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インタビュー

「GODZILLA 決戦機動増殖都市」静野孔文監督&瀬下寛之監督インタビュー、物語を信じてもらうため制作にこだわり抜く


2018年5月18日(金)にアニメ映画「GODZILLA」三部作の第二章である「GODZILLA 決戦機動増殖都市」が公開となりました。第一章で、地球の生態系の支配者となったゴジラと一度戦った人類は、再びゴジラに戦いを挑むために、人類最後の希望=メカゴジラの力を借りることになります。

「GODZILLA 怪獣惑星」公開時に瀬下寛之監督にインタビューを行いましたが、今回はもう1人の監督である静野孔文監督にも加わってもらい、GODZILLAについて、そして監督たちについて、いろいろな話をうかがってきました。

<全三部作:第二章>アニメーション映画『GODZILLA 決戦機動増殖都市』OFFICIAL SITE
http://godzilla-anime.com/


GIGAZINE(以下G):
インタビューをするにあたって前作『GODZILLA 怪獣惑星』、そして本作『GODZILLA 決戦機動増殖都市』のプレビュー版を拝見しました。作業中のバージョンということで、録った声の合間に「ここあとで録る」「録り直し」といった指示が入っている部分がありました。本作はプレスコで行われていますが、プレスコのあと、さらに「やはりこういうセリフが必要だ」という追加は、どの段階で判断するのでしょうか。

瀬下寛之監督(以下、瀬下):
そのプレビュー版と比較すると、ラストシーン含めて変更点が多くあるので、映画館で見たら驚くと思いますよ(笑) 「録り直し」という指示に若干誤解が生じてしまうので補足します。「プレスコをするとアフレコはしなくてもいい」というわけではなくて、リアクションやアドリブ、特に展開が目まぐるしいアクションシーンは、アフレコで行う前提で元々進めています。つまりプレスコのあとのアフレコというのは、基本的にスケジュールの中にセットで入れてあるんです。

G:
なるほど。アフレコはどのタイミングでやることになるのですか?

瀬下:
編集作業が一通り終わってです。ただ、アニメーション映画「GODZILLA」は、やはり複雑な群像劇なこともあって、いろいろと「もうちょっとこうしたいな」っていうことがありましたから(笑)、ああやって指示が多めなんですね

G:
こういう展開にしたいから、ここには修正や追加を入れるべきだろう、という感じでしょうか。

瀬下:
開発の初期段階、もう3年以上前になりますが、静野さんが「とにかく人間ドラマの魅力を出したい。主人公であるハルオの激動の感情をカメラがずっと追いかける作品にしたい」とおっしゃったんです。実際、スピード感溢れる戦闘シーンの真っ最中に、ハルオと、彼をとりまく多数の登場人物たちの、群像のバランスを調整するのはとても難しい。それを編集で作り込んで、丁寧に感情を拾っていく。僕は、そんな静野さんの怒濤のカッティングが大好きです。


G:
怒濤のカッティング(笑)

瀬下:
「怒濤」ですよ。とにかく凄い。バージョンを重ねるごとに、みるみると人間ドラマの深みが増していく。この「人間ドラマが押し出されていく」感じの中で、「こんなセリフ欲しい」「このセリフ、ちょっと変えたい」が次々と……。

(一同笑)

G:
「ここにセリフを入れたい」というのは、2人で作業をしつつ話をするのですか?

静野孔文監督(以下、静野):
編集の時にしますね。

瀬下:
いやいや、静野さんがガンガンにアイデア出します。僕はたまに(笑)

G:
静野監督がガンガン言うほうなんですか?

