これからのゲーム業界の未来、そしてクリエイターとして生き残っていくために必要なことは何か?

By Dave Allen

MMORPGの代表格的存在として知られるウルティマオンラインのリードデザイナーを務めたRaph Koster氏が、自身のブログの中でゲーム業界の変化とその流れに乗ってクリエイターとして生き残っていくために必要なことは何かを明かしています。

The Financial Future of Game Developers » Raph's Website
http://www.raphkoster.com/2014/05/07/the-financial-future-of-game-developers/


◆これまでのゲーム業界
これまでのゲーム業界のサプライチェーンには以下のような役割の人々がいました。

・出資者(A funder):ゲームを作成するための資金を提供する人。出資金はクリエイター自身で捻出することもあれば、パトロンに出資してもらうこともあるとのこと。
・クリエイター(A creator):実際にゲームを制作する側の人間。
・編集者(An editor):編集はプロジェクトの管理と品質チェックの役割を担います。クリエイターのタスクを管理するだけでなく、仕事の成果を最大限の収益に結びつけられるように市場全体をしっかりと把握しておく必要もあります。
・出版者(A publisher):出版はクリエイターの作成したゲームを出版物にする係です。多くの人々がこの役割は重要ではないと思いがちですが、規模の経済が大きく働く重要な仕事で、ゲームブランドのアイデンティティを扱う重要な仕事でもあります。
・広告宣伝担当(Marketing channels):広告宣伝担当の仕事により、クリエイターが作ったゲームは世間の目に触れることになります。広告・雑誌・レビューサイトなど多くのものに取り扱ってもらうことで、多くの潜在顧客にリーチできるようになるのでこれも重要な役割といえます。
・配給担当(Distributors):配給者はゲームを実際の販売店舗まで運搬する係です。この係を担当するには多くのインフラ整備が必要になります。
・販売店舗(Stores):完成したゲームを店舗で販売するのが販売店舗の役割。
・顧客(The audience):完成したゲームを楽しむのが顧客の役割になります。
・再利用者(Re-users):再利用者はゲームを映画化したりアニメ化したりする担当とのこと。

ゲームを制作する企業や人々によって、このサプライチェーンは大きく変化します。例えばインディーズゲームのクリエイターは、自分でゲーム制作のための資金を捻出し、自分がクリエイターとなってゲームを制作するだろうし、ライターならばゲーム制作自体は外注し、シナリオを自身で作ることになるでしょう。他にも、ゲーム業界で大きな勢力を誇るEAは、独自のゲーム開発方式と流通経路を持っており、他のゲームクリエイターや企業にはマネのできない独自のサプライチェーンを築いています。

By Vincent Diamante

◆複数の役割を兼任する存在
上述のさまざまな役割は現在も存在しますが、複数の役割を担い、より大きな収入を得ようとする企業や人が現れるようになります。AppleのApp Storeもそんな存在のひとつで、クリエイターがApp Storeにゲームを配信する際は以下の様な役割分担になります。

・出資者(A funder):クリエイター自身。
・クリエイター(A creator):クリエイター自身。
・編集者(An editor):App Store。
・出版者(A publisher):個人でゲームをリリースする場合は出版者の役割を自分自身で担う必要がありますが、実際にはほとんどAppleが行ってくれるようなもの、とのこと。
・広告宣伝担当(Marketing channels):Appleはホームページのトップ画面や特集ページなどでアプリを宣伝してくれます。
・配給担当(Distributors):App Store。
・販売店舗(Stores):App Store。
・顧客(The audience):iPhoneやiPadユーザーたち。
・再利用者(Re-users):悲しいことにApp Storeなどのゲームを再利用するのはクローンアプリ作成者がほとんど、とのこと。

このように多くの役割が統合され、少数の企業やサービスだけが生き残るようになっており、さらにゲームを販売するにはApp Storeのように多くの役割を担うようになったプラットフォーム上で販売する必要があるとのこと。App Storeのように出版者・配給担当・販売店舗といった複数の役割を担うようになったプラットフォームは以下の通り。

