い子たち、志高くていい絵を描く人たちの力は消えない。それは過去のライブラリの影響を受けて出てくるから。3Dアニメーターの中にもそういうスピリットを持った人たちが出てきているけれど、結局それは表現するやり方が変わってきているので、両立すると思っています。

吉:
今回の作品もそうですが、私が考えているのは野口さんが仰ったように、海外でどういうものが売れるのかというのは大事で、日本に海外から車が輸入されたとき、そのままではなく自分たちが使いやすいように改良して日本車が生まれて、それを逆に輸出したものがまた海外で売れていたりするわけです。アニメもそうあるべきだと思っていて、アニメーションを真剣にやっている会社と共に、アニメーションの日本の基軸を作っていきたいなと考えています。

横:
3Dアニメが大好きでずっと見て育ってきていますから、たまにアニメはイヤだなと思うときもありますが、結局はアニメに戻ってくる。今回、劇場版をやっていますが、次はテレビシリーズで劇場版のクオリティを目指したいなという願望があります。

水:
システムを構築してロスなくできれば可能だなという実感はありますね。

野:
世界に向けてやらなきゃいけないのは絶対ですが、最初に虚淵さんと「10年、20年残る作品を作りましょう」ということを話していて、ワンオフはしないということを監督にも伝えました。例に出したのは今敏監督のPERFECT BLUEだったんですが、ああいう規模で作りたい、作るものをやりましょうということです。「10年、20年残るものを」というのはテーマとしてこれからも作っていきたいと思いますので、第1弾として11月15日に格好いい形で「楽園追放」をお見せしたいなと。

こうして全テーマを語り終えた後は、各種グッズをかけてのジャンケン大会が行われました。


前:
最後に一言ずついただきたいと思います。では吉岡さんから。

吉:
11月15日に間に合わせると言ってますが、現場は大変なことになっています(笑) とはいえ、この場でお約束したからには完成させますので、ぜひ楽しみにして下さい。よろしくお願いします。

野:
僕が着ているシャツは草野さん(グラフィックデザイン担当)がデザインしてくれたもので、ぜひ夏コミで売りたいなと考えています。コミケをお楽しみにということで。

横:
3Dアニメーター、モデラー、あと作画スタッフやデザイン部など、編集から撮影まで全部グラフィニカやっていて、グラフィニカでないとできない作品ができると思いますので、11月15日を楽しみにしていただければと思います。

水:
ビデオ編集も含めて一本化された制作ラインの中で作れていて、一丸となって作業してきてくれた人たちもたくさんいる現場なので、いいものが作れるんじゃないかなと思います。11月15日は楽しみにしていただいて……あと、野口さんの「なんでも作ってみようコーナー」でアンジェラのコスプレもそうですが、このTシャツをはじめ、他ではやらないようなものを作るのは今後も続けていくと思うので、面白がってくれると嬉しいです。すべてのことを皆さんに楽しんでいただけるように頑張っていきますので、よろしくお願いします。

前:
以上、長い時間でしたが、本日のイベントにお付き合いいただきありがとうございました。


この「テクニカルミーティング」が行われたのち、6月にアフレコが完了。7月には新規ビジュアルと、さらなる予告編が公開されています。

『楽園追放 -Expelled from Paradise-』劇場予告編 (30秒) - YouTube


7月27日に幕張メッセで開催されるワンダーフェスティバル 2014[夏]では、ニトロプラスブースにてヒロインであるアンジェラ・バルザックの等身大フィギュアが展示されるほか、告知アイテムの配布が行われることになっています。

・追記
当日のニトロプラスブースに展示されたアンジェラの様子はこんな感じでした。


手を触れるのは禁止。


虚淵さんも太鼓判を押す触り心地の良さだということなので、触れられないのが非常に残念。


お尻側はこんな感じです。


映画公開までに、またどこかのイベントで見る機会があるかもしれません。

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in 取材,   動画,   映画,   アニメ, Posted by logc_nt

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