アニメ業界がTAFとACEを合わせて新イベント「AnimeJapan 2014」を開催へ
アニメ業界の大きなイベントといえば3月に行われる「東京国際アニメフェア(TAF)」があり、ここ2年は「アニメ コンテンツ エキスポ(ACE)」というイベントも行われていますが、2014年からはこの2つのイベントを合体させて国内最大級のイベント「AnimeJapan」が始まることが発表されました。合体といっても単純に合わせたものではなく、両イベントを発展させて新たに実行委員会を組織したものだという説明がなされています。
Anime Japan 2014
http://anime-japan.jp/
東京国際アニメフェアは前東京都知事・石原慎太郎氏が、日本のアニメを世界に発信する場とビジネスの場を設けようと提案したことから、2002年に「新世紀東京国際アニメフェア21」としてスタートしたイベント。第2回から「東京国際アニメフェア」の名前になって、以後、東日本大震災の影響で開催中止となった2011年を除いて、毎年3月末ごろに東京ビッグサイトで開催されています。
しかし2010年、青少年健全育成条例改正問題の中で、石原都知事がマンガ・アニメの制作者に対して不誠実だと受け取られる発言を繰り返したことで角川書店や講談社、集英社などを含む「コミック10社会」が東京国際アニメフェアへの参加拒否を発表。溝は埋まらず、2012年にコミック10社会に所属する会社などを中心に「アニメ コンテンツ エキスポ」が立ち上げられ、アニメイベントが分立する事態となっていました。
今回発表された「AnimeJapan 2014」は、この分立状態を解消するイベントです。
そうそうたるメンツ
まずはAnimeJapan実行委員会実行委員長・一般社団法人日本動画協会理事長 布川郁司さんからの挨拶。
布川郁司委員長:
こうしてアニメ業界の一大イベントを発表することができ、身の引き締まる思いです。AnimeJapanは、12回の歴史を重ね国内外に周知された東京国際アニメフェアと、2012年・2013年に開催されてファンに支持され大成功を収めたアニメ コンテンツ エキスポをそれぞれ発展させた祭典です。2日間の開催の中で、ユーザ向け・ビジネス向けのイベントを併設し、国内外のファン、バイヤー、ビジネスユーザ、すべてに意味のある世界最大のアニメイベントを目指します。
AnimeJapanという名称は本イベントを日本が誇るアニメすべてが集う「アニメの日本代表の祭典にしたい」という思いから名付けました。「アニメ」が日本のアニメーションを示す言葉として広まったように、本イベントを世界最大のアニメの祭典として世界中に広め、認知していただければという思いを込めました。開催日程は2014年3月22日・23日。土日の2日間です。会場は東京ビッグサイト、東展示棟1~6ホールすべてを使用します。TAF・ACEそれぞれの倍の面積で開催し、2日間で10万人以上の有料入場者を目標とします。主催は本日登壇している実行委員19社、および日本動画協会が加わり構成、AnimeJapan実行委員会として発足します。また、一般社団法人日本動画協会とコミック11社会の後援にて開催します。
日本のアニメ産業およびアニメ関連産業の発展と振興を目的とし、業界一丸となって進めていきます。AnimeJapanにどうかご期待下さいますようお願いします。
◆質疑応答
日刊スポーツ:
イベントが分かれるキッカケは2010年の問題で、諸々あって分かれることになったと思うが、なぜ今回1つに戻ることになったのか。前代未聞の混乱だったと思うし、ファンやユーザにも混乱をもたらしたと思うので、経緯のご説明が欲しい。
イベントプロデューサー 高橋祐馬:
2010年末から2011年にかけて、ACEが立ち上がるキッカケがありました。2012年・2013年と2度、TAFとACEそれぞれが開催されるに至りましたが、その中でも、各業界関係者および来場するファン、バイヤー含め、ご納得いただける形で単一開催するということについて、渦中においてもACE実行委員会とTAF事務局の管理をする日本動画協会とで話を続けてきました。2014年に関しては、会場あるいは日程含めた中で単一の発展的開催を模索し、それを一番いい形で開催できるという結論に至ったことで今回、このようにAnimeJapanの発表となりました。
日刊スポーツ:
なぜ1つになったのかというところを詳しく教えて欲しい。井上さんはTwitterでいろいろ発言されていたかと思うが。
株式会社KADOKAWA 代表取締役専務 井上伸一郎:
ここにいる19社と日本動画協会、コミック11社会が自主的に運営できるということを確認できたことが非常に大きい。我々が自主的に運営していけるというところが大きいかなと。
日刊スポーツ:
(分かれるキッカケになった)しこりはとけた?
井上:
根本的なところは溶けていませんが、実行委員長をこうして布川様にやっていただくことになり、実施できるということでご理解いただければ。
サイゾー 昼間:
1点目、東京国際アニメフェアは東京都知事が実行委員長だったが名前が外れているようですが。2点目、「コミック11社会」の構成会社を教えて下さい。3点目、運営にあたって経済産業省からの補助金が出ていると思うが具体的にいくら出てる?