PlayStation 4
PlayStation Vita
Xbox One
Wii U
ニンテンドー3DS
OUYA
Amazon Fire TV
App Store
Google Play
Facebook
Steam

これらのエコシステムが巨大化していくにつれ、ゲーム業界は「多様性」や「複雑さ」を徐々に失っているとRaph氏は言います。これは、クリエーターがゲームを作成しても公開するための場所が限られており、それゆえに制作するゲームの種類もどんどん少なくなっていることが原因だとしています。

By Robert S. Donovan

◆お金は勝つ
業界の勢力図が乱れて多くの競合がいる場合、クリエイティブなアイデアは多く生まれ、変わったアイデアがより採用されるようになり、そして新しいジャンルが誕生することになる、とRaph氏。それに対して市場が成熟してくると、多くの役割を担う企業やプラットフォームが登場するようになり、それらがある程度の地位を確立したならば、大きな変化を起こさないようになり、自分の利益を守ろうとするようになるそうです。

また、成熟した市場ではクリエイターがクリエイティビティや革新性で他のゲームと競合するというよりは、金銭面で競合することが多くなるとのこと。つまり、お金を使ってマーケティングや配給の面で他のゲームよりも優位に立つことが、ゲームをヒットさせるためにより重要な要素になってくるということです。

By 401(K) 2012

現在のゲーム業界では、中堅のゲーム開発企業にはより大きな企業に成長するか、小さくなってインディーズゲーム開発者のように細々と生き残っていくかのどちらかの選択肢しか残っていないとも言います。そしてゲーム業界は中堅がいない中抜き状態になり、後のゲーム業界に大きなダメージを与えることになるのでは、としています。

ゲームのヒットには運の要素も含まれてくるので、制作にお金をかけたものだけがヒットするとは限らず、ゲームのリリースは一種のギャンブルのようなものです。それでも優秀なクリエイターは、事前に多くの情報を集め、ゲームがコケないための下準備を怠りません。そういった下準備が広告宣伝などになり、iPad上に表示される広告のほとんどがアプリの宣伝になったりするわけです。

しかし、資金力のないゲーム開発企業や個人のクリエイターでは大企業ほど多くの広告が打てず、開発費を取り戻すことができずに消えていくこともあります。もちろん一夜にして大金を稼ぐインディーズのゲームクリエイターもいますが、それらはごくごく一部の層なわけです。基本的に、ゲーム業界の底辺にいるクリエイターたちはクリエイティブではあるものの、ゲーム開発では食べていけないようで、市場を牽引するようなゲーム開発企業はお金をたくさん稼いではいるもののクリエイティブさがない、とのこと。

By Daniel Oines

◆解決方法
この状況を打破するための解決方法としてRaph氏は以下のものを挙げています。

・クリエイター自身を有名にする
・顧客が他に移れないようなサービスを作る
・長期的な収入源を得るために、インターネットを使った何かしらのお金の流れを作る
・資金提供者を募る
・自分でクリエイター、編集者、配給者、再利用者になる


これらの解決方法は2006年に考えたものとのことですが、現在も有効な解決方法である、とRaph氏。しかし、ひとりの人が複数の役割を担うのは非常に大変で、他の作業ばかりしていると、肝心のゲーム作成に回すパワーがなくなったりすることもあるので注意が必要とのこと。

また、サプライヤーチェーンの中で収益を分配する際の割合が公平ではなく、一部の利益をむさぼろうとする層に多くの金銭を取られているのも問題としています。ゲームの開発から配信まで全てをひとりで受け持つのは非常に大変なことですが、Kickstarterにて出身者を募ったり、「Gumroad」のようなデジタルコンテンツをリンク1つで顧客に直接販売できるようなサービスを使い、1つのプラットフォームやゲーム制作方法に縛られないことが今後のゲーム業界を生き残る術となりそうです。

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in ゲーム, Posted by logu_ii