ハードウェア

知られざるCPUの過去40年における性能向上と進化の歴史

By nera the photos

コンピューターの演算処理をつかさどるCPU(Central Processing Unit)は、これまで日進月歩の進化を遂げてきました。スタンフォード大学のVLSI研究グループは、CPUの進化の歴史をさぐるべく過去40年間に登場したCPUをさまざまな角度から比較・分析しました。分析データから見えてくる「CPUの進化」の実態とはどういうものなのでしょうか。

CPU DB: Recording Microprocessor History - ACM Queue


VLSI RESERCH GROUp - Stanford University
http://vlsiweb.stanford.edu/

CPU DBは、スタンフォード大学のVLSI研究グループによってまとめられたCPUのデータベースであり、公称スペックやベンチマークなどCPUに関するあらゆる情報が検索可能。「CPUに関する情報が誰にでも手軽にかつわかりやすく手に入るように」という理念で設計されています。

CPU DB - Looking At 40 Years of Processor Improvements | A complete database of processors for researchers and hobbyists alike.


CPUの性能を比較する場合スペックシート(仕様書)が最も重要な資料になるところ、すでにこの世に存在しないCPU製造者もあることから、古いCPUほどスペックシートを見つけるのが難しく、解析する元データの収集自体大変な労力を要します。時間の壁という困難な問題と格闘しつつ、VLSI研究グループは、CPU DBに過去40年間にわたる総計790種のCPUのデータを集積、そのデータからCPU性能の向上を異なる視点から分析しました。

これはCPUの性能がどれだけ向上したかを示すグラフ。性能の基準となるのは「Intel80386」です。赤いプロットが時間の経過に伴う性能向上を、緑のプロットはCPUのプロセスルール変更に伴う性能向上を表しています。ここで、縦軸は一目盛が10倍である対数目盛であるため、性能向上のスピードは驚異的なものであることを念頭に置いておく必要があります。


こちらはトランジスターの数と性能の関係を示すグラフ。緑の破線は、「ポラックの法則」の理論値であり、プロットはおおむねポラックの法則に従っていることが分かります。


こちらはCPUコアのサイズと性能の関係を示すグラフ。緑の破線はポラックの法則の理論値。ここでもポラックの法則に従った性能向上が見て取れます。


こちらはプロセスルールと時間の関係を示すグラフ。Intel、IBM、AMDなどCPUメーカーによって多少のばらつきはありますが、90nmを切ったあたりからおよそ2年に1度ダウンサイジングされていることが分かります。なお、180nmを切って以降は常にIntelがプロセスルール変更の先頭を走っています。


こちらはCPUダイサイズと時間の関係を示すグラフ。2004年までは減少傾向でしたが、2005年以降は増加しています。これはCPUにキャッシュメモリなどの機能を組み込んだため。


こちらはプロセスルールとCPUコア電圧の関係を示すグラフ。560nmくらいまではだいたい5vで推移していましたが、その後は3.3vで推移、130nmあたりからは電圧が降下していることが分かります。最近では1.5V前後に分布しています。


こちらはCPUクロック周波数と時間の関係を示すグラフ。1985年から2000年までは周波数はどんどん上昇していますが、その後伸び悩み、最近は3GHzあたりで頭打ちになっていることが分かります。


こちらはCPUダイ1平方ミリメートルあたりの熱量(熱密度)と時間の関係を示すグラフ。1985年のIntel80386から比べると2005年あたりまで増加しており、Pentium4は80386に比べ16倍増加しています。近年は、熱暴走の問題があり、より熱密度の小さいCPUが要求され低下傾向にあります。


こちらは消費電力と時間の関係を示すグラフ。赤いプロットは実際の消費電力。これに対して緑のプロットは、仮に386アーキテクチャの場合どれくらいの消費電力になるかという仮定の消費電力。クロック周波数やCPUコア電圧のコントロール機能のおかげで、386アーキテクチャに比べて消費電力は大幅に低減できていることが分かります。


こちらは、消費電力あたりの性能(エネルギー効率)向上を示したグラフ。2005年から2011年のCPUはグラフ右上にプロットされており、性能が高くかつエネルギー効率もはるかに良いことが分かります。


こちらはキャッシュメモリの電力ロスも考慮に入れた場合のエネルギー効率を示したグラフ。上の図と比べると、消費電力の小さなCPUにとってキャッシュメモリの電力ロスが決定的に重大であることが分かります。


2005年以降のCPUの性能向上を示すグラフ。Core iシリーズ(Neharemアーキテクチャ)が他のCPUに比べて高性能であることが分かります。


近年、性能向上のためCPUは大容量のキャッシュを搭載させてきました。こちらはキャッシュ容量とクロック周波数ならびにCPU性能の関係を示すグラフ。当然ながら、キャッシュ容量の多い方が高性能。


VLSI研究グループは、CPUの性能向上を妨げる要素であるゲート遅延、配線遅延を理論的に推測するFO4という手法を考案しました。こちらのグラフは、FO4から推測した遅延の量と時間との関係を示すグラフ。2004年以降ふたたび遅延量が増加していることが分かります。


こちらは「Libquantum」という多数のコンピューターを連結、最適化することで性能を向上させるプログラムを組んだ場合と単にコンピューターを連結した場合におけるCPU性能と時間の関係を示したグラフ。Libquantumの方が性能が高いという結果は、CPUのシングルコアあたりの性能向上の余地が残されていることを示唆しています。


40年にわたってCPUの設計者は、すさまじい数の専門技術を投入し続けてきました。その結果、CPUの性能は飛躍的に向上し、消費電力あたりのパフォーマンスも向上してきました。このことがITインフラを構築する原動力となったことは間違いのないところ。VLSI研究グループは今後もCPU DBに、現在進行形で進んでいるCPU性能向上競争の実態を記録し続けていくとのことです。

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in ハードウェア,   サイエンス, Posted by darkhorse_log

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