「Infini-T Force」鈴木清崇監督インタビュー、フル3DCGアニメならではのメリットはこうやって積み上げられていく


ガッチャマン、テッカマン、ポリマー、キャシャーンという往年のタツノコヒーローたちが集結した、タツノコプロ55周年記念作品「Infini-T Force(インフィニティ フォース)」が2017年10月から始まりました。原作にリスペクトを払いつつリデザインが行われた、このフルCGアニメーション作品を監督するのは、「ガッチャマン クラウズ インサイト」で助監督を務めた鈴木清崇さん。この作品の監督を担当することになった経緯から、作品作りのこだわりまで、いろいろな話をうかがってきました。

TVアニメ「Infini-T Force(インフィニティ フォース)」公式サイト
http://www.infini-tforce.com/

ポスタービジュアルには4人のヒーローとヒロインの笑、そしてヴィランたちが描かれています。

©タツノコプロ/Infini-T Force製作委員会

GIGAZINE(以下、G):
鈴木監督が初監督を務める「Infini-T Force」にどのように関わることになったのか教えてください。

鈴木清崇監督(以下、鈴木):
「Infini-T Force」の企画自体は僕が監督になる前から動いていて、途中参加という形です。

G:
監督が参加した時点で、すでに具体的な形でしたか?

鈴木:
登場人物とテーマはおおかた決まっていましたが、実際のデザインとの仕上がりや、基本的なストーリーについてはまだモヤッと輪郭があるだけで、「じゃあ、実際どうしようか」というところでした。ただ、フル3Dというのは最初から決まっていました。

G:
フル3Dでやるということを聞いたときの印象はいかがでしたか?

鈴木:
自分自身がもともと3Dを経験しているので、どうやったらうまくできるか、どうやったらフル3Dならではの映像にできるだろうかということを考えました。脚本・演出も含めて、どうバランスを取っていくかということですね。こういう質感のテレビシリーズというのは日本では見たことがないので、作ってみたいし、お客さんにも見てもらいたいということで、「大変そうだな」というよりは楽しみが勝っていました。

G:
「Infini-T Force」は「タツノコ4大ヒーロー集結」という作品で、ヒーローを1体ずつ描くよりも大変なのではないかと思ったのですが……。


鈴木:
タツノコ社内で、以前から「ヒーローが集まって何かする企画をやりたい」という話は耳にしていたので、「いよいよ動いたんだな」という感じでした。

G:
「Infini-T Force」に登場する4作品は、監督が携わった「ガッチャマン クラウズ」のように最近リブートされた作品もありますが、もとは1980年代のヒーローたちです。子どものころに抱いていたイメージなどはなにかありましたか?

鈴木:
残念ながらリアルタイムで見ていた世代ではないので、子どもの頃のイメージというのはあまりないのですが、物心ついてから再放送を見たり、作品を作るにあたって見直したりしたときの印象は「大人の話だな」ということですね。タツノコプロの作品カラーなのか、「父親との関係」が見て取れて、「親子の話」ということを強く感じていました。

G:
なるほど、そういった意味では「Infini-T Force」はヒーローたちと同時に、カラーも受け継いでいる気がします。今回、3DCG制作をデジタル・フロンティアさんが担当されています。キャラクターモデルを見て何か感じることなどはありましたか?

鈴木:
「デジフロさんの顔になったな」という印象があります。

G:
制作する会社によって、そんなに顔というのは違ってくるものですか?

鈴木:
これはもう、明らかに違ってきます。今回はそれを活かそうと思っている部分もあって、僕としては「いいな」と思いました。ただ、僕もどちらかといえば「作画アニメ」の人間なので、バランス調整が難しいなとも思いました。

G:
調整というのは、「デジフロさんの顔」と、作画アニメ的な「動かすもの」とのすり合わせの部分ですか?