静野:
ガンガン相談。

(一同笑)

瀬下:
もうね、本当に静野さんの編集はいいんですよ。編集風景を取材してほしいくらい。

G:
変更点は編集しながらパッと思いつく感じなんでしょうか。

静野:
まずは、編集の前に「どうしたらより面白く、盛り上がり、元々のシナリオの良さを崩さず展開できるか」っていう編集の構成を瀬下さんに軽く揉んでもらって。そこから自分のほうで「こういうのはどうでしょうか」って提案して、瀬下さんからも意見が出てきてぶつけ合う。「このセリフがあったらより盛り上がるね」みたいな感じですね。

左:静野孔文監督、右:瀬下寛之監督


G:
2人で掛け合いをしつつ進めていくような感じですね。

静野:
瀬下さんはすごく信頼できる監督なので、たとえば自分がちょこっとトイレ行きたい時に「すいません、ちょっと」って抜けても、瀬下さんにずっとやってもらえる(笑)

瀬下:
僕からすると、静野さんに預けておくと「僕が好きな編集」に仕上がっている……というか、僕がイメージした編集を上回ってきますね(笑)

G:
期待以上のものが仕上がってくると。

瀬下:
本当にリスペクトしています。だから、やっていて楽しいです。楽しいということでいうと、虚淵さんと仕事をするのも楽しいです。虚淵さんからアイデアが出るたびに、僕ら、まずびっくりしましたもん。「え!?……あの人、そんなことになっちゃうの!?」みたいな。

(一同笑)

瀬下:
セリフの面でも「虚淵節」といいますか、絶妙な言い回しの魅力でぐいぐい引っ張っていく。

静野:
そうですね。

瀬下:
僕は本当に、虚淵さん、静野さんとやってて、楽しいです。

G:
静野監督が脚本をもらって読んだ時の印象はいかがでしたか?

静野:
第一章の最後では「ここまでやってきたのに……!」って(笑)

G:
(笑)

静野:
第二章では「次はメカゴジラ出るのかな」と思っていたら「えっ、○○なの?もっと○○なの?」と。


瀬下:
僕らがこうなるだろうと予想していたものをはるかに超えた脚本が届くんです(笑)

G:
(笑) その、予想を超えた脚本を読んだ上で、作品を作らなければいけないわけですが……。

瀬下:
僕の場合、映画は脚本、つまりお話が8割だと思ってます。

G:
8割ですか。

瀬下:
残り2割を、絵と音が半分ずつ。やはりお話、脚本が最重要かと。

G:
「決戦機動増殖都市」は3部作の真ん中ですが、第一章の「怪獣惑星」を作った経験が生きた部分はありますか?

静野:
現場の方たちの作業スピードが非常に上がったと感じました。「次の映像を見られるまでに、これぐらいかかるかな」と予想したスケジュールの、倍ぐらいの速度で次が上がってきて。

G:
倍!? すごく早くないですか?

瀬下:
CGの場合、同じ世界観なら、熟練するほど早く良くなっていきます。だから「怪獣惑星」よりもキャラクターたちの動きが良くなったりしてます。

G:
東映アニメーションの公式サイト内にある「最新のCGアニメの現場情報サイト:EE.jp」で瀬下監督がインタビューを受けておられて、「CGには、絵が崩れにくいとか、作れば作るほど熟練していくとか、データがライブラリ化され作るほどにコスト効率が向上するなど、優れた利便性があります。」とおっしゃっていました。その関連で、今回の「GODZILLA」の場合、データがライブラリ化されることによるコストの効率化は実現できているということでしょうか。

瀬下:
効率化については、かなり大きいと思います。同じ世界観なら、作るほどに大道具、小道具、セット、キャラクターと様々な物が畜積しますから。逆に言えば、CGの場合、最初の「仕込み」は大変です。

G:
アセットを作るということですね。「怪獣惑星」公開時にお話をうかがいましたが、他作品と比較するとどれぐらい大変なものですか?

瀬下:
うーん……筆舌に尽くしがたいですね……(笑)

静野:
(笑)

G:
筆舌に尽くしがたい(笑) 静野監督から見て、いかがでしたか?