イベントプロデューサー 日本動画協会 キタカミ:
東京都の件ですが、2002年のイベント立ち上げの時点から民間に徐々に移行していこうということで話を進めていた。7年前には動画協会に事務局を移し、負担金も減っている状況だった。今回の話が出た段階で、実行委員会としても民間に移行するという判断となったので、都と話をして民間への移行が決まった。
11社会の構成は秋田書店、角川書店、講談社、集英社、小学館、少年画報社、新潮社、白泉社、双葉社、リイド社の10社会に、日本文芸社が加わった11社です。
井上:
補足です、角川書店は10月1日から株式会社KADOKAWAになりましたのでよろしくお願いします。
キタカミ:
経産省の件は詳細がまとまっていません。契約がまとまるまではコメントを控えさせていただきます。
ニコニコ動画 ナナオ:
中長期的戦略について。このイベントはあくまで国内開催限定で考えているのか。当然海外からも多くの人が来ると思うが、たとえばCOOL JAPANなどと連携して、海外への展開も視野に入れているのか?
髙橋:
まずは国内での開催を主とさせていただいています。布川様からもあったが、アニメは日本のアニメーションを指す言葉になっている。それを日本から国内外に発信していく。我々はイベントに際して、アニメの全てが集う場所を作れればと思っている。まずはしっかりしたものをファンに届けると主に、この場に来てもらうことを軸に考えている。これから先に関しては、今日ご登壇されている皆様とともに、アニメを世界に発信していくために直接コミュニケーションを取るため、イベント形態そのままではなくても、海外に発信する場を作ることも長期的な目線では入れさせていただければと思っている。
朝日新聞 小原:
TAFには「アニメアワード」があったが、これは引き継がれるのか?名前が変わったりするのか?また、平日開催をなくしての土日開催だが、ビジネス面の機能で何か影響があると考えるか?
キタカミ:
アワードは動画協会中心に進めていて、近日発表の予定です。ビジネスデーをなくしての2日間開催は、BtoC(一般向け)の盛り上がりを見てもらいながらビジネスエリアもしっかり設けることで密度の濃い商談が進むだろうということ。エリア分けをしっかりして、盛り上がる日本のアニメの現場を見てもらって商談を行ってもらおう、ということです。
洋泉社 オトナアニメ編集部:
もらった資料にはステージ情報解禁が1月下旬とあります。TAFだとビジネス的側面もあるイベントだったが、ステージがあるということで、イベントとしてどれぐらい派手なモノを考えていらっしゃるのか。構想段階だと思いますがお聞きしたい。
高橋:
ユーザ向け、ビジネス向け両方を考えている、ステージを4つないし5つ場内に設置し、東1~6を使うことでより多くのエンタメ、ビジネスを届けることを構想しています。ステージも、さまざまな作品のスタッフやキャストが登壇してのステージはもちろん、BtoBを盛り上げる部分においても、ビジネスセミナーやカンファレンスを軸にしたステージも予定している。そういったビジネス向けのところに、来場してもらうユーザにも触れてもらいながら、マーケット拡大や思いを伝える場を作れればと思う。場内にいろいろなものを併設する形だと考えていただければ。
日経新聞ヒロサワ:
中心人物としてまとめられた布川さんに。団体が2つに分かれている状態をどうご覧になっていたか、そしてこのような形になっての思いは。まとまったことで海外戦略に影響は出るか?
布川:
その当時、「業界が2つに割れたのではないか」という声は我々の耳にも入っていた。しかし、業界内では「しっかり結束しなければいけない」という思いは早いうちからあって、AnimeJapan設立に緊密に連携し、本日の会見という運びになった。日本のアニメに関するイベントは海外で多くあるが、その状況は国内だと知られていないところもある。制作としては海外から来ていただきたいし、日本に来てもらいたいということも考える。この2日間は濃密なモノにしたいと考えている。いままでの4日間開催だとビジネスデーに来た人は帰ってしまう。一般日のファンの濃さを見てもらえない。凝縮した形で開催していきたいと思っている。
以上で会見は終了、19社の代表が集ってのフォトセッションが行われました。
「AnimeJapan」のポイントは、質疑応答の中でもつっこまれている通り、主催者から東京都が外れたということ。もともとACEが分立した理由の大きなところには、イベント創設者であるはずの石原前都知事が業界に対して誠実とはいえない態度を見せたというものがあります。KADOKAWAの井上さんが言う「我々が自主的に運営できることが確認できた」、および「民間への移行」というのが、さらっと言われた中でも非常に大きなポイントだといえます。これはつまり、AnimeJapanは2つのイベントが対等合併したものではなく、ACEがTAFを飲み込んだも当然ということを指しています。
単純に、アニメファンの視点からすると、極めて近接した期間に別会場で国内最大級のアニメイベントが2つも開催されているというわけのわからない状態が解消されるだけでも助かりますが、完全にアニメ業界主導の民間イベントとなったことで、どのようにパワーアップしたものになるのかは期待したいところです。
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