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「一人っ子はわがままで自己中心的」という説は本当なのか?

by Luna Lovegood

一人っ子は何かと兄弟のいる子どもと比較されるものであり、「一人っ子は甘やかされて育ったから自己中心的であり、物を人と分けることをしない」と考えられる傾向にあります。心理学を専攻したドイツのジャーナリストであるCorinna Hartmann氏は、一人っ子がわがままに育つ傾向は明らかでないとして、偏見が広まった理由などについて解説しています。

Is Only-Child Syndrome Real? - Scientific American
https://www.scientificamerican.com/article/is-only-child-syndrome-real/

19世紀、マサチューセッツ州クラーク大学の教育学者であったE. W. Bohannon氏が、「A Study of Peculiar and Exceptional Children(独特で例外的な子どもたちの研究)」という研究結果を発表しました。研究ではアンケート方式によって収集したデータを基にした研究結果が記されており、その中に「一人っ子は過度に甘やかされてしまっている」という内容も含まれていたとのこと。


Bohannon氏の同僚もこの研究結果を認めたため、「一人っ子は甘やかされておりわがままだ」という説が広がるきっかけとなりました。加えて当時は中産階級の世帯に生まれる子どもが減少し、中産階級の一人っ子が増えた時期であり、特権階級が持つ「下層階級への恐れ」が説の拡大を後押ししたとHartmann氏は述べています。

20世紀の初頭になると「兄弟がいない環境で育った一人っ子は神経過敏になる」という説が台頭。この説の根拠とされていたのは、「他に兄弟がいないと両親が全ての心配と恐れを一人っ子に向けるため、子どもは神経がナーバスになって気弱になる」という考えでした。

by esudroff

しかし、21世紀になって集められたデータによると、一人っ子に対する世間の不安はナンセンスなものであり、一人っ子であることに深刻な問題はないと明らかになったとHartmann氏は述べました。テキサス大学の心理学者であるToni Falbo氏は自身が一人っ子であり、「兄弟や姉妹の存在がきちんとした成長に必要なものだ」という意見に反対しています。

一人っ子を対象にした200以上の研究について調査を行ったFalbo氏は、1986年に「兄弟の有無は子どもの性格に影響を与えない」と結論づけました。Fablo氏が見いだした一人っ子と兄弟姉妹のいる子どもの違いとは、「一人っ子は兄弟姉妹を持つ子どもと比較して、親とより強いつながりを感じている」という点だけだったとのこと。

2018年にはフランクフルト大学の研究者であるAndreas Klocke氏とSven Stadtmüller氏が、約1万人ものドイツの子どもたちを追跡して行った調査によって、Fablo氏の考えが裏付けられたそうです。子どもが親に重要な出来事を打ち明ける頻度などを基に「親と子のつながり」を測定したところ、2人は「一人っ子の方が兄弟姉妹を持つ子どもよりも親とのつながりが強い」ことを発見しました。

by Daria Shevtsova

研究の結果、一人っ子のうち25%が「親との関係はポジティブなものだ」と考えていることがわかりました。一方で兄弟姉妹がいる子どもで親との関係がポジティブなものだと答えたのは長男・長女が24%、真ん中の子どもが20%、末っ子が18%だったとのこと。

親と強いつながりを持つ一方で、一人っ子は「兄弟や姉妹がいればよかった」と考えやすいことも明らかになっています。2001年に西キャロライナ大学とテネシー大学の研究者が行った研究によると、一人っ子の子どもたちは幼少期を振り返った際に「兄弟のように信頼できる遊び友だちがいなかったのが残念」と答える割合が高かったそうです。

中には「イマジナリーフレンド」を作り出していたケースもあったとのことですが、架空の友だちを作って遊ぶことは社会性とコミュニケーション能力を高め、問題解決能力を高めることが知られています。

子どもが創り出す「架空の友達」の存在は問題解決能力を高めるのに有効であることが判明 - GIGAZINE


Hartmann氏は一人っ子がわがままで自己中心的だという考えは偏見に基づくものであると主張していますが、中国の研究者が行った研究では、一人っ子は兄弟姉妹がいる人よりも利己的であるという結果が出ています。

一人っ子は兄弟姉妹がいる人より利己的だがクリエイティブであるということが脳スキャンによって判明 - GIGAZINE


西南大学が行った研究によると一人っ子は兄弟姉妹がいる人と比較して不寛容だった一方、「このドラム缶を通常と違う用途で活用する方法を考えてください」といった創造性を必要とする問題解決能力が高かったとのこと。研究者らは一人っ子が柔軟な発想を持つ理由について、同年代の兄弟がいないためにさまざまな幼少期の問題解決を自分自身で行う必要があったためとしています。

それでもHartmann氏は「これらの結果に一人っ子であることが関与しているかどうかは疑わしい」としています。子どもは家庭内だけの環境に閉じ込められているわけではなく、幼稚園でも保育園でも小学校でも同年代の子どもたちと関わり、対人スキルを磨いていくとHartmann氏は主張。親は子どもたちが社会的スキルを磨く機会を積極的に与え、愛情ある環境で育てていくことが重要だと述べました。

by Bess-Hamiti

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in メモ, Posted by log1h_ik

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