静野:
僕にはCGの現場のキャリアというのものがあまりないので比べようがないですが、「ゴジラ」というタイトルの存在の大きさであったり、作中で動かさなければならないものが非常に大きなものや近未来の兵器だったりして、爆発や爆風、岩の転がり方などが実際に体験できるレベルを越えているという点で、アニメーターの方たちは大変苦労されているんじゃないかと思います。


G:
「CGの現場のキャリアがない」というところで、ちょっと伺いたいのですが、AnimeJapan 2017のセミナーステージに登壇された際のレポートで、「GONZOを中心として手描きとCGアニメーションのミックスが流行し始めていた頃,静野監督は『CGを使えば,自分でもすぐにアニメの監督になれるのではないか?』と閃いた。そして,それまでほとんどPCに触れたことがなかったというが,PCと3Dソフトを一気に購入。1週間ほどでその使い方を学ぶと,翌週には『自分があらゆる作業を全部やる』ことを前提とした3DCGアニメの企画書を会社に提出。それを見た上司は『本当にお前が全部やれるんだったら,やってみろ』ということで企画にGOサインが出て,かくして静野監督は初めて『アニメの監督』となったのである。」と、すごいことがさらっと書いてあるのを見かけました。どうやって、3DCGソフトを1週間で使えるレベルにまでたどり着いたのですか?

静野:
いやー(笑)、まあ……普通に、ですね。

G:
普通に!(笑)

静野:
まず、PCすら持っていなかったんです。

G:
えっ、そこからスタートですか……!?

静野:
CPUがまだ500MHzぐらいのiMacを使っていて、当時、同じ会社にいたメカデザイナーの小林誠さんからSTRATAのバージョン1.75だったかを紹介してもらって。あと、After EffectsやPhotoshopも用意して、「こうやってやるんだ」と学んでいきました。

瀬下:
それはGONZOさんにいたころですか?

静野:
フェニックス・エンタテインメントで「ジャイアントロボ THE ANIMATION ~地球が静止する日~」というOVAを制作していたころですね。

G:
なるほど、その間に3DCGのもろもろを一挙に勉強したと。ちょっとゴジラから離れてしまったついでに、同じ講演の中でアメリカにいたころの話として「『大学がホームステイ先を用意してくれて,行けばホストファミリーが世話をしてくれた』『アメリカでも大学には行かず,ラスベガスに行ったりしていた』らしい」というエピソードが出ていて興味を持ったのですが、ラスベガスでは何をしていたんですか?

静野:
ラスベガス……あの当時……そんな話ここでは言えないですよ(笑)

G:
せっかくなので、直接伺ってみようかと思いまして。

静野:
グレイハウンドのバスでラスベガスへ行って、宿も取らずにカジノへ行っていました。遊んでいるようなそぶりをしていると、食べ物も飲み物も持ってきてくれました。あと、ザ・ミラージュのショーとか、無料で見られるイベントがあるので、そういうのを見て感動していました。

瀬下:
1989年とか、90年ごろですかね。

静野:
高校を卒業する前に行ったので、17歳~18歳ぐらい。今45歳だから、ほぼ30年前ですね。

G:
なぜこんな質問をしたのかというと、日本のアニメ監督というと、アニメーターや制作として作品数を重ねて監督になったという方が多い中で、静野監督のキャリアはやや異色だったからなんです。

静野:
キャリアという点では瀬下さんも相当変ですよ。


(一同笑)

G:
瀬下監督はさきほど出したEE.jpなど、多くのインタビューに答えておられるので、どういった経緯を経てこうして「GODZILLA」の監督をしておられるのかがわかるのですが、静野監督は「名探偵コナン」劇場版の監督などもされているのに、インタビューに出ておられる数が瀬下監督よりもかなり少なくて、秘密の部分が多いなと。

瀬下:
秘密(笑)……僕の場合は、ずっとCGやビジュアルエフェクトをしてきて、今年で30年目です。基本はCGです。ですから、実は手描きアニメのことは未だにほとんど知りません。ただ、「シドニアの騎士」以来、アニメ業界の方と交流してみて思ったのは、静野さんは僕の印象では「アニメ業界の方」の感じがしません。

G:
「業界の方ではない」とはまた、なぜですか?

