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ハリー・ポッター世界の人間関係をバランス理論に基づいて可視化した「PotterVerse」


世界的に大ヒットしたハリー・ポッターシリーズでは数多くのキャラクターたちの人間模様が描かれていますが、そんなハリー・ポッターシリーズのキャラクターをバランス理論に基づいて可視化させたのが「PotterVerse」です。誰と誰がどのような関係にあり、1つの小説がどれだけ濃密な世界観で成り立っていたのかが一目で分かるようになっています。

PotterVerse
http://efekarakus.com/potterverse



ハリー・ポッター世界の人間関係を視覚化するとこんな感じ。


グラフに描かれている点は各登場人物を示し、カーソルを当てるとキャラクター名と簡単な説明が現れます。主人公なだけあって、ハリー・ポッターからは多くの線が伸びています。


ポジティブな繋がりは黄色、ネガティブな繋がりは緑で書かれており、魔法学校の管理人アーガス・フィルチの場合、ミネルバ・マクゴナガル先生やセブルス・スネイプ先生とはポジティブな関係を結べていますが、イタズラ好きだったハリーの父ジェームズ・ポッターを始めとして多くの人間関係がネガティブなものです。


これはFritz Heider氏のバランス理論を発展させたHokky Situngkir氏とDeni Khanafiah氏による「ソーシャル・バランス理論」をベースにしているもの。バランス理論とは自分が「好意を持っている相手が好きなものを好きで、嫌いなものは嫌い」「嫌悪感を持っている相手が好きなものが嫌いで、嫌いなものが好き」という状態を感情的に最もバランスが取れているとし、三者間の好悪感情はその図式に当てはまるように変化する、という考え方です。

そのため、下記の図で言うと、3人の人間に相互関係があった時、3人ともが互いに好意を持っている状態(図T3)や、友人同士の2人と共通する敵が相互関係にある状態(図T1)がバランスの取れた状態であり、1人は他2人と友人関係にあるが、その2人は敵対している状態(図T2)や3人ともが敵対している状態(図T0)はバランスが取れていないということになります。さらに簡単に言うとT3は「友達の友達は友達」、T1は「友達の敵は敵」あるいは「敵の友人は敵」ということを示しているというわけです。

(PDFファイル)cmnNbrsFrac-wikiVote.eps - triads-chi10.pdf
http://cs.stanford.edu/people/jure/pubs/triads-chi10.pdf


PotterVerseにおいても3者の関係がT3、T1、T2、T0のいずれに当たるかが分かるようになっています。


スタンフォード大学のJure Leskovecさんらが行った研究(PDFファイル)によると、EpinionsSlashdotWikipediaの3つのソーシャルメディアを調べた結果、安定したバランスにある相互関係(T3、T1)はそうでない相互関係(T2、T0)の数の5倍だったとのこと。一方、ハリー・ポッター世界において、安定したバランスにある相互関係(T3、T1)はそうでない相互関係(T2、T0)の12倍以上存在しており、バランス理論に基づくとソーシャルメディアよりもかなりバランスの取れた関係にあるようです。

例えばバランスがいいとされているT3「友達の友達は友達」の関係は相互関係の中で最も多い449個で、T3だけを表すと以下のような感じ。


ハリー・ポッターが居候する家族のペチュニア・ダーズリーバーノン・ダーズリーダドリー・ダーズリーの3人はバランスの取れた関係だということが分かります。


さらにT1「友達の敵は敵」あるいは「敵の友人は敵」を示すトライアングルは以下。全部で319個あります。


魔法を毛嫌いするペチュニア・ダーズリーとバーノン・ダーズリーにとって魔法学校校長のアルバス・ダンブルドアは「共通の敵」であることが分かります。


さらに、「好きな人の好きなものだから本当は好きになるべきだけど、嫌い」というバランスの悪い関係は数が減って全部で50個。


ハリーの親友ハーマイオニー・グレンジャーと森番のルビウス・ハグリッドは仲がいいのですが、ハーマイオニーはハグリッドが持ち込んだ凶暴な三頭犬フラッフィーには怖い思いをしたので、3者はT1の関係となっています。


嫌い同士が集まったネガティブなトライアングルは最も少なく13個。


ハリー・ポッターの親友ロン・ウィーズリーと魔法学校の管理人アーガス・フィルチ、そしてヴォルデモートの手下であるピーター・ペティグリューがこの関係にあたります。


また、スモールワールド実験において「アメリカ合衆国の国民から2人ずつの組を無作為に抽出し、その2人がつながっている場合には、平均すると6人の知り合いを介している」という結果が出ましたが、ハリー・ポッター世界において平均最短距離は2.03で、人づてに人と繋がる最高の長さは4人。俳優という狭い世界で見た時に、世界中の俳優が他の俳優とどれだけ繋がりがあるか、というベーコン数においては大多数が3~4の範囲に収まるので、ショービジネスよりもさらに狭い世界であるということが分かります。


関係を表した以下のグラフを見ると明らかなのですが、ハリー・ポッターの登場人物65人の人間関係は希薄になりがちなソーシャルな繋がりとは違い、かなり濃密です。


一方、バランス理論は好き嫌いで関係を測るものですが、好き嫌いだけではなくステータスが三者の関係に影響するという考え方もあります。これはソーシャルメディアの中でもよく見られ、人と人への繋がりにおいて「この人は私の友達」として振る舞うことが同時に「この人は私よりステータスが高い」と思っていることを意味します。反対に言うと、自分よりステータスが低いと判断したら、その人のことを嫌っているかのように振る舞うということです。

しかし、例えばAからB、BからCに対してポジティブな繋がりがある時、バランス理論に基づくとCからAへに対してはポジティブな繋がりが生まれるはずですが、ステータス理論に基づくとAはBが自分より高い立場にあると感じており、BはCを自分より高い立場にあると感じているので、CはAを自分より低く見てネガティブな繋がりが生まれるはずです。両者には反対の結論が出る可能性があるため、ハリー・ポッター世界が必ずしもバランスのよい世界になっているとは言えないかもしれませんが、「人間関係が希薄だ」と問題視されるような淡泊な世界でないことは確かです。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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