iPhoneソフトウェア担当上級副社長が辞任、マップ問題による事実上の更迭か

By Jeff Kubina

Appleが社内の組織改編を発表していますが、その中でiPhoneソフトウェア担当だったスコット・フォーストール(Scott Forstall)上級副社長が辞任することが発表されました。来年にはAppleを抜けるとのこと。iPhone 5/iOS 6での地図問題による更迭だとみられています。また、ティム・クックCEOへの報告役だったジョン・ブロウェット(John Browett)小売担当上級副社長も退社することが発表されています。

Apple - Press Info - Apple Announces Changes to Increase Collaboration Across Hardware, Software & Services

リリースによると、Appleはハードウェア、ソフトウェア、サービスを世界規模でもっと促進していくために経営管理を変更し、Jony Ive氏、Bob Mansfield氏、Eddy Cue氏、Craig Federighi氏の4人の上級副社長の権限を拡大していくとのこと。

これまでiPhoneソフトウェアを担当してきたフォーストール上級副社長は来年退職して、ティム・クックCEOのアドバイザーに就任。また、小売担当だったブロウェット上級副社長も退社の予定。クックCEOへの報告はブロウェット上級副社長が行ってきましたが、当面の間は小売担当上級副社長は置かず、小売チームが直接クックCEOに報告を行うことになるそうです。

なお、リリースの内容からするとフォーストール氏とブロウェット氏はまだAppleに在籍しているはずですが、すでに役職は辞しているようで、経営陣のページからは名前と写真が削除されています。

Apple - Press Info - Apple Leadership Executive Profiles
http://www.apple.com/pr/bios/

個別ページはまだ残っています。

Apple - Press Info - Apple Leadership - Scott Forstall
http://www.apple.com/pr/bios/scott-forstall.html

フォーストール氏はiPhoneソフトウェア関連のリーダーとして、ユーザーインターフェース、アプリケーション、フレームワーク、そしてOSにいたるまで、Appleの革新的製品群の心臓部分を扱ってきた人物です。スティーブ・ジョブズ氏がAppleを辞めていた時期に作ったNeXT社の出身で、1997年にAppleに入社。Mac OS XとAquaインターフェースの設計にも携わっています。

ウォールストリートジャーナルが関係者の話として報じた内容によると、フォーストール氏はジョブズ氏と親しいことを自慢して非協力的だったため他の幹部とは対立関係にあり、ジョブズ氏の仲裁抜きでは関係がうまくいかなかったようです。近しい人には、ジョブズ氏の亡くなったあと“決定者”がいなくなったと漏らしており、iOSチームはモバイルソフトウェアの大きな計画の中で十分に働けていないとチームメンバーにメールを送っていました。

フォーストール氏と他の幹部たちとの対立関係が極限状態を迎えたのがiPhone 5のリリースでした。フォーストール氏らのチームはiPhoneからGoogleマップを外すために何年も作業を続けていましたが、結果はティム・クックCEOが謝罪するに至るほどひどいもので、このとき、フォーストール氏は「iPhone 4のアンテナに不具合があった件は謝罪せずに乗り切ったのだから、今回も謝罪の必要はない」と主張してクックCEOらと対立。このとき、謝罪メッセージにフォーストール氏が署名せず、代わりにクックCEOが署名したことが決定打となったようです。

一時はジョブズ氏の有力後継者だと言われていたフォーストール氏は、社内でも昇進が早く名声を得ていましたが、一緒に働くには向いていないタイプだとも言われており、関係者によると「Appleの社内文化になじまない人」だったとのこと。

Apple - Press Info - Apple Leadership - John Browett
http://www.apple.com/pr/bios/john-browett.html

同じく辞任が発表されているブロウェット氏はボストン・コンサルティング・グループでコンサルタントをしていた人物。その後、スーパーマーケットチェーンのテスコのCEOを経て、2007年からはイギリスの家電小売大手ディクソンズのCEOを務め、2012年4月からAppleに移籍。Apple社内では小売戦略や世界中への小売店舗の拡張などを担当してきました。

クックCEOはブロウェット氏のカスタマーサービスに関する専門知識を賞賛していましたが、一部従業員の就業時間を厳しくカットするなどの新方式導入が非難の対象となっており、当初からAppleには合わない人だったのではとコメントされています。

フォーストール氏、およびブロウェット氏本人からのコメントは発表されていません。