鈴木:
リアルにすることに関してはデジフロさんが得意とする部分だと思うのですが、テレビアニメというくくりの中で、「リアルめのバランス」の落としどころをどうしようかということですね。今回はモーションキャプチャーなので、アニメに寄せると動きのリアルさと合わなくなってしまう。そのバランスのギリギリのところを相談しつつ探っていきました。

G:
「アニメに寄せる」というのは、モーションキャプチャーからアニメっぽい動きに変換する部分があるということでしょうか。

鈴木:
モーションキャプチャーの動きをアニメのように修正することはしないと決まっていたので、キャラクターがアニメ絵だと、聞こえは悪いかもしれませんが「単にアニメの顔が貼り付いたもの」になってしまって、それがヌルヌル動いたとしても、見た時に違和感があるだろうなと。それが破綻しないギリギリのバランスというところですね。


G:
「ほぼフル3DCGアニメ」と表現されていた「蒼き鋼のアルペジオ」の放送が2013年10月から12月でしたが、「ほぼ」の取れたフル3DCGアニメは増えてきているのでしょうか。

鈴木:
「Infini-T Force」とは毛色が違いますけれど、2017年の作品だと「スナックワールド」とかですね。その点は珍しくなくなってきていますので、特色を付けるという意味でも、「キャラクターたちが集まった1話完結のお祭り」ではなく、ちゃんと1本のドラマとして見られるような作りにしたいという思いがあり、話からキャラから、細かく調整させていただきました。

G:
確かに物語はヒーローが敵を倒していく1話完結ではなく、強い引きのある構成ですね。一体、このあとどうなるんだと一週間悶々としそうな。

鈴木:
その点はすごく気にかけていて、せっかくテレビで放送するのだから、やはり来週が楽しみになるような連続テレビドラマになって欲しいと考えました。

G:
お話の点では、シリーズ構成を「ガッチャマン クラウズ インサイト」脚本の大野敏哉さんが担当されています。鈴木監督は助監督で入られていて、再びのタッグなのですが、これは監督のご指名ですか?それともデジフロさんと同様、監督より先に決まっていたのですか?

鈴木:
実は「Infini-T Force」の企画は中村健治監督が進めていたのですが、「ガッチャマン クラウズ インサイト」の制作期間と重なってしまって。さてどうしようかとなったところへ「鈴木くん、どう?」と肩を叩かれ「わかりました。ありがとうございます」と引き受けた形なんです。それで、脚本のメンバーはほぼインサイトからの流れということになったので、僕も全然違和感なく仕事をすることができました。

G:
OPを拝見すると、クレジットに「フェイシャル」や「コンポジット」といった、他の作品ではあまり見かけない役職まで入っていたのが気になりました。

鈴木:
OPには「メインスタッフ」といいますか、全話数で共通してディレクションしている人が出るべきだと思うんです。フェイシャルやコンポジットの方々は、バランスを取ることも含めて全部ディレクションしていただいているので、これはOPにも名前を出すべきだろうと考えました。ただ、クレジットしようとしたら役職名がすごく横に長くて、「短くなりませんか?」という相談を結構やりました(笑)

G:
笑やベル・リンら女性キャラクターがむちっと肉感的でいいなぁと思ったのですが、あれは何か監督からの指示を反映したものですか?

鈴木:
いやいや(笑) 特に指示はないですね。むしろ抑えてもらったほうです。

G:
ということは、監督が手綱を引く前はもっとすごかったのですか?

鈴木:
そういうわけもないですが(笑) そんなにムチムチしてましたか?

G:
デジフロさんには以前、「GANTZ:O」でレイカの乳揺れが見事だったのでどうやって作ったのか話を聞きにいったことがあり、それで今回はどうなのだろうと注目していたら太ももの肉感とかすごいことになってるなと思ったもので……。

下半身についてはぜひ映像で確認してみて下さい


鈴木:
だとしたら、デジフロさんの趣味かもしれません(笑) むしろ、ベル・リンの胸揺れは抑えてもらいました。「ボインボインではなくプルンプルンにしてください」みたいな指示を出した記憶があります。

G:
ああー、「ぼいん!」では質感が違うのだと。

鈴木:
そうですね。ベル・リンの服装は胸部分を革のベルトで締めているような形なので、そこまでは伸びないだろうと僕の中のリアリズムが(笑) 最初のころ、ルックが決まってどんなフィルムにするんだという話を第1話の制作中にして、僕も言いたいことを言い、デジフロさんからも「これはできるけれど、大変だから違う方法はないか」と意見が出て、結構やりとりをさせてもらいました。そのため、第1話は結構時間がかかりましたけれど、その分、後半はすごくスムーズに意思疎通ができました。これはシリーズものならではの経験だなと思いました。

G:
チームワークが発揮されると。

鈴木:
映画とは違って、1話、2話、3話と作っていく中でみんなが「なるほど」と掴んだものが後ろの話数に反映されますからね。こうやってシリーズをやってみて、特にCGでは効率化という面で有効だということを感じました。