瀬下:
むしろ、「僕と同じ業界にいたんじゃないかな?」って(笑)、そのくらい、ライフスタイルとか思想、いわばノリが近いです。

G:
(笑) 瀬下さんと相通じるところがいっぱいあったと。

瀬下:
「シドニアの騎士」から一緒に仕事をして、「どうして、いきなりこんなに話がしやすくて、すごく似たフィーリングで作品を作ることができるのか」と当時は不思議でした。今は、静野さんの視点や発想、センスの背景に、先ほども出た「グレイハウンドでベガスまで行った」話などで、すごく納得してます。

G:
ということで静野監督のお話にがっつりと入ってしまいましたが、再び「GODZILLA」に関連する質問に戻りたいと思います。今はなくなってしまった「anisomnia」によるインタビューが一部、キャラペディアに引用されていて残っていたのですが、この中で、静野監督の「制作現場のスタッフはみんなPPI(ポリゴン・ピクチュアズ)さんの社員なので、ちゃんと仕事をこなしてスケジュールを守ってくれる。そういうシステムが一番の衝撃でしたね」という言葉を受けて、瀬下監督が「我々は要するに生産工場として確立したシステムを作り上げていきたい」と答え、静野監督が「今まさにそれができているのを実感していますね」と付け加えた、というやりとりがありました。今回、『GODZILLA 決戦機動増殖都市』の制作でも、このシステムがしっかり動いているからこそ、素晴らしい作品が生み出されているということでしょうか。

瀬下:
そうですね。システマティックであることは大きな要因だと思います。CGの場合、生産現場の各工程にスーパーバイザーという主任がいて、工程を仕切っています。ディレクターが「What」、つまり「何を作るか」を示すのに対して、スーパーバイザーは「How」、つまり「どうやって作るのか」を示すという役割分担です。建築に置き換えるなら、ディレクターは建築士、スーパーバイザーは現場監督です。建築士はデザイン、つまり設計を行いますが、自ら現場へ行ってトンカチを持ち釘を打つことはありません。現場では様々な職域の方々……左官屋さん、水道屋さん、ガス屋さんなど、工程によっていろいろな人が出入りし、彼らを現場監督が切り盛りしています。そのようにCGの現場を仕切ってくれる方のことを、僕らは「CGスーパーバイザー」と呼んでいます。


G:
なるほど、「監督・ディレクター」と「CGスーパーバイザー」の違いはそういう形なんですね。瀬下さんは今年でCG畑に身を置いて30年目というお話でしたが、作業のプロセスは30年で大きく変わりましたか?それとも、プロセス自体はそれほど変わらないものですか?

瀬下:
すごく変わりましたし、これからも変わっていくと思います。端的に大きな変化の一例を挙げるならば、「分業のしかた」が急速に変化していくと思います。今までなら10個に分けていたものを、3つぐらいにまとめる感じですね。

G:
細かく分けるのではなく、ある程度大きく分けるということですね。なぜそういった流れになったんでしょうか。

瀬下:
ソフトウェアやハードウェア環境と、やはり手法の進化が大きいです。

G:
それは効率化やクオリティアップという点で、ですか?

瀬下:
そうですね。まさに効率と効果のバランスですね。実は、この「GODZILLA」はまさに「転換期」を感じた仕事です。非常に物量のある作品ですので、人海戦術になりがちですが、関係者が増えるほど、意志統一が難しくなるという問題も増大します。

G:
コミュニケーションが難しい、ということでしょうか。

瀬下:
そうです。「ここはこういう設定で作ってね」「こういう方針で作ってね」と統一することは、当たり前のようでいて、実はあいかわらず難しいんです。個々はそれぞれやる気もあり、スキルもある素晴らしいアーティストたちが揃っていても、です……。

G:
「コミュニケーションコスト」というやつですね。組織が大きくなればなるほど、どんどんコストもかかっていくと。

瀬下:
「GODZILLA」は世界観が壮大で、キャラクターもたくさん出てきます。3部作で、かつ3作それぞれにいろんな伏線があり、複雑に絡み合うという大規模な作品なので、これを単純な人海戦術でやるべきなのかどうか、というのはまさに考えさせられました。


G:
「GODZILLA」の場合、そういった問題をクリアするための方策が何かあったのでしょうか。

瀬下:
CGの大量生産に関しての豊富な経験があるポリゴン・ピクチュアズだからこそ、この安定感で作れている、というところですかね。これ以上は、ただ人数を増やしたからといって、クオリティや速度が上がらないある種の飽和点に来ているかもしれません。