G:
積み重ねが後々効いてくるということですね。

鈴木:
CGは、基本的には楽になっていきますね。今回、デジフロさんはテレビシリーズの制作が初ということだったので、普通のテレビアニメの作り方とCGの現場とのすりあわせが必要で、僕とタツノコ側の制作とデジフロさんの制作と、みんなで工程を相談しました。「チェックはここで何回入れる」とか、この日までにアニメーションOKにして編集してアフレコで音声を録ってこの日までにキャプチャー現場に戻してフェイシャルを撮って……みたいな、パズル的な流れが全話数にわたって絡み合っているので、本当に制作さんは大変だったと思いますが、やりきってくれたので感謝しています。

G:
今おっしゃったアフレコについてですが、まず声優さんの声を録ってからフェイシャルを撮る、いわばプレスコだったのですか?

鈴木:
スケジュールとの兼ね合いで、途中の話数からそうなりました。最初はフェイシャルキャプチャーもして、キャラクターのフェイシャルを全部付けた状態でアフレコをしていたのですが、声を録る方が先行できそうというスケジュールになったので、「じゃあ、声に合わせてフェイシャルキャプチャーしてもらおう」ということになったのが4話からです。僕はそちらのほうがいいかもと思っていたので、最終的に落とし込むことができてよかったです。

G:
声に合わせてフェイシャルをつけるほうが作業として大変ではないですか?

鈴木:
スケジュールの組み方としては大変だと思いますが、実作業をしていたスタッフたちからは「役者さんの声があると合わせやすい」という声が多かったです。映像の上がりを見てみても、リンク感の強いものができあがって良かったです。1話から3話では、あくまで個人的にですが、微細なズレが出てしまうなと思っていましたが、4話からはもうバッチリです。

G:
3話までがアフレコで、4話以降がプレスコ、というような。

鈴木:
詳しくいえば、2話・3話は同時並行という形になりました。なので、フェイシャルをつけてからのアフレコだったのは1話だけです。完全並行になった2話3話は本当に難しかったと思いますが、スタッフみんなが頑張ってくれました。そして4話からは完全に声を先録りして、それをもとにフェイシャルキャプチャーをするようにしました。

G:
制作しながら作り方が変わっていたんですね……。

鈴木:
そうなんです。でも、良い方へ良い方へと選択していくことができて、僕にとってもデジフロさんにとってもいい経験になりましたし、本当にこのシリーズをやってよかったと感じた部分です。

G:
4話まで先行試写で拝見したのですが、実は録り方が変わっていたというのは気付きませんでした。

鈴木:
僕は正直なところ今作の3DCGは、ぱっと見た視聴者には最初違和感を持たれるのではないかと思っています。でも、声がついて、キャラクターが動いてしゃべって感情が理解できれば、割と早めに慣れていってくれるだろうとも考えつつ作っていて、後半はそのシンクロ度合いが加速していくので、最初の数話を見続けてもらえたならば、あとは大丈夫だろという自信はあります。

G:
そのキャラクターたち、ヒーローたちはもとの作品に比べて少し年を重ねた設定になっていますね。

鈴木:
これはオフィシャルな意見ではないと先にお断りしておきますが、テーマにも即する部分として、僕は個人的には旧作の続編であると思って作っているところがあります。つまり、旧作での戦いを終えて、もしくは戦い続けて、人間として成長したヒーローたち4人が本作のヒロインである笑ちゃんに何を教えられるのか、ヒーローとは何ぞや、みたいな話にしたいなと。

G:
なるほど、そうだったんですね。

鈴木:
一番変化しているのはテッカマン、南城二だと思います。旧作とは性格がまるで変わっていますが、旧作の中でも性格は少しずつ変わっているんです。その延長線上で、ヒーローたちは大人になっている、というのをやりたかったんです。劇中で彼らが昔のことを語るシーンが出てきますが、それは旧作だけの話をしているわけではなく、旧作とInfini-T Forceとの間の空白の数年に何かがあったんだ、という形で入れているところがあります。そこには、想像の予知を残して楽しめたらいいなという思いと、その間に成長があるということを感じて欲しいという意図、そしてあわよくばスピンオフで何かできたらいいかなという思いもあります(笑)

G:
第1話冒頭、無精ヒゲを生やしたオッサンが出てきたと思ったら変身して「これがあのガッチャマンなのか!?」という驚きがあったので、なぜこのキャラクターデザインになったのだろうかと思っていたのですが、彼らが重ねてきた経験が刻まれているんですね。


鈴木:
そうですね。ケンの場合は24歳の設定なんですけど……おっさんに見えますよね。

G:
24歳……おっさんと呼んでしまって申し訳ないです。


鈴木:
でも、あの「科学忍者隊ガッチャマン」の大鷲の健が成長した「昭和の24歳」「戦後の24歳」みたいなイメージなので、おっさん的でも割としっくり来ます。

G:
年齢は24歳だけれど、現代の24歳とはちょっと違うと。

鈴木:
24歳なら普通に子どもがいてもおかしくないし、例えば近所の子どもがやんちゃをしたらちゃんと叱るような人物だろうと想定しています。

G:
こうして制作の話を伺っていると、本作はいろいろな部分でうまく回っているところがあると感じますが、監督が振り返ってみて特に「ここはよくできた」と思う部分はどのあたりですか?

鈴木:
どこだろう……。フル3DCGを活かしてカメラワークを止めたくないということを考えて作っていて、フィックスのカットは、意識して使っている部分はあるものの基本的にはあまり使っておらず、そこで既存の映像作品との違いが出せるといいなということは考えていました。僕も含めて「Infini-T Force」の演出陣はほぼ作画アニメの人間なんですけど、そこはがんばってよくできたなと思っています。あと、フェイシャルに関しては、特に中盤から終盤にかけて、すごく良かったです。最初は、実際に絵ができあがったときにこのルックで表情がどう動くのかは、映像ができていかないとわからない部分があって、カメラを引き気味にしていたんですが、物語が進んでくるとどうしても表情で表現せざるを得ないカットがあって、だんだんカメラを寄りにしなければならなくなります。「ちょっと怖いな」と思いつつ寄っていったんですが、フェイシャル制作が見事に成功していて、それはよかったなと思います。「フェイシャルがうまくなった」というのとはちょっと違うかもしれないですが、作業しているスタッフのキャラクターに対する理解度がどんどん深まっていって、後ろの話数になるほど「このキャラはこういう顔だよね」「こういう表情するよね」「ここでは唇の端がちょっと上がるよね」といったところまで的確に拾ってもらって、表情に関してはほぼ修正なしで進みました。「まばたき、あと1回下さい」ぐらいの感じでした。

G:
おお、フェイシャルはもう監督が言うことなしものが上がってくると。

鈴木:
本当にすごかったです。これは「うまくいった」というより、この作り方の中で気付かないメリットが最大限に発揮されたんじゃないかなと思います。

G:
なるほど……。一方で、苦戦した部分もあるのではないかと思いますが、いかがでしたか?

鈴木:
苦しんだ部分はエフェクトですね。アニメ的な「ケレン味」については再現するのが難しいだろうと思い、最初から割り切っていた部分があったのですが、エフェクトはそうはいかないので……。全部ド派手にすれば一応は成立しますけれど、そうすると作品全体の情報量とは合わなくなるし、「この煙と破片はこちらへ方向にこうやって飛んできて欲しいんだけれど」といった細かい調整もTVシリーズの予算と期間ではなかなかしづらく、そこの感覚を伝えるのは難しかったですね。キャラクター芝居は全編通してそれこそ2000カットとか3000カットあるのでどんどん伝えられるんですけど、エフェクトのカットはそれほど数が多くないので、お願いしてやってもらって互いの理解が上がっていくスパンがあまりないんです。そこが苦労の種でしたね。やはり「作法が違う」というのか、何を重要視してこの指示を出しているのかというところが中々伝わらないんですよね。それがどんどん伝わるようになるの自体は楽しかったのですが、苦労の連続でした。

G:
しかし、その甲斐あって、ぐんぐん没入していくというか、引き込まれていく作品だなという感覚があります。監督が仰った、スタッフ同士の歯車が噛み合っていく感覚が、視聴者と作品の間でも起きる感じですね。

鈴木:
ありがとうございます。

G:
先ほど出たフェイシャルの部分などは注目して見るべきポイントということになりますかね?

鈴木:
どうだろう……あまり注目されすぎても困るかもしれません(笑)、普通に見ていただけるものになっていたら、それが一番の成功ですね。気になるからとコマ送りで見ていただいたとしても大丈夫なように細かくチェックはしていますが、コマ送りだと作品が楽しめませんから、ドラマ部分も楽しんでいただきたいなと思います。

G:
それは確かにそうですね。こうしてフル3DCG作品で初監督を務められることになりましたが、監督がCGへと進んでいくきっかけはなんだったんですか?

鈴木:
タツノコプロの作品で、さとうけいいちさんが監督をやられている「鴉 KARAS」というOVAがあるのですが、僕はそこでコンポジットをやっていたんです。CG班は仲が良くて「ちょっとやってみない?」みたいに声をかけられて、いろいろちょこちょこいじっていたら楽しくてハマっていったという感じでしょうか。「鴉 KARAS」でのコンポジットのあと、3Dのほうでアニメーションやエフェクトも触らせてもらって、後半は演出助手みたいな感じで参加させていただきました。全6話の作品ですが、本当にいろんなことを経験させていただき、どれも全部面白かったというのが僕の転機ですね。

G:
ここであの「鴉 KARAS」の名前が出てくるとは思っていませんでした。迫力あるバトルが繰り広げられる作品でしたね。そのさとう監督が、このInfini-T Forceではヒーローデザインの原案を担当されていますね。

鈴木:
そうなんです。この作品では、最初にデザインをけいいちさんにお願いしていて、僕があとから企画に参加したので、直接「これをこうしたい」と話す機会は残念ながらありませんでした。

G:
子どものころからアニメが好きだったからこうしてアニメ作りに進まれたのですか?それとも、子どものころは全く見なかったけれど、その反動があった、とか。

鈴木:
もう、子どものころからめちゃめちゃ見てました。タツノコプロ作品だけに絞っても「天空戦記シュラト」を見ていましたし、「宇宙の騎士テッカマンブレード」も大好きでした。ちなみにテッカマンの必殺技「ボルテッカ」って旧作だと額から出ていて、そこに弱点の「穴がポッカリ開いている」というのがすごく怖かったので、Infini-T Forceでは僕がブレード好きだったこともあって、ブレードの「ボルテッカ」のようなエフェクトにしています。この場を借りて旧作ファンの方には謝りたいです。すみません。

G:
ボルテッカ、めっちゃくちゃ強かったですね。

鈴木:
そこも気をつけた点です。ヒーロー全員の強さが桁違いにバラバラで、バランスはかなり考えました。テッカマンやキャシャーンと並べたら、ガッチャマンとポリマーは大変ですよ。宇宙艦隊をなぎ払うようなヤツと一緒に戦わなければいけないんだから。 でも、ぱっと見たときにそこに違和感がでなければ、演出的に成功したということかなと思います。改めてちゃんと考えると絶対変ですけどね(笑)

G:
確かに(笑)

鈴木:
そうだ、先ほどモーションキャプチャーのところでお伝えするのを忘れていました。今回、モーションキャプチャーアクターの方々は1人1役で参加してもらっていて、EDテロップにも役名付きで出ているので、ぜひチェックしてみてください。

G:
声優の方々の名前が出て、次に同じ役名でアクターの方の名前が並ぶというのは珍しいというか、アニメではまず見られないものですよね。特撮番組みたいな。

鈴木:
ヴィラン側のラジャ・カーンだけはちょっと特殊なキャラクターで細かい芝居とかがないため兼役をしてもらっていますが、そのほかはヒーロー側もヴィラン側も1人1役でそのキャラクターを作ってもらいました。個人的にも面白い取り組みだったし、実際の画面になるとキャラクター付けとして特徴にもなっていると思います。

G:
やっぱり演者さんの癖とかあるものですか?

鈴木:
ありますあります。今回、オーディションで選ばせていただきました。モーションキャプチャーなので、一番最初に気にしたのは体格ですね。……といってもアニメなので、みんなスタイルが良すぎて一致する人というのはいませんけど(笑)

G:
(笑)

鈴木:
なるべく身長は合う方にやってもらいつつ、「モーションキャプチャーでの動きのうまさ」というよりも、「芝居・動き」自体がキャラクターのイメージに合っているかどうかで選ばせてもらったので、そこは映像に如実に反映されています。

G:
フェイシャルについては、このモーションキャプチャーアクターの方々の表情を撮影しているということですよね。

鈴木:
そうです。なので、キャラクターたちが見せている動きは、声の芝居以外は基本的にモーションキャプチャーアクターの方の芝居です。音声収録にあたっては、キャプチャー時に収録したアクターの方の声をもとに声優さんにアフレコしてもらうんですけど、個人的にどちらの声を聞いても全くキャラクターに違和感がないのが面白いです。声優さんが巧いのももちろんありますが、「その瞬間のキャラクターの感情を表現する」という大本にブレがないので、声質やニュアンスが違っても違和感がないんだと思います。

G:
我々はその声を聞く機会がないので、なんだかもったいなく思えます。

鈴木:
モーションとフェイシャルを合わせるための収録で、遠くのマイクで拾っているので、音質は悪いですけれどね(笑)

G:
……ということは、ダミアンのモーションを演じられている方は、あんな感じでねっとりしゃべられているのですか。


鈴木:
むしろ、声をあてている平川大輔さんよりねっとりと喋っているぐらいで、平川さんに演じて頂いて少しクールにカッコよく落ち着きました。

G:
平川さん演じるダミアンの鎧武士との絡みもなかなかのものでしたが、もっとなんですね。


鈴木:
本当に面白い方でした。

G:
フェイシャルの演技に対しての指示も出されているのですか?

鈴木:
基本話数の演出さんにお任せしていますが、全話立ち会っています。これはキャプチャー時点でずれていて後で調整するということになると、大きく手間がかかってしまうためです。細かいニュアンスの部分で、たとえば「最後に口が薄く開いていますが、閉じたままでいきましょう」とかですね。フェイシャルのチーフの方と相談しながら、ぱっと撮っていきます。

G:
アニメの監督でありつつ、モーションキャプチャーの現場でも仕事をバリバリと。

鈴木:
フェイシャルについてはモニターでも撮影していますが、実際に近くに座って確認しています。キャプチャーで面白いのは、座って撮ることも立って撮ることもあるんですが、本来のキャラクターの立ち位置とは違うところで撮ることがあるので、「今のところは目線が逆になります」とか、できあがる映像と空間を頭に入れて、さらにキャラクターの顔をアクターさんの顔にあてはめて確認しなければいけないところです。結構、脳が混乱します(笑) カメラからはどう見えているのかということも考えつつ見なければいけないので、役者さんが5人ぐらいでやる撮影だと、かなり大変です。

G:
特撮のスーツアクターだと、女性キャラクターを男性が演じていることもありますが、今回、笑とベル・リンは女性が演じられているんですよね。ひょっとしたら、ベル・リンから感じる色気は、アクターの方の色気が乗っているというのもあるのでしょうか。

鈴木:
すごく色気のある方で、芝居もそうなっているので、見たときに感じられるものになっているのだと思います。

G:
キャプチャーの時点でキャラクターの持つ印象がほぼ決まっているわけですね。

鈴木:
はい。作画のアニメでいえば、アニメーターがカメラマンと役者をセットにしたような役割ですが、今回はむしろ分離していて、役者さんと、実際にカメラをつけるCGの方がいるので、芝居に関してはモーションキャプチャーアクターの方の担う部分が大です。長くキャプチャーしたことでキャラクター性もしっかりと掴んでいただいて、皆さんと一緒にキャラクターを作っていったという感覚があります。

G:
アニメ監督であり、同時に実写の監督と同じような仕事も果たされたのですね。

鈴木:
こうしてやってみると、基本的に演出がやることは変わらないのかもしれないなと思いました。本質としては「こういうモノが作りたい」ということを「人に伝える仕事」で、それが再確認できたなと。僕にとっても本当にいい経験になりましたし、Infini-T Forceで得たことは今後の作画のアニメにも活かしていければいいなと思います。


「Infini-T Force」は日本テレビ・読売テレビ・福岡放送・札幌テレビ・広島テレビ・中京テレビ・ミヤギテレビ・静岡第一テレビにて放送中。CS日テレプラスでは2017年11月17日(金)からスタートです。

「Infini-T Force(インフィニティ フォース)」メインPV - YouTube


・キャスト
ガッチャマン/鷲尾健:関智一
テッカマン/南城二:櫻井孝宏
ポリマー/鎧武士:鈴村健一
キャシャーン/東鉄也:斉藤壮馬
界堂笑(エミ):茅野愛衣
Z(ゼット):斧アツシ
ラジャ・カーン:安元洋貴
ダミアン・グレイ:平川大輔
ベル・リン:花澤香菜

・スタッフ
原作:タツノコプロ
監督:鈴木清崇
シリーズ構成:大野敏哉
キャラクターデザイン原案:大暮維人
ヒーローデザイン原案:さとうけいいち
スーツ・メカニックデザイン:中北晃二
編集:奥田浩史
音楽:やまだ豊
音響監督:明田川仁
3DCG制作:デジタル・フロンティア
制作:タツノコプロ
製作著作:Infini-T Force製作委員会
主題歌:flumpool「To be continued...」
エンディングテーマ:edda「チクタク」

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