G:
限界の極みまで来ている。

瀬下:
それは正直感じてます。

G:
静野監督は、そういった空気は端から見ていてわかるものなのでしょうか。

静野:
僕はその会社のスタイルに自分を合わせていき、一番得意な方法で作業をしてもらった方が作品はよくなると思うので、基本的に制作現場の工程には口を挟みません。決められたスケジュール通りに各セクションから上がってきたものを見せてもらうという、それだけです。

G:
まさに「監督」に徹しておられるんですね。あるインタビューで、上がってきた絵コンテを修正していたら「それは描いた人に戻さなければダメでしょう」と言われたので驚いたという話がありましたが、手描きアニメとCGアニメの異なる点だといえそうですね。

静野:
「シドニアの騎士」のときの話ですね。作画のアニメーションの時には、上がってきた絵コンテを監修して直すのは監督の仕事だったし、「監督以外は直せないし、直さない」というのが暗黙のルールでした。でも、ポリゴン・ピクチュアズさんだと「監督が見てだめなんだったら、絵コンテを描いた人が直しをする」と。これは「確かにその通りだ」と思いました。今、手描きアニメの方では絵コンテをきっちり描ける人が減っているんです。


G:
ええー……。

静野:
「絵コンテの描き方」がわかっていない人だと、「これはダメです」と戻したとしても、いいものは上がってこないですよね……。

瀬下:
これはちょっと、ドキドキする話になってきてますね……(笑)

静野:
そういう点では、ポリゴン・ピクチュアズさんは「アニメーションというのはそういうシステムで作られてるんですね。我が社はこうしましょう」ということで作業効率を上げるための工夫をしてくれて、手描きアニメの業界ではできていない部分を、いち早くやってくれているという感じがあります。

瀬下:
ポリゴン・ピクチュアズではプリプロ、いわゆるプレビズに力を入れています。たとえば家を建てるときに、設計図面だけ見せられて「こんな感じです」と言われてもちょっと困りますよね。具体的にどんな形になるのか模型で見せて欲しいわけです。壁紙の色や材質は「想像してよ」ではなく、サンプルを見せて欲しい。事前の情報量が多ければ多いほど、プランニングのお金や手間ひま、時間はかかりますが、将来は担保され、作るときの迷いは少なくなります。その「迷い」が少ない状態での生産力においては、ポリゴン・ピクチュアズはCGアニメ業界で日本最高だと思っています。

G:
おお……。

瀬下:
ただ難しいのは、例えば「シドニアの騎士」の時には漫画の原作があって、世界観のベースとしてふんだんに参照できたんですけど、「GODZILLA」は完全にオリジナルだったということです。そういう時って、作品を作りながらお話、世界観、スタイルなど、様々な迷いが生じるんですよね。

G:
虚淵さん、静野さん、瀬下さんが組んでいても、迷いは出ますか。

瀬下:
出ます(笑)。どんなにプランニングで詰めていたとしても不足分が出てきたり、「もっとこうだよね」というのが出てきた時が大変で……。大量生産でガンガン作っていく時のスピードと品質の安定性という点では、ポリゴン・ピクチュアズは日本でも最高クラスです。ただ、「ちょっとこうしたい」となったとき、この大量生産規模の大きさがあだになります。いわば、大きなトラックほどブレーキをかけてもすぐには止まれないし、ハンドルを軽快に切ることができないのは当然で。そういう大変さは常にありました。

G:
プリプロダクション部分をしっかりやっていると、そのあたりで修正は効きやすくなるのでしょうか。

瀬下:
そこはスケジュールや予算全体とのバランス問題ですかね。制作期間はハリウッド作品などからすれば相当限られていることもあり、プレビズに十分な時間をかけられないことも多いですから。

G:
「GODZILLA」の場合、プレビズにはどれぐらい時間をかけたのですか?

瀬下:
この3年半のうち、1年半ぐらいでしょうか。やはり、オリジナルで、おまけにアニメで(笑)「ゴジラ」というのが難しかったです。虚淵さん、静野さんという素晴らしいクリエイターに参加していただいていますが、東宝さんにとっても、まさに看板キャラクターですから。


G:
ゴジラを、アニメ映画で、しかも3部作で、ですもんね……。

瀬下:
ですよ(笑)。とてつもなく高いハードルだったかと。

G:
最後に、再びEE.jpでのインタビューの瀬下監督の言葉からお伺いしたいのですが、「演劇用語で“不信の停止を破る”という概念があります。アニメでもマンガでも実写でも、『この主人公はこんなことは言わないでしょ』とか『この人物はこんな行動しないでしょ』といった事例に出くわしたことは皆さん経験あると思います。作品を楽しんでいる時、そういう風に醒めたくはないですよね。『この主人公はこう喋り、こう振る舞うはず』という説得力を持った世界観を限界まで追求して、作品の伝達力や没入感・臨場感を高めたいだけなんです」という事が書いてありまして。

瀬下:
そんなことを言ってましたか(笑)

G:
今回の「GODZILLA」において、そういった「世界観を限界まで追求した部分」というのはどこになるのでしょうか。

瀬下:
気まずいですね(笑)

G:
気まずいですか(笑)

瀬下:
「発言には気をつけよう」と思いました。

(一同笑)

瀬下:
「これ、嘘だ」と思ってしまったら、舞台でも映画でも、その信じられなくなった瞬間から乗れなくなってしまう。お話の世界観に入っていけなくなってしまう。恐怖映画でも、例えば血がどう見ても血に見えないとか、そういうのが見えた瞬間、「ただの作り物じゃん」と、お客さんはしらけてしまうんです、だから、物語に出てくるモノにはこだわっています。「物で語る」からこそ物語ですからね。「古びた一軒家」と言われて、出てきたのが作って間もないセットだったら「ピカピカじゃん」ってなりますから。

G:
物語を外れてツッコむしかないですね(笑)

瀬下:
なので、「GODZILLA」でも1つ1つの物、大小道具……宇宙服にしても「ずっと漂流してたんだったら、新品のようにピカピカではなく傷だらけだろう」とか、あらゆるものが物語の一貫性の中で説得力を維持できるかどうかということに、結構細かくこだわっています。……そうは言っても、まあ、可能な限り、ですが(笑)


G:
なぜ急に弱気になってしまったんですか!(笑)

瀬下:
「GODZILLA」、やっぱり大変なんですよ。すごく壮大ですから~。

G:
完全にゼロから作ってますもんね。

瀬下:
いろいろな都合もありましたから。実際、最初に虚淵さんや静野さんと「こういうことをやりたいね」と挙げたものの中でも、映画本編でやりきれなかった設定が山のようにあります。それらは、結果的には小説版の「GODZILLA 怪獣黙示録」に活用されてるんですが。


G:
静野監督には、世界観へのこだわりというものはありますか?

静野:
自分のこだわりは、「不信の停止」で。

(一同笑)

瀬下:
今の静野さんのおっしゃった「不信の停止」はすごく正しいんです。観ていただいているプレビュー版ではまだ作業途中なので「ここでハルオがリアクションをしないのはおかしいよ!」という部分が多々あるんです。それって「不信感」なんです。

G:
確かに「ハルオのリアクション」という指示も入っていました。「不信の停止」だったんですね。

瀬下:
そう。この物語を信じさせたいし、納得させたいし、一秒たりとも飽きさせたくないという所が、静野さんと僕の共通のこだわりです。そのための「ハルオのリアクション」という指示です。


G:
なるほど。こうしてお話を聞いていると、劇場で完成版をしっかり確認しなければという気持ちが強くなりました。

瀬下:
そう思ってもらえたら嬉しいですね。

G:
「一体、あれはどうなるんだ!?」というのが気になって仕方がないです。

瀬下:
第三章のあれは……凄いです。虚淵さんの展開に、僕ら自身が「えっ!?」と驚くほどです。

G:
本日は「GODZILLA」と関係のない話も含めて、長い時間お話いただきましてありがとうございました。

これ以上は人を増やしたからといってクオリティが上がるわけではない一種の飽和点に到達したと瀬下監督が語った作品がどのようなものなのか、ぜひ劇場でその映像を確かめてみて下さい。

『GODZILLA 決戦機動増殖都市』予告② - YouTube

©2018 TOHO CO., LTD